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定性リサーチ、組織内へのアウトプットはどうするのがいいんだろう

UX Research Advent Calendar の9日めの記事としてお書きしました>

こんにちは。
Eコマース系の某社でUIデザイナーやっておりますノムラと申します。

社内での定性リサーチの取り組みと、そこから出てきた「リサーチ結果のアウトプットってどういう形が効果的なんだ?」という想いについて書かせていただきます。

弊社での定性リサーチ活動について

2020年の後半から、社内ワークショップ等実施して準備しつつ、2021年の序盤ごろからエンドユーザを対象としたインタビューリサーチをしています。

「プロダクト開発の中の人は、プロダクトのユーザと対話して理解してた方が健全だよね」という想いを持った一部デザイナーが、デザイン業務の傍らでユーザさんにコンタクトとって話を聞く、というゆるっとした内容の活動です。

(活動の呼称としては、UXリサーチではなくデザインリサーチとかユーザ実態調査といった言葉を使っています。この記事では定性リサーチと呼んでいきますね。)

「話を聞いてユーザの実態を知ること」を目的として発足したため、最初はあまり具体的な仮説など立てず、ざっくりと

プロダクトを使うに至った経緯はどんなですか?
プロダクトを使うにあたって最近変化はありましたか?

という具合に聞くところから始めています。

複数回リサーチを行う中で、トライアル的に仮説を立ててみたりインタビュー対象者の属性を区切ってみたりもしています。

リサーチ活動内容

4回のリサーチインタビューを行いました。
全て、オンラインでのビデオ通話を使った1時間程度のインタビューです。

1回目(対象者数:10人)
特に仮説も何もなく、いろんなユーザから話を聞く

2回目(対象者数:9人)
少し具体的な情報を得るべく、インタビュー対象者を属性でスクリーニングして話を聞く

3回目(対象者数:3人)
具体的な仮説を立てて、その検証を行うことを目的とする

4回目(対象者数:9人)
ユーザの関心ごとを問うアンケートを広く行なった上で、特に関心の集まってるトピックについて知見がありそうなユーザに話を聞く

回を重ねるごとに少しずつ内容を具体化して、「プロダクト開発に役立ちそうな、ユーザ実態情報」を得るべく手探りで進めています。
1年間で話を聞いた人数は30人程度という、だいぶゆるめなペースです。

社内へのアウトプットが難しい

ゆるく続けているなりに、定性リサーチ活動の難しさも感じています。
特に難しく感じているのが、「得た情報をどうやって社内に共有するか」という点です。

一般的なリサーチでは、ある程度具体的な理由(何か新規にプロダクトを作ろうとしているとか、改善したい課題があるとか)を持ってリサーチを行うものだと思うのですが、私達のリサーチ活動は「とにかくユーザのことを知ろう」というくらいの、割と曖昧な行動指針で実施しています。
そのため、いざ社内にインタビュー結果を共有しようとした時、「いろんな情報を得たけど、何を、どういうふうに伝えよう?」となったりします。

インタビューに参加をしたメンバーにとっては、ユーザの生の声を聞き、リアルな実態に強い共感(時には感動)を得ることができて非常にプラスとなっている実感があるのですが、これを社内の他メンバーたちに伝えることがなかなか難しいです。

報告会など行なって、いくらか共感の声や「面白かった」という感想をいただけはするのですが、インタビュワーとして直接ユーザと対話した当事者からすると、「面白さの一割も伝わってないなぁ」というのが本音です。
そもそも一時間とかの報告会で伝えられる情報量に限りがあるのですが、それ以上に共感・感動を伝聞で伝えることが全然できないことが口惜しいです。

レポートのドキュメントを書いてみたりもするのですが、(文章力のせいもありますが)やはり全然伝えられません。というか読まれない。

例えるなら、ライブコンサート

この「すごく良い情報を得たのに、うまく蓄積できない、伝えられない」感は音楽のライブコンサートに似てるかな、とか思いました。

報告会を行うことは、例えるなら編集された録画映像みたいなもので、観てそれなりに楽しくはあるけど、ライブに参加して体験するのとは全然違う。
ライブに参加した人が観て思い出して感動を追体験するには良いのかも、というレベル。

ドキュメントとして蓄積するのは、例えるならファンによるライブレポートみたいなもので、まぁ大概読まれない。読んでも曲目がわかるくらい。ライブ参加した人が思い出を書き残すことが主目的であって、第三者に伝わる情報は極少量でしかない。

というように、ライブコンサートとインタビューはなんか似てるな、と。

インタビューリサーチは、とどのつまりは「対話」であって、これを伝えるには対話に参加してもらうしかないのかなぁ、と思うわけです。

で、実際参加してもらう

参加して体験してもらわないと、この知見は共有できないなぁ」というのは、割と序盤から感じていまして、2回目と4回目のリサーチでは社内で参加者を募った上でインタビューを実施したりしました。(2回目の時は3名、4回目の時は5名の有志が参加してくれました。)

で、これはこれで難あって、やはりインタビュー慣れしていない人や、インタビュー設計段階から参加していない人だと、ユーザ実態の深いところを聞き出せない。
それでも十分ユーザ理解に貢献できはするのですが、ちょっと勿体ない感があります。せっかくユーザさんに時間割いてもらっているのだから、我々が内輪で議論しているだけではたどり着けないような、意義ある情報を引き出したい。

2段構えでいこうかな、と思っています

ここまでの経験を踏まえて、「イタンビューリサーチは2種類あるものと考えて、この2種類を交互に行うと良さそうだ」などと考えました。

実態探索型リサーチ:
ユーザの実態を広く聞くようなインタビューを行う。
なるべく多様なユーザを対象に、また、多様なメンバーにインタビュワーを行ってもらって、さまざまな話を聞き出す。

仮説検証型リサーチ:
実態探索型リサーチで得た情報から仮説を立て、その仮説の検証を行うべくインタビューをする。
仮説検証に有効であろうユーザを対象にして話を聞く。
仮説に対して深い理解をしていて、また、ある程度インタビュー慣れしたメンバーによって執り行う。
ドキュメントによる情報の蓄積も頑張る。

上記の実態探索型仮説検証型を交互に実施して、社内のインタビュワー体験者を増やしつつ、具体的な情報・知見の蓄積を試みたら良さそう… ということを考えています。

と、述べたのですが、これはあくまで一案で、他にもいくつかリサーチ活動の方向性とか流れを検討しているところです。
実際の来年の活動はもっと全然ちがう形になるかもしれません。今回の振り返りや考察の結果どのような動きに至ったかについては、またいつかnoteでご報告したいと思います。


以上です!だいぶつらつら書いてしまいました。
これからも無理ないペースで定性リサーチやっていこうと思っています!

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