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和装生活-1年

4か月とか6か月とかでも記録しておこうと思ったのだけれど結果的に1年まで放置しました。

案外続くものだ

着物に限らず、だいたいマイナージャンルに手を出すのをためらうハードルっていうのは、飽きることや面倒になることの懸念だろうと思う。その意味では継続に対し苦労は感じなかった。
所詮は服なので、必ず毎週どこかに出席しなきゃいけないというわけでもないし、毎日仕事後に練習しなければいけないこともない。せいぜい、金をどこまで使えるかで多少差がつくというところではないか。

金はそんなに使わなくてもいい

お高いイメージ、金が掛かりまくるイメージも、マイナー化に拍車をかける。これは間違いないでしょう。
仮に興味をもって検索して、有力な呉服店のサイトを開く。これだけそろえれば安心です!フルセット30万円!みたいなのが出てくるともうアウト。だいたいの人が初めに触れるのが成人式だとしたら、合わせ技一本で勝負あり。
じゃあどこから僕が入ったかっていうと、まあ順当に古着やリメイクを扱う庶民派着物店。それに現代式和装ブランド的なところを併せると、なかなか楽しいファッションが体験できた。

まあわかりにくいのではっきり言うとリサイクル着物の「福服」とテキスタイルで結構有名な「SOU・SOU」がはじめの一歩だった。
これなかなか難しくて、夏場にいろんなとこで急に売られる見るからに量産型の安い浴衣みたいな、廉価着物も存在はしているのだけれど、正直決してお洒落じゃないというか、やっぱり安物感が強い。そうするとわざわざショボいのに妥協してまで和装にする理由なんかないわけで。茶席に出ることになって必要で…とかそういう用途でしょこれ?みたいな。
その点、リメイク品や時にはデッドストックの洒落着が1万2万で手に入る、これは面白い。

前回のこれもリメイク長着にSOUSOUの羽織とインナー

この長着もそう。デニムの羽織も7,000円かそこらで羽織紐の方が高い

結果金は使った

そんなこと言いつつ結果的にはこの1年、かなり投資したという。
まず履物について、人気のあるみずとりの下駄を買ったはいいが長年靴は革のみでやってきた性分か、革草履がどうしても欲しくなる。それで着物自体よりだいぶ奮発してエナメル革の草履をまず買った。

それから夏に向けて化繊の長着を買ったのだけど、どうももう一つ物足りない。ずっとそれ一着というのも、という気持ちもあり、あれよあれよと縮の夏着物を仕立ててしまう。それでも5万しないくらいで、意外と収まるな、と思ったのが良かったのか悪かったのか…

SOUSOUの陣羽織やステテコ、普通の牛革の草履など細々買い足している…

着尽せないレザーウェアにちょこまか投資してるのと行って来いくらいの感じではあるけれど、相当財布の紐を緩めたのは自覚がある。
揃っていくうちに世界観が広がっていくというか、突飛な例えのようだけれどレゴブロックを買い足していくのと近しい楽しみがあることに気付く。

例えば冬の防寒。廉価量産の間に合わせ的なものが大半でちゃんとしたものを吊るしで見つけるのには苦労した

しまいにはプルームテックの外装をキセルにする始末

前回から何か変わったか

前回を振り返って所感を更新しよう。

①モテない:とくに変わりなし。ただ、ばあちゃんには多少ちやほやされた

②声を掛けられない:基本的に変わりなし。ばあちゃんも旅館でとか祭事でとか、そんなもん。外国人に声掛けられるだろうとよく言われるけどそれは外国人への偏見だ。
ただ着物そのものに対する憧憬みたいなのを持っている人自体は少なからずいて、外出先での接客時に一言いただくというケースは多々あった。

③「和装男子」をアイデンティティにしてる人ら:やっぱり多いと思う。上記の①②で逆のことを言う人は絶対「着物男子のオレ」を前面に押し出していると思う。
意識過剰な気もするけど、誰も着物着てないようなそこら辺の街中での方が、なまじそれっぽい人が多い観光地より意識しないで歩いている。
まあこれはもともと尖ったファッションのせいでコスプレイヤーとかバンギャとかに紛れ込んだ時に「僕はこの一味ではないから!」と気になってしまったのと似たようなものかもしれない。自分が悪い。

④こうはなりたくない:業界の人々に触れて、その世界の共通文脈みたいなものの存在を感じる時がある。そういった一般化していない常識っていうのは時に障壁になるよな、というのは強く感じる。
百貨店の祭事を覗いた時、夜目の時間からイベントがあったみたいなのだけれど、時間が近づくにつれいかにもな人が続々集結して、僕は結局逃げてしまった。愛好家の数が限られている分野においては半ば必然的なことなのかもしれないけれど、あのコミュニティ感は苦手だ。

ただやっぱりこれは着物に限った話ではなかった。サブカルチャー全般に見られる、「マイノリティでありたがりながらそのコミュニティ内では極端に同調が求められる」現象そのものだろうな。
正直「着物男子押し」のメンズは結構ダサいのも多い、と思う。シルバーアクセサリー付けすぎの人とか、お前はGACKTになりたいのかみたいな服の人とかのような、ジャンル依存がもたらした止まることなき先鋭化とでもいうような…
こんなこと、コミュニティに入って行ったら言えないものね。無理だね僕には…

しかし

着物がそんなに珍しくなくなったら。「着物男子」なんてハッシュタグが意味のないものに…あるいは「着物好き」ないし「ファッション」と壁が崩れていったら。と考えるとなかなか面白い。
今は普段着着物も本気の洒落着も、外から見ればひとしく異質なもの。特に男の着物なんて街なかの異物でしかない。だから「着物男子」なんて括りが生まれる。そうではなくて、一般的に認知されたファッションの中で「着物が好き」という括りになる、ここまで行ければだいぶ変わる。
僕の周りの人はだんだん慣れて気にしなくなってきた。殊更に「着物キャラのあの人」と特別視されるでもない。世間がもっとそうなって行けばいいと思う。

特別視されたくて着物を着ている人もいるだろう。それを否定はしないけれど、僕は逆かな。

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