〈SS〉一発の銃声(明声ver.)

 俺の名前は明声。その辺にいる高校生よりも質の悪い「不良」と呼ばれている。

 俺は暇つぶしにTLに一言だけ載せることが多い。そして俺は死を覚悟した。それをTLに投稿する。“俺は死を決意した。明日、俺は死ぬ。その代わりにお前らがしたいこと、全部しよう”と。

 そしてその十分後、ある友達から「いいね」とコメントが来た。「え?」と一言だけ。それに俺は「詳しいことは電話で」とリプを返す。

 この人はLINEでの友達、所謂「ネッ友」と呼ばれる存在だ。LINEの名前は「茜」と書かれている。この人とはよく電話も会話もするので仲はいいほうだと思う。どう思われているのかは知らないが。そして電話が始まる。

「よ」

『ど、どうしたの? そんな生死を彷徨って』

「いつものことだろ」

『ええ……』

「それで、『嫌なら無視してくれ』って書いたのに如何して反応したん? 別にそれが悪いわけではないが」

『いや、心配にもなるでしょ。急に大切な人が「死ぬ」なんていいだしたらさ。なんかあったの?』

 TLの記事にはしっかりと『嫌なら無視してくれ』と書米印を付けておいたのだ。ただの独り言だと思っていたかったのだ。

 それに反応してくれたと言うことは、少なからず心配してくれたのだ。嬉しい、のだけど——


 ——俺は死にたい。


 愛情だの愛憎だのそんなことはどうでもいい。ただ死にたいのだ。「この世」という概念が、秩序が、世界が嫌で、生きていくのが苦痛で仕方がないのだ。

 周りの人からは罵倒され、厭味を言われ、貶され、見捨てられてそれでも「生きたい」と言う人間はいない。

 俺は“一人の人間”ではなく“ひとつのゴミ”として、この世の排出物としてゴミはゴミ捨ての日に可燃ゴミ達と一緒に処分される。

 そんな、「生まれた意味など皆無」な俺を誰が必要としてくれよう。だったら死んだほうがマシだ。ただそれだけのことだ。

 それを嘘偽りなく伝えると驚きながらも、しっかり聞いてくれた。もうすぐこの無意味な通話も終わらせる。

「……と、言うわけだ。いろんなものに対抗しながらさらに虐めを堪えぬ抜けれる奴はいない。そう言うわけだ。お前が何を言おうと俺は死ぬ。余計なことはするなよ」

 死にたいもうひとつの理由。俺は過去から俺はいじめられていた。見た目が切れ目だけで不良呼ばわりをして、挙げ句の果てにハブ。これを堪えれる奴がいたらそいつは異常だと思う。そして声が帰ってきた。

『……わかった。余計なことはしない。だけど、これだけ教えて。今、どこ?』

「そんなものを知ってどうする」

『……今からそっちに向かう』

「来なくていい。無駄足だ。まあ、しいていうならビルの屋上かな」

 そして手からだしたものは、ひとつの銃。密輸入しておいたものだ。マガジンをハウジングにセットする。カチャリと音が響く。

 その音に茜が気づかないはずもなく——

『何の音?』

「なんでもない」

『私がそこにつくまで自殺禁止』

「来なくていい。来る必要もない」

『ま、まって——』

 パァン、と一発の銃声が鳴り響いた。

(……嗚呼これでようやく死ねる……)

 それ以降、茜との会話は一生できなくなった。

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