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科学者とは何か で働くことを再考したお話。

Q?:一言でまとめると、どんな本?
A?:「科学者」の成り立ちと今あるべき姿を説いた本

科学者とは何か
村上陽一郎
を読みました。

時期によって書影は変わるのでしょうが、私がAmazonで調べた時には、別の書影でした。


最新の書影
直近の書影

書影の帯にあるように、テレビで林修氏が紹介されました。
その番組をたまたま見ていて、読もうと思いました。


この一文はどういうことか?

「科学者」という職業(存在)の誕生は19世紀半ば。
たった200年弱前のこと。

それまでは学問と言えば哲学でした。

コペルニクス、ガリレオ、ニュートンなど
理科の教科書に載っている人たちですが、
いずれも科学者ではありません。

なぜなら彼らは、神学の立場が
知的活動の源泉だからです。

神が作った星の動きを明らかにしたい
神が作った星々を詳しく見たい
神が作った物が落ちるという現象を理解したい
などなど

時代を経て、キリスト教的な自然理解という枠組
みから知的活動が開放されます。
それとともに、知的活動を生きていくための生業とする
「科学者」が誕生します。

この成り立ちの部分は非常に興味深く、
ぜひ本書を読んでもらいたいところです。

その後、科学者はどんどん専門化していきます。
それと共に、専門外のことは近い分野の科学者でも理解できず、
科学者共同体(例えば、学会)が閉塞化していきます。

しかしながら、環境問題など、
専門化、閉塞化した科学者では対処できない問題が
表面化してきます。

問題解決の必要性、科学者としての責任から、
徐々に社会へ開放化されていきます。

説明する義務(acacountability)も生じるわけです。

この開放化は、まさに現在進行形で進んでいます。

なせこの一文になったか?

原子爆弾

科学者の倫理観や責任を考える上で、
とても重要な科学的な「業績」といえます。

アインシュタイン、オッペンハイマーなどの科学者が
どのように関わっていたのか。
本書でも概説されています。

またこの時のことが、
分子生物学にも影響を与えたと考えられる
と語られています。

原子爆弾に直結するのは物理学ですが、
他の科学者にも影響を及ぼすものであったと考えられます。

それほど科学者には
責任が伴う
ということができると思います。

また、環境問題を考える際に、
専門化した科学者のみでは対処できない
ということが明白になってきています。

地球温暖化の原因を二酸化炭素に求めたとします。

では炭素は地球規模でどのように循環しているのか?
化学だけでなく、海洋学、海洋動物学、海洋植物学が関与していると考えられます。
さらに、森林学、生態学、地質学、気象学、大気圏物理学などの知見も必要になってきます。

専門外の分野を理解することが難しくなった科学者だけでは、
対処が難しいことは明白です。

こういった科学者をうまくまとめ上げる存在が必要です。

それこそが、全体を把握できる新たな「科学者」ということです。

じゃあ、どうする?

科学者じゃないから関係ない
では済まされません。

かといって
全員が地球温暖化を考えよう
ということでもありません。

この本の「科学者」は、別の職業に変えても成立します。
さらにいうと職業でもなく「人間」に置き換えることができます。

組織人として自分の部署や会社内で
専門化、閉塞化していては行き詰まる。

自分の所属するコミュニティ内のことだけを考えていては、
責任を果たせなくなる。

こんなふうに考えることができます。

職業倫理だけでなく、
社会倫理まで範疇を広げて、
自分の責任を果たす
ことが必要になっている。

そんな時代だということができると思います。

覚書

科学者共同体 4つのエトス

  1. 公有性(communality)

  2. 普遍性(univeality)

  3. 私的利益からの解放(disinterestedness)

  4. 組織化された懐疑主義(well-organized skepticism)

学問上の三子

  1. 科学史(History of Science)

  2. 科学哲学(Philosophy of Science)

  3. 科学社会学(Sociology of AScience)

できれば手元に置いておきたい一冊。
そんな今日この頃。

「紙1枚」

#読書 #紙1枚読書法 #科学者とは何か #村上陽一郎

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