毎日更新の小説 最終話

陸視点

陸「…………」


アルタイルに来てから1週間………陸は昴を失ったショックから立ち直れず部屋でずっと遠くを見ていた


快、空、海、夜摩「…………」


そしてそんな陸を4人はとても心配していた


「コンコンコン」


快「はい」

聖「陸君いるか?用があるんだ」

快「分かりました  陸  親父さんがお前に用があるって」

陸「………今行く」


意気消沈し覇気のない陸の声は小さく低い


聖「………案内したい場所がある」


聖はそう言って陸をある場所へと案内した


陸「…………」

この部屋は………

聖「昴がアルタイル所属時代にずっと使ってた部屋だ  定期的な清掃はしているがあの頃とは何一つ変わっていない」

陸「…………」

広い部屋………玄関から廊下を真っ直ぐ行けばリビングになっててリビングの隣に寝室………後は風呂場ともう使われなくなったであろう武器を置く部屋………何処も彼処も父さんの匂いがする………


アルタイル所属時代に使っていた昴の部屋はとても綺麗で………既に懐かしいその匂いに包まれていた


聖「廊下から直ぐにある部屋に入ってみな」


聖にそう言われて入った部屋には………まだ真新しい新品の武器が2つ置いてあった………


聖「俺は仕事があるから出るが………この部屋は昴からの遺言で好きに使っていい  それとその武器2つはある条件を満たすことで使えるようになる」


とそれだけ言って聖は退室し1人になった陸はしんとした部屋でリビングに行き、たまたま目に入ったビデオテープを手にしてそれを再生させる


陸「…………」

父さんがアルタイルに所属してた頃のだ………しかもかなり若い………αA戦闘部隊の部隊長って………確かアルタイル内ではトップシークレット中のトップシークレットの部隊(聖が初日に軽く教えてくれた)………父さんの時折見せてた手の動きはその頃からの合図………


20分と短い記録を一つ一つじっくり見ている陸は昴がどれだけの実力者であり有権者だったのかを知る


陸「…………」

記録自体は短いのに内容が濃い………昴さんの性格や趣向………癖が濃縮されてる………………もうあと1本だけか


記録を見続けて2時間………あと残り1本だけになった記録を再生する陸


昴『ここまで見てくれてありがとう  陸』

陸「?!」

なんで俺の名前が………?!これはアルタイル所属時代に撮っているはずの記録じゃ………

昴『きっと驚いてると思う  なんせこの記録での俺はアルタイルαA戦闘部隊の部隊長だ  陸に会うということはまずない  だけどこの記録を撮っているのには訳があるんだ  俺はごく稀に予知夢を見る  その予知夢で君が俺の死を嘆き悲しみ意気消沈している姿が見えた  そこに俺はおらず死んだということだけがわかった………君は俺が未来で出会い育てるんだろうと思ってね………きっとこの記録を見てる時にはもう俺はこの世に居ないんだろう  だからこそこの記録を撮ってる』

つまり父さんはいつの日かこうなることを予期していたんだ………

昴『陸  俺と聖は初代最高司令官の血を引いていない  不遇の子だ  勿論兄さん達は俺と聖のことも平等に愛してくれたし父さんたちもそうだった  だからこそ俺達は強くなる必要があった  そうしなければ生きていけなかったんだ………いずれ能力者達を募った戦争が起きて兄さん達や弟たちは皆死んでしまうと思う………その中で俺と聖は高確率で後遺症を患いながらも生き残る………きっとその先で君と出会い育て最後は君のすぐ近くで死ぬんだろう  ………君ならきっと未来の俺が成し遂げたかったことを成し遂げてくれるはずだ  俺は調合を最も得意としているんだけど武器同士の調合もできるんだ  きっと俺はこのことを忘れてるだろうから部屋に時が満ちれば姿が見え使えるようにしておく  君ならきっと使いこなせるよ  ………愛してる  未来の愛しい俺の息子』

陸「…………」


昴の記録は最後にそう残して終わり、陸はビデオテープを元に戻して先程の部屋へ


陸「…………」

父さんは何度も輪廻を回って両親が死んだ時に再び生まれたから孤児院で育った………前世の記憶を残していたからアルタイルのこともよく知ってたんだな………


陸はそう思いながら先程見た新品の武器のある部屋に到着して中に入る………するとショーケースに入っていたシルエットしか見えなかった2つの武器が、ショーケースが透明になるにつれて見えてきて………


陸「……っ……」


陸は今にも泣きそうになった………


陸「父さん………」


ショーケースに入っていた2つの武器………それは世間一般で「命の刀」と呼ばれる選ばれた者にしか得ることのできない、「黒刀」と「魂」を結合し作り上げる世界にたった1つの刀と陸が愛用する拳銃と同じ銃だった………「命の刀」はその名の通り命を司る刀であり本来ならば体外に出すことは不可能………唯一例外があるとすればそれは完全に意志の強さのみ………つまり昴は何世紀も前からこれを準備していたが故に魂も命もない状態で………いつ死んでもおかしくは無い状態だった


陸「必ず………必ず成し遂げるから………父さんの夢を………この命に誓って………」


武器を手に陸は泣きながら誓った………昴の夢を………成し遂げることの出来なかったことを成し遂げると………






その後  陸、快、海、空、夜摩の5人はアルタイルに入隊し、入隊から1年足らずの半年で部隊長を務めあげる様になり、その5年後にはトップシークレット中のトップシークレットの部隊の部隊長就任が決定、陸は昴が所属していたαA戦闘部隊の部隊長に就任、快は陸とはサポート関係にあるαB戦闘部隊の部隊長に就任、海は各傘下組織、Family、兄弟姉妹組織の内情収集部隊の部隊長に就任、空は各国の天皇や国王を護衛及び側近を主体とする部隊の部隊長に就任、夜摩は護衛を主体とする護衛戦闘部隊の部隊長に就任し、それぞれ仕事が忙しく部下も増えたが、相変わらず5人で馬鹿騒ぎをやってみたり、叩いてかぶってジャンケンポン大会をアルタイル所属隊員達全員を巻き込んでやってみたりと、出会った当初から変わらぬノリで過ごしている


時々陸が寂しそうに遠くを見ながら誰かを待っている姿も目撃されるが、彼は彼なりに昴の死を乗り越え強くなったのだ………







いつの日か帰ってくる昴を待ちながら今日も5人で仲良く仕事をして、部下を巻きこんで何かしらのゲームをして夜を過ごすのだった………




失ったモノと守りたい命                                                完

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