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じじい~第2章~

※これは、「毎日でぶどり」の作者、橋本ナオキ先生がYouTubeで配信されているラジオ「でぶどりラジオ」にて橋本先生が「理想のじじい像」を存分に語られていたので、思わず「もしもこれが小説になったら、、、」と言う妄想のもと、エセ浜(銀とも言う、うさとも言う)が書いた小説の出だし、に続く「第2章」である。

参考:https://youtu.be/PhMsimyb8S4

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第2章
「だから、あのじじいは悪いじじいじゃないんだってばぁ!」

僕―ナオトーは、昨日僕を見捨てて先に下山した友達二人―ヒデキ、フミヤーに、帰り道の道中ずっと叫び続けていた。

「いや、どう見ても怖いお爺さんだった。」
とヒデキ。
「ちょっと待て。ナオトは何であのお爺さんを“じじい”なんて呼んでるんだよ?」
とフミヤ。
「昨日、じじいに“なんて呼んだらいいの?”って聞いたら“じじい”って言ってたから。」
と答えるナオト。

「だからさ、全然怖くないんだってば。しかも、その辺にある草で傷を治してくれたんだよ!きっと凄い人なんだよ、じじいは!」

昨日、ナオトを置いて下山してしまったヒデキとフミヤはその負い目もあって、
今日の朝からずっとナオトの「じじいは怖くない」という話を耳にタコができるほど聞いていたわけだが、
帰り道でもまだこの話が続いていたのでいい加減にうんざりして来ていた。

ヒデキは、
「そうだ、このあと俺の家でゲームしない?」とフミヤに振った。
「(ナイスパス!)」と、フミヤは心の中でガッツポーズをとり、
「行こう行こう!ナオトも来るよな?」と完全に話をすり替えた。
ナオトは
「えーーー!今日は絶対二人を連れてじじいの所に行こうと思ってたのにー!」
と頬を膨らませたが、
「じゃぁ、もう良いよ!僕だけで行く!」
と、一人で山に入って行ってしまった。

ヒデキとフミヤは
「あー、あいつ本当に行っちゃったよ。」
「あれだけ大人に“行くな”って言われてる場所、いくらナオトにあぁ言われても、そんな簡単には行けないよなぁ。」
そんなことをポツポツと呟きながら、二人はヒデキの家にゲームをしに向かった。

一方のナオトである。
「なんだよ、二人とも僕の話を全然聞かないじゃないか!じじいは本当はいい人なのに!」

腹立たしい気持ちをあらわにして山道を踏み締めながら、じじいの家へ向かった。

「ほぅ。本当にまた来たのか。」

「あの人」の声がした。

「じじいー!!!」
ナオトはじじいの元に駆け寄った。
じじいは高い木の剪定をしていた。
「じじい、聞いてよ!昨日の友達二人に話したんだけど…」
そう言いかけた時、じじいは
「この木は柿の木でな。秋になると旨い実がなるぞ。楽しみにしてなさい。」
と、やんわりとナオトの話を遮った。

じじいは剪定のハサミをしまうと
「昼からずっと作業をしておったからな。そろそろ休憩しようと思っていたところだ。私についてきなさい。」
そう言うと踵を返して、いかにも「田舎の家」という感じの平屋にナオトを連れて行った。

「(僕、じじいの家にあがるんだ…!)」
つい昨日まで「近寄ってはいけない」と大人に言われ、一度も山に踏み入ったことがなかったというのに
今日はもう、じじいの家にあがるというのだから面白いものだ。
ナオトはふふふ、と微笑んだ。

「おじゃましまーす…」
キョロキョロしながら、じじいの家に入ると、パソコンがあり、大きいモニターもあり、家電も充実していて自分の家と遜色ない「現代」の家だった。
「意外と普通の家なんだね」
ナオトはうっかりそう言ってしまってから慌てて口を押さえた。じじいの機嫌を損ねてしまうかもしれない言葉だったからだ。

しかし、じじいは気にするそぶりは全く見せず
「そう見えるだろう?では、これはどうかな?」
壁にあるボタンをじじいが押すと、壁の一部分がスーッと開き、階下に伸びる階段が見えた。
「えっ!?なにこれ!?」
「はっはっは。これを見ても“普通の家”と言えるかな?」
じじいはそう言って階段を下りて行った。
ナオトも慌ててそれに続いた。

「これは…地下室…?…って、うわあああ!!!」
階段を下りたところに現れた景色を見てナオトは絶句した。
そこには「大人」な雰囲気しかないバーカウンターがあり、グラスと、お酒と思われる瓶がずらりと並んでいたのだった。
「これ凄い!こんなお家、見たことないよ!!!」
ナオトは興奮気味にバーカウンターの周りを走り回ってはしゃいでいた。
「まだお前に酒ははやいからな。これでも飲みなさい。」
じじいはコップに飲み物を注ぐと、氷をカランと入れてナオトに渡した。

外の暑さと喉の渇きで、「いただきます!」というが早いかゴクゴクと飲みだしたナオト。
飲み干した後、間髪入れずに「うんまーーーーい!」と叫んだ。

「なにこれ!ただのジュースじゃない!なんかいろんな味がするけど、今まで飲んだことがない味!」

じじいは微笑みながら
「いい飲みっぷりじゃな。これは庭になる季節の果物を潰して作ったジュースじゃ。外の店で買うやつとは一味違うぞ」と言って、もう一杯注いでくれた。

「あのね、じじい…今日ね、昨日先に逃げちゃった僕の友達二人も連れて来ようと思ってたんだ。でも、二人ともじじいが良いじじいだって信じてくれなくて…今頃は二人でゲームしてると思うんだ…」
ナオトはさっき、一度遮られてしまった話をここで話した。
じじいはただバーカウンターの向こうにいるだけで、敢えてこの話題に触れず、こう言った。

「ゲーム、したいか?」

ナオトはビクッとした。
さっきヒデキにゲームに誘われた時、今までだったら間違いなく3人でゲームを楽しんでいた。
そのことを多少後悔している自分もいた。
でも、じじいの話を信じてくれない二人に腹が立って、ゲームをしに行けなかったのだ。

「ゲームならここでもできるぞ」
じじいはそういうと、また壁にあるボタンを押した。
すると、地下室のバーカウンターのある方の反対側からスクリーンが下りてきて、じじいは慣れた手つきでゲームをセットし始めた。

「マリカーと言ってな。おまえ達の世代の子には縁がないゲームかもしれんが、面白いぞ。」

巨大なスクリーンにプロジェクターで投影されたゲーム画面。
そしてそれは今まで見たことも聞いたこともないようなゲーム。
ナオトは先ほどまで少し凹んでいたことなんてまるっきり忘れて、「すごおおおおおおーーーーい!」と、本日何度目になるかわからない雄叫びを上げていた。

それから1時間ぐらいだろうか。この「マリカー」という、40年以上前に流行ったゲームでじじいとナオトは遊んだ。

「あーもう、じじい強い!」ナオトはふてくされてソファーに寝転んで足をバタバタさせた。
「子供相手だからと言って手は抜かんぞ」
じじいがちょっと嬉しそうにそう言ったこの頃、ヒデキとフミヤは驚くべき行動に出ていたのだった。

ヒデキとフミヤは、ヒデキの家でいつも通りゲームをしていた。しかし普段なら3人でやっているゲーム。
二人でやっているとなんだか味気なく、どうしても話題はナオトのことになった。
「なぁ、フミヤ…ナオトが言ってたこと、本当なのかな。」
「何言いだすんだよ、ヒデキ。あんな怖い形相のF肩のおじいさんがいい人な訳ないじゃないか」
「でも…怪我の手当てしてくれたんだろ?本当に悪い人がそんなことするかなぁ?」
「分からない。でも、油断させておいて何かする気かもしれないぞ…あっ!」
この時、二人は
「ナオト一人でじじいの所に行かせてしまった」
という重大なことに、同時に気付いた。
「どうしよう、ナオトの身にもし何かあったら…」
「昨日は見捨ててきちゃったけど、今日は見捨てたらシャレにならない事態になるかもしれないぞ!」
こうして、ヒデキとフミヤは、「ナオトを助ける」という見当違いの理由で、じじいのいる山に向かうこととなったのだ。

場面は変わって、こちらはじじいの地下室。
ナオトが「マリカー」で負けが続きソファーでふてくされていると、階段の方向に少しの光が見えた。
本来、ここは隠された地下室なので階段に光なんて見えるはずがない。

「じじい!今、階段の方に光が見えた!なんで!?」
じじいは「えっ」と小さく言うと、階段を少し上がっていった。

そしてそのあとなんと、ヒデキとフミヤが地下室に入ってきたのだった。

「ヒデキ!フミヤ!なんでここに!?」
「ナオト、お前を助けに来た!」

ヒデキとフミヤは手に懐中電灯とバットを持ち、頭には自転車用のヘルメットをかぶるという完全装備でナオトの前に現れた。

「ナオト、お前、悪いじじいに騙されて地下室に閉じ込められてるんだろ!助けに来たぞ!」

しかし、ヒデキとフミヤはそう叫んだあと、
ナオトがソファーの上でゴロンと横になり、バーカウンターには美味しそうなジュースもあり、なおかつ大きいスクリーンで何かしら見たことのないゲームをやっているという風景を目にし、

「あれ?ナオト、お前ひどい目にあわされてないの?なんか思ってたんと違う」
「というか、むしろ凄く楽しそうなんですけど」
「ヒデキ、フミヤ、聞いてくれよー!じじいメッチャゲーム強いんだよ!僕、もう1時間もひどい目にあわされてるよ!」

三人の会話内容がちぐはぐなので、じじいはついに笑い出した。

「なるほど、ワシはそんなに恐れられていたのか。想像以上じゃったな。」

そういうと、バーカウンターに入り、ヒデキとフミヤ用のジュースも、じじいは出してくれた。
「どれ、今度はお友達も交えて勝負するか」

結局、ナオト・ヒデキ・フミヤの三人はそのあと「マリカー」で、門限の時間になるまでずっとじじいにボロ負けする羽目となった。

「じじい…強ぇ…恐るべし…」
三人の中で一番ゲームが得意なフミヤもついに音を上げ、
そして
「ねぇ、じじい!僕ら来週から夏休みなんだけどさ、夏休みの間ここに毎日遊びに来てもいい!?夏休みの間に絶対じじいを負かす!」

と、ナオトとヒデキに相談もせずにとんでもない宣言をしてしまった。
「ははは、いいぞ。ただし、夏休みのたかだか40日でワシに勝てるかな。それに…うちで出来ることはゲームだけじゃない。夏休み毎日来るのだとしたら、ゲーム以外にもいろいろしないと身体にも心にもよくないぞ。」

これを聞いて、三人はもうワクワクしかしなかった。

「じゃぁねー!じじい!」
「また明日来るねー!」
「次は絶対負かす!」
こうして三人はじじいに手を振り、山を降りて行った。
「なぁ、ヒデキ、フミヤ。やっぱりあのじじいは良いじじいだっただろ?」
「そうだな。ごめんな、ナオト。信用してあげられなくて。」
「確かに良いじじいだったけど…でも、もう少し手加減してくれてもいいのに!」
「フミヤはそればっかりだな(笑)」
「あぁ…それと…いや、なんでもないや。見間違いかも。」
フミヤは何かを言いかけてやめた。

「(地下室の天井に、大きいニワトリとヒヨコのぬいぐるみが飾ってあったけど、ナオトはあのぬいぐるみのことはもうじじいに聞いたのかな?
何のキャラかわからないし、あのじじいが可愛いぬいぐるみ持ってるのもなんか変だし気になるな…ま、いっか)」

夏休みはもうすぐそこである。

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まさか、本当に続編を書くとは自分でも思ってませんでした(笑)勢いで書いたので整合性取れてないところがあったら教えて下さいませ!

続きは気が向いたら書きます(笑)

もしサポート頂けたら、行く離島を増やします!…嘘です(笑)車いすユーザーの婚約者との結婚資金に使わせていただきます😄