メリットとmeritの話

欧州スーパーリーグ問題って知ってる?

知らない?じゃあいいや。さようなら~





真面目な話をしろや てめえの全身の皮をズタズタに引き裂くぞ

欧州スーパーリーグっていうのは、レアル・マドリーとかマンチェスター・ユナイテッドのようなヨーロッパのメガサッカークラブたちが集まって、今までの欧州サッカー大会(UEFAチャンピオンズリーグ)とは別の、自分たちだけの新しいヨーロッパサッカーリーグを作ろうという構想のこと。
一見、今までよりもたくさんハイレベルなサッカーの試合を見られるようになるんだからいいことなんじゃないかと思いきや、ファンや選手監督からの大バッシングにより計画は頓挫し、先に言ったクラブの経営陣がバッ叩かれたり辞任したりという大騒動に発展した。

なぜ大不評だったのか?それはスーパーリーグの創設メンバーにな(るはずだ)ったクラブたちに「特権」が約束されていたから。
すなわち、「創設メンバーのクラブはどれだけ成績不振だったとしても、このリーグに毎年参加できますよ」という特権。これが欧州サッカー特有の事情によりファンの逆鱗に触れた。

なぜこれがダメなのか話し始めると記事一本かけるから詳しくは「スーパーリーグ構想」でググれ。

で、何の話?

めっちゃ話逸れた。

創設メンバーに特権が与えられるというスーパーリーグに反対する立場の主張として、以下のような表現がよく見られた。

"All clubs should earn their places on merit!"
"Super League is worthless because it's not based on sporting merit!"

ここでのmeritは、日本語でいう「メリット」とはだいぶ意味が違う。「この大会にはどういうメリットがあるの?彼女は?年収は?調べてみました!」という話は全くしていない。

meritという単語には価値、実績といった意味がある。もっと正確に言うと、「実力で勝ち取ったことに対する」価値というニュアンスが強い。
「出場するのに実力のいらない金だけの大会になんて何の価値もねぇよ!」ということだな。

「価値」という概念と(日本語としての用法における)「メリット」という概念は、字面だけだとある程度意味を共有しているように見える。
しかしながら、本来のニュアンスに着目してみると、以下の2つの文章は大きく意味が違ってくる。

"She got a job in our company on merit."
「彼女がうちの会社に入ったのは、それにメリットがあるからだ。」

方や、あの人はうちに実力で入ってきたということは、見かけによらず切れ者なのかも?コネに頼らずしっかり勉強してきた人なのかな?というポジティブな印象を受ける。
一方、あの人がうちにいることでメリットがあると言われると、取引先のご令嬢だったりするの?社長の愛人?みたいな想像が働く。少なくとも、あまりいい印象は受けない。

同じ「価値」の概念を肯定的に表した言葉でありながら、メリットとmeritには大きな違いがある。
単なる訳語のはずなのに、使われる言語の持つ文化的背景や、単語に期待される役割によって、その意味やニュアンスが変わってくるって面白い話だよなぁ。

メリットとmeritの意味が違うなら英語でメリットってなんて言えばいいの?

advantageとかbenefitとかじゃねーかな。
あと、「この施策のメリットとデメリットを整理しました!」みたいな場合には"Pros and Cons"っていう表現をよく使う。Prosにいい点、Consに難点を挙げて箇条書きにしてスライドにするといい感じのパワポ資料になる。

なんでこの記事を書いたの?

ツイッターに書くと長いから

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