往診の加算について6月から改定。初めての患者さんに往診した場合は減算。でも実際に必要な症例はある。

2024年3月、厚生労働省から6月1日からの診療報酬の改定の内容が通知されています。
その中で往診についても改定がありました。
普段から訪問診療を行っていたり、外来で診たりしている患者さん以外に対しての夜間・休日往診加算と深夜往診加算が大幅に引下げされました。
深夜往診加算でいうと、2300点から485点に下がります。

先日の例で当診療所の往診例で言うと、夜1時半に、全く診たことがない70歳の男性の方から急な腹痛と嘔吐があるからということで往診依頼がありました。

普段、どこにも病院・診療所にはかかっていない方です。救急病院に電話したけれども、明日朝一番の外来で来てくださいと言われたとのことでした。
でもだんだん痛みが強いからどうしたらいいんだろうと。
この方は直接診察したことはないのですが、すぐ近所に私が訪問診療に行っていて、私が訪問をやっていることを知っているから電話をかけてみたと言います。

気になったので深夜ですが往診をしました。意識レベル問題なし。バイタルサインは血圧が痛みのためか180/110mmHgと高い。
腹痛が続いていて、嘔気があって 臍のやや上に圧痛がある。腹壁は軟。腸蠕動が弱い。
携帯型の超音波検査で見ました。心臓の動きは良好。腹腔内にエコーのLowなところはない(腹水や腹腔内出血はなさそう)、腹部大動脈は拡張なし。
肝内胆管拡張なし。膵臓腫大なし。胆石なし。小腸が限局的に拡張していて液体貯留がある。
ということで、イレウス(腸閉塞)を疑いました。
痛み止め、嘔気とめを注射した後、CTが必要と考えて地域の基幹病院に連絡して救急で受診してもらうことにしました。
絞扼性イレウスで手術になったそうです。

深夜に1人で運転して、患者さんの家を探して、1人で受付事務をして、注射の準備をして、基幹病院に連絡をとって、紹介状を作って送る、
とやっているとおおかた2時間くらいかかります。
それを普段診察していない患者だからという理由で、診療報酬を4分の1以下に引き下げるというのは、現場の感覚からは離れています。
なぜこんな改定が行われたか、厚生労働省の説明では、往診の「適正化」のためだそうです。

先の症例のような往診は不適正だということでしょうか?
病気で医療機関にかかっていないような普段比較的健康な人には休日往診や夜間・深夜の往診は必要ないと想定しているのでしょうか。
確かに多くはありません。しかし、さっき挙げたような往診はあり得ます。コロナウイルス感染症の蔓延期には特に頻発しました。
もし、またコロナ禍のようなことが起きたらどうするのか、セーフティネットの破壊に繋がりかねないと思います。

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