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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 091:J.J.ケイル特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第91回(2023年6月23日(金)20時~
(再放送:6月25日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はJ.J. ケイル特集です。高山が好きなギタリスト特集も、ジョー・ウォルシュや、バジー・フェイトン、ライ・クーダー、ロイ・ブキャナンなどやってきました。ジミー・ペイジとミック・テイラーというもっと好きなギタリストもおりますが、今後にご期待ということで、今回は久々にギタリスト、J.J.ケイルの特集です。

大ヒット曲はありませんが、エリック・クラプトンが好んでカヴァーしたことで、一定の知名度を持つ人です。レオン・ラッセル人脈としても有名で、タルサ・サウンドと呼ばれる、独特のレイドバックしたサウンドと、やたらと反復の多い、ちょっとクセになる曲構成にメロディを持つ、非常に渋いギタリストです。歌いますし、いい曲を書きますからシンガー・ソングライターですが、加えてエンジニアの顔も持ちます。「銃を撃つのが嫌だった」という理由で、米空軍に所属し、様々な音響技術を身につけ、退役後は自宅に自分のスタジオを作ってしまいます。

生まれは1938年12月5日、生誕地はオクラホマ州オクラホマ・シティ。2013年7月26日に74歳で亡くなっております。死因は心臓発作ということです。エリック・クラプトンと一緒に作った2006年の「ザ・ロード・トゥ・エスコンディド」でグラミー賞も受賞しておりますから、この辺が人生のハイライトでしょうか。最も売れたアルバムは1972年のデビュー盤「ナチュラリー」ということになります。高山も結局この盤が好きで、その後も買い続けておりました。ともあれ、「ナチュラリー」収録曲をはじめ、非常に多くのカヴァーを生んだ名コンポーザーです。今回も年代順に聴いていきます。

1曲目
「Call Me The Breeze」J.J. Cale (1971)
2曲目
「After Midnight」J.J. Cale (1971)

まずファースト・アルバム「ナチュラリー」から、レイナード・スキナードのカヴァーが素晴らしかった「コール・ミー・ザ・ブリーズ」、そしてエリック・クラプトンのカヴァーでJ.J.ケイルの知名度を一気に持ち上げることになった「アフター・ミッドナイト」を聴きました。

3曲目
「Crazy Mama」J.J. Cale (1971)
4曲目
「Magnolia」J.J. Cale (1971)

1958年から1966年の間に12枚ほどのシングルをリリースしております。もちろん全然売れていないんですけど、その中の一枚をエリック・クラプトンが入手してカヴァーしたわけですが、そのシングルのヴァージョンは、先ほどかけましたアルバムのテイクよりかなりテンポが早いんだそうです。だからエリック・クラプトンのカヴァーもかなり早いわけなんですと。ご本人はカヴァーされたことを知らされなかったそうで、クラプトン・ヴァージョンが人気になってから知ったそうです。それで「ナチュラリー」のプロデューサーから「アルバムに入れたら」とアドバイスされたということなんです。有名な作者ヴァージョンは後だしなんです。もちろん、今となっては、メジャー・デビュー前のシングルはコレクターズ・アイテムになっております。

アルバム「ナチュラリー」からは彼の最大のヒット・シングルも生まれました。ビルボードで22位まで行った「クレイジー・ママ」です。他にもメジャー・デビュー曲、つまりアルバムからのファースト・シングルは「マグノリア」という曲ですが、こちらは全く売れませんでした。売れはしなかったものの、ファンの間では最も人気があるような渋いバラードです。

5曲目
「I’m So Lonesome I Could Cry」Hank Wilson (Leon Russell) (1973)

6曲目
「If I Were A Carpenter」Leon Russell (1974)

人脈的にはレオン・ラッセルが唯一の人的つながりでしょうか。しかも、レオン・ラッセルが60年代前半にデラニー&ボニーと組んでシン・ドッグスというバンドをやっていたのはご存知でしょうか。経歴から計算すると、レオン・ラッセルは10代前半からプロ活動をしていたことになります。そのシン・ドッグス結成前にレオン・ラッセルと一緒にバンドを組んでいたのがJ.J.ケイルなんです。一体何歳の時の話でしょうか。

さて、ここではレオン・ラッセルのアルバムでJ.J,ケイルがギターを弾いている音源をご紹介します。今回はこの2曲が7インチ盤です。まず、1973年の「ハンク・ウィルソンズ・バックVol.1」という、変名でやったアルバムがあります。イギリス盤は「Leon Russell」のシールを張られてしまうので、変名の意味がないんですけど、まあ聴けば分かるレオン・ラッセルです。内容はナッシュヴィル産カントリー・アルバムです。曲はハンク・ウィリアムスのカヴァー「アイム・ソー・ロンサム、アイ・クッド・クライ」がおススメです。そしてもう一枚、翌年1974年の「ストップ・オール・ザット・ジャズ」というアルバムにも全面参加しております。こちらはティム・ハーディンのカヴァー「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」をご紹介しました。

7曲目
「Cajun Moon」J.J. Cale (1974)
8曲目
「I Got The Same Old Blues」J.J. Cale (1974)

1974年のサード・アルバム「オーキー」からも2曲ご紹介しました。エリック・クラプトンやレイナード・スキナードがカヴァーしてくれたことで、ある程度のロイヤルティが入ってきますので、次のアルバム制作とかツアーに出る資金ができました。普通ならここでビッグ・ネームになっていくのでしょうが、この人の場合、あまり売れません。ローカル・アーティストのテイストを残したままで活動を続けます。でもアルバムのクオリティは相変わらず、かなりいいわけです。このアルバムには、ファンに非常に人気のある「エ二ウェイ・ザ・ウィンド・ブロウズ」といった曲も収録されております。

9曲目
「Hey Baby」J.J. Cale (1976)
10曲目
「Cocaine」J.J. Cale (1976)

この人、本当に淡々とローカル・アーティスト然とした活動を続けて行きます。もっとロックンロールとかのコマーシャルな曲を書けという声もあったようですが、あまりスタイルを変えません。1976年の4作目「トルバドール」というアルバムには、やはりエリック・クラプトンがカヴァーした「コケイン」が収録されておりますが、これは大好きなモーズ・アリソンのスタイルで、カクテル・ジャズやスイングのテイストの曲を作ったつもりだったということです。売れ線ではないにしても、クオリティの高い曲を書いているとは思います。

11曲目
「Katy Kool Lady」J.J. Cale (1979)
12曲目
「Don’t Cry Sister」J.J. Cale (1979)

1979年の5作目「ファイヴ」からは女性ギタリストのクリスティン・レイクランドが登場します。レオン・ラッセルと一緒にやっている「パラダイス・スタジオ・セッション」にもしっかり映っております。後に結婚する奥さんですが、B.B.キングやウェイロン・ジェニングスなんかと一緒に刑務所の慰問ツアーをやったときに知りあったようです。失礼なことを言うようですけど、超意外な取り合わせです。「パラダイス・スタジオ」の動画とか、なんか無精ひげの寝ぐせオヤジみたいなJ.J.ケイルがボソボソやっているのを、レオン・ラッセルと奥さんが睨みつけながらやっているような、笑えるところもあります。飄々といい演奏をやってらっしゃいます。ここでは、奥さんとお二人だけで多重録音でやっている曲を2つご紹介しました。

13曲目
「Losers」J.J. Cale (1983)
14曲目
「Teardrops In My Tequila」J.J. Cale (1983)

80年代に入ってからも相変わらず、淡々と活動は続けていきます。でも正直なところ、私はリアルタイムでずっとアルバムも買ったりしましたが、「80年代の空気感にJ.J.ケイルはないな」という印象でした。1982年からはMCAに移籍しますが、82年の「グラスホッパー」とか83年の「エイト」とかいったアルバムも悪くはないです。でもバブルに向かって好景気の日本と、景気が酷く落ち込んでいたアメリカの経済摩擦が凄かった時期です。「グラスホッパー」の時も「うーん、バッタかぁ…」と、ちょっと買うのを躊躇しました。結局買いましたけどね。

15曲目
「Danger」J.J. Cale & Eric Clapton (2006)
16曲目
「Hard To Thrill」J.J. Cale & Eric Clapton (1976)

90年代も、淡々と2年に1枚程度のペースでアルバムもリリースしてくれました。ただバブルもはじけた頃には何だかもう忘れられた存在のようになっていたように記憶しております。久々に名前を聴いたのが、まるで終活、人生の総括的な活動のようになった2000年代のエリック・クラプトンが、「今度はJ.J.ケイルを引っ張り出すそうだ」という情報が届いたときです。その頃には、「J.J.ケイル、まだ生きていたのか」といった感じでした。それでも2006年にリリースした「ロード・トゥ・エスコンディド」はグラミーも受賞して騒がれました。まあ私的にはジョン・メイヤーが参加していることで、「やっぱりアナログで欲しいな」と思った盤です。

ラストも2006年の「ロード・トゥ・エスコンディド」からお送りいたしました。

次回はカウンティング・クロウズ特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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