【漫画感想】僕の心のヤバイやつ Karte.52 僕らは少し似ている

作品へのリンクは以下。
https://mangacross.jp/comics/yabai/57

『クリスマスプレゼンのマフラー。山田はいつ用意したんだろうな』
これが今回のテーマ。

-タイトル-
『僕らは少し似ている』

タイトルが『僕ら』の回。
最近だと、
Karte.44『僕らはLINEをやっている』
Karte.48『僕らはゆっくり歩いた』
あたりだろうか。どちらもエモい回だった。

僕ヤバは『二つの距離』を描く作品だ。
一つは『市川と山田の距離』そのもの。
もう一つは、市川が『認識している』市川と山田の距離。(以降、『認識距離』とする)

作品の更新後、
「どうして二人は付き合っていないんですか......?」
といったコメントをよく見る。
実際の距離からすると、その感想はわかる。
だが、認識距離はまだ遠い。
市川は自己評価が低く、山田評価が高い。
それこそ『友達』と呼ぶことにも、確信が持てないほどに。

そんな市川が、自分と山田を合わせて『僕ら』と称する。
ましてや『僕ら』は少し『似ている』だ

市川と山田の類似性についての過去の言及は、
Karte.44 『僕らはLINEをやっている』の1ページ目。
市川の「やっぱり山田とは好みや感性が違うのだな......」というモノローグが入る。
『やっぱり』という言葉。
12月21日時点、認識距離はまだ遠い。

一方、山田はどうか。
彼女は「自分の好みや感性を、市川に合わせる」という性格だ。

例えばKarte.46『僕は連行された』での会話。
「市川......黒、好きなんだね」
「あ、ああ......服......うん (黒しか持っていない)」
「私も好き!! あ、今日は違うけど、私服は黒が多いかな」
......作者Twitterの山田イラストとかで、
山田が黒系の私服を着てるイメージ、全く無いんだけどな。

今回の話では山田は黒いジャージを羽織ってくる。
(https://twitter.com/lovely_pig328/status/1298202227769667584 )
ツイヤバ海編では黒い水着を着る。
(https://twitter.com/lovely_pig328/status/1294932882289381376 )

山田が市川に同調して「私もそれ好き!」と言うのは、
「今この瞬間、私もそれが好きになりました!」の意。

話を戻そう。
ともあれ認識距離は、実際の距離以上に重要なテーマだって話。

-1ページ目-
おねえ可愛い。
「おやおや?おでかけ?」からの「図書館か」のトーンの下がり具合よ。
この辺はアニメ化したとき、温度感の解像度が上がりそう。

興味深いのは、
「本を返しに」という返答で「......図書館か」と察してもらえること。
普段から休日に図書館を利用しているのだろう。
Karte6で描かれた、図書室に対する思い入れからしても、
それは不思議じゃない。
いつも読んでるグロ小説......買っているわけじゃなく、借りてんだな。
(多分ああいうの、普通は学校の図書室には置かないでしょう)

ちなみにおねえ。
弟の袋、思いっきりハート描いてあるぞ

-2ページ目-
待ち合わせ場所は公園。
Karte.11にて、市川と山田の住所の描写が若干ある。
実在する公園なら、特定できるかもな。

-3ページ目-
というわけで山田登場。

賢明な諸兄はご存じだと思うが、山田はモデルである。
モデル......すなわち『服を着ることで生計を立てている』と言っても過言ではない。
つまり"これ"は女子中学生の、正しいジャージの着用法。いいね?

服装チェック。
ジャージのインナーはアディダスだ。
山田といえば、自室ではFILAを着ている絵が多い。
スポーツ系ブランドを好んでいるんだなぁ。
山田がバスケ部だったことも、少し関係がありそうだ。
本人の性格も、動きやすい服が好きそうだしね。
......いや今回の"これ"、動きやすいか??

-4ページ目-
「な...なんか久しぶり...」
「5日ぶり...かな...」
いや君たち毎日LINEしてるし、通話してるし、
一昨日の晩はビデオ通話だったね?

まぁそれでも、実際に会えないと遠くに感じてしまう関係ってことなんだろうな。実際の距離感は、もうそのレベル。

「こちら、わん太郎。犬だよ」
この発言から溢れ出る『山田』感すごい。
そうそう。君、そういうぶっ飛び方をしている子だったよね。
最近は恋する普通の女子中学生で、『山田』成分が不足気味だった。
補充完了。

-5ページ目-
「飼い主に似ていて助かったぜ......」
この山田をナチュラル小馬鹿にした感じ、1巻の市川っぽくてなんだか嬉しい。
ちなみに『わん太郎が山田に似ている』ではなく、
『山田が犬に似ている』という認識。

-閑話 山田は犬か猫か-
初期、山田は猫として描かれていた。
Karte.11ではバヤシコに直接「猫なの!?」と言及されているし、
『どっちも猫』というツイヤバまである。
(https://twitter.com/lovely_pig328/status/1098893348033617921 )
いつからか、犬になったよな。
初期の気まぐれ強めな山田も、好きだったんだけどな。
-休題-

-6ページ目-
「意識の高い家は英語で教えるんだな」
「どういうイメージ?」
ここの会話、すごく市川と山田っぽい。
ちょっとだけ斜に構えた見方をしていまう市川と、
それを面白がる山田。

「......よくよく考えてみたら、お土産に"モノ"って重いのでは......?」
普段の市川だったら、買うときに考える内容だと思うんだよな。
このあたりが、市川の言う「軽率な行動」であるわけで。
山田に対して「軽率な行動を取れる」くらいには、心的なハードルが下がっている。

お茶を買ってくる山田。
ここ、Karte.27『僕らははぐれた』との対比ですね。
市川がおーいお茶で、山田が紅茶花伝という構図は同じ。

前回は市川が、
「まぁ......飲み物くらいいいだろう......」
紅茶花伝を渡し、遠く離れて座った。
(これは猫)

今回は山田が、
「フタ、空けといた......!!」
おーいお茶を渡し、とても近くに座る。
(これは犬)

-7ページ目-
「ね、市川も命令してみて」
『「お手」をやるために、市川に振っている』って解釈でいいんだよな、ここ。
最後は市川も、察した顔で
「......お手...」
ってやるしな。うん。

-8ページ目-
さて、無事にまた手を繋いだわけで。
("手を繋ぐこと"の解釈は、もう少し後に書く)
(ちなみに山田には
「一回触ったところはいつでも触っていい」
という認識がある。
https://twitter.com/lovely_pig328/status/1209054186173677568 )

「寒くね......?」
ダメージジーンズとノースリーブだからです。
藤原基央な表現をすると、
「冬が寒くて本当によかった」なんでしょうけれど。
いや、今回に関しては服装が......年の瀬ですよ......

「あ、そうだ マフラー」
という市川に対して、山田は手を繋いだまま袋を取る。

-9ページ目-
「これね......ホントは 市川にあげようと思って」

マフラーがクリスマスプレゼントだったことが確定した。
実際、その描写はあった。
Karte.48『僕らはゆっくり歩いた』の、山田がマフラーを取り出すシーン。
『市川に渡す紙袋』から、マフラーを取り出している。
山田は「朝つけてきたんだけど、暑かったから外したの」なんて言うけれど、それならば自分のバッグにしまうはずだ。
これが「市川に渡すためのマフラー」ということは、明示されていた。
(『混入させて「返す約束」を取り付ける策』みたいな説もあったので、確定はしていなかった)

ここからが今回、一番踏み込んだ考察。
『クリスマスプレゼンのマフラー。山田はいつ、用意したんだろうな』

まずそもそも、山田は何故マフラーを渡そうと思ったのか。
これはKarte.39『僕は夢を見た』に起因する。
山田は市川に、手紙でこう伝える。
「私のせいでごめんね...」
風邪を引いた市川に、山田は責任を感じているのだ。

その後の番外編。
『おまけ3 イチゴとババロア』にて、山田は市川母から話を聞く。
「あの子(京太郎) よく風邪をひくのよ」
「そうなんですか......」

『自分のせいで市川が風邪をひいた』と考えている山田。
『よく風邪を引く』市川。
贖罪とクリスマスプレゼントを兼ねて、
山田が市川にマフラーを贈ろうとした。
そう考えるのが、自然じゃなかろうか。

じゃあいつ、買ったのか。
時期に関するヒントはKarte.40,41間の番外編にある。
12月17日(火)に、山田は市川にこう伝える。
「24日、市川の周りに赤いものがたくさんある」
これは「クリスマスプレゼントとして、赤いマフラーを用意している」宣言でいいだろう。
(マフラーが赤いのは、Karte.52の扉絵にて確認可能
https://twitter.com/lovely_pig328/status/1277905551922327553 )

山田は遅くとも14日(土)か15日(日)には、マフラーを用意している。

さて、この時系列の山田。
順当にいけば、このままいい感じにクリスマスを迎え、
市川にプレゼントを渡せる。
そのはずだった。
Karte.42『僕は利用された』
Karte.43『僕は山田が嫌い』
この事件がなければ。

この事件で山田が得たのは
「市川に嫌われたら、彼は何も言わずに自分の前から消えてしまう」
という不安だ。

この話、市川視点で物語が進むので気づきにくいが、
山田視点だと「最初から最後まで、理由がわからない」
「市川が自分の前から消えた」
「わからないけれど、おそらく原因は私にある」
「市川は理由を教えてくれない」
山田はそういった状態で、Karte.42,43を過ごしている。

悩んだ山田が出した結論が、(最終的に市川に否定されたとはいえ)
「私の距離が近すぎたのかもしれない」
だったのも大切なポイント。
それもマフラーを贈ろうとしている相手に、だ。

この事件以降、山田は本当に慎重(不安)になる。
市川の機嫌を頻繁に伺うようになる。
「市川が消えてしまわないように」手段を講じるようになる。

話を戻そう。
山田はマフラーについてこう語る。
「ホントは、市川にあげようと思って」
「......でも...なんか...嫌かも.........とか...」
ここだけ切り取ると、恋愛模様の1ページに見える。

しかし、上記の事件を踏まえて考えると、少し見え方が変わってくる。
「ホントは、市川にあげようと思って」(当初はその予定だった)
「......でも...なんか...嫌かも.........とか...」(しかしあの事件以降、プレゼントのせいで嫌われる未来を幻視してしまった)
ここに不安の感情があるならば、
次の描写で市川を握る手に力が入るのも頷ける。
「消えてしまわないように」だ。

「距離が近いから嫌われたのかもしれない」
なんて結論にも、一度はたどり着いた。
「......なんか......なんかぁ......」という言葉に出来ない感情も頷ける。

(僕 : ここで突然ですが、Karte43で市川と山田の関係が消えてしまった世界線のマフラーの話をしていいですか?
友人 : えっ......
僕 : 渡せなかったマフラーを、目に入らないように引き出しに閉まった山田が、一生そこを開けられなくなる話なんですけど
友人 : やめとこう
僕 : Karte43の前日の晩、マフラーを手に「距離が近いから市川に嫌われた」と震える山田の話は?
友人 : やめとこう)

-10,11ページ目-
6ページで市川は、
「お土産(プレゼント)に"モノ"って重いのでは...?」
と思案した。
自身が用意したマフラーに対する山田の感情も、
同じようなものだったはず。
『僕らは少しだけ似ている』んだ。

だから市川が犬のお土産を渡すというのは、
Karte.43で山田に生まれた不安を祓う、最高の返事だった。
この"距離感"で良いんだ、という。
(パッと見、今回はクリスマスデート編のアンサー回に見えるけれど、Karte.43のアンサー回だよ、というのが僕の解釈)

さて、秋田けんたろうを受け取った山田。
喜んでその場でくるくると。
この辺はツイヤバのホワイトデーを彷彿とさせる。
(https://twitter.com/lovely_pig328/status/1238795711585476609 )
ポケットにお土産を忍ばせているのも同じ構図。
正史的な解釈をすると、このエピソードがあったから山田はホワイトデーで察することが出来た、です。
ホワイトデーの話をもう少ししますが、『察し』て「競争しよ」で「賞品は?」の流れから溢れる山田の市川理解度.....信頼度が凄い。
ここから3か月、本当に正しく距離が縮まっていくんだろうな。

山田の「秋田けんたろうって名前にしよう!!」に対し、
「ネーミングセンス酷いよな......」と言えるのが市川。
Karte.48で「僕はお人好しじゃない。嫌なことには嫌って言う。そういうやつなんだ」って言っているしな。
「ネーミングセンスが酷いと思ったら、酷いって言う。そういうやつなんだ」ってことだな。

-12ページ目-
「市川......初詣行く......?」
「あー...行く」と市川は答え、
「ホント? やった...」 と返す山田。

Karte.31の「市川......LINEやってる?」と似たやり取り。
(であることを山田が上手く利用する)

ここの山田は「やった!!」じゃなくて「やった...」。
本当に「一緒に行こう?」って意で聞いているなら、
市川の「行く」という返事に、もっと喜ぶはず。

これ、市川を嵌めてる。

「市川って普段、初詣行くの?」のトーンで投げかけて、
「行く」という返事で言質を取る。
「了承したね?じゃあ場所と日にちは、後でLINEでね!バイバイ!」
市川が「えっ?」と戸惑っている間に、
山田はそそくさとお別れ。
このスピード感よ。

おいおい、山田さん。
あんたクリスマスの晩にどれだけゆっくりお別れしたよ。
年内最後の逢瀬を、そんなあっさり終わらせる女じゃないでしょう。

もしかして"これ"をやるために、Karte.50で
「明日トンボ返りになった」という市川に
「じゃーさぁ......帰ったら......」って会う約束を取り付けようとしました?
恐ろしい子......

山田が身につけた犬のキーホルダーの話。
『市川の目線の位置』に付けている、という認識です。
市川に対する飼い犬的アピールだと捉えています。

Karte.33『僕らは入れ替わってる』でもわかる通り、
山田は『派手に関係をアピールするが、バレない』というのが大好き。
Karte.27『僕らははぐれた』で、
「私は秘密にしていたほうが楽しいと思うな」って言っている通り。
(両方『僕ら』回ですね)
つまり、山田。
この犬のキーホルダーを、学校で見せびらかします。
スクールバッグの最前面に付けるのが本命かな。

さて、こんな感じで今回も終わり。
次回は大晦日で、その次が初詣かな。
市川、山田、おねえのみつどもえがまた見れるといいね。

以上。

共著: ふぇけ

前回へのリンク
【漫画感想】僕の心のヤバイやつ Karte.51 僕には難しい
https://note.com/gilgame36/n/n8a65ca2fb565

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?