【漫画感想】僕の心のヤバイやつ Karte.53 僕は声が聞きたい (9/15追記)

作品へのリンクは以下。
 https://mangacross.jp/comics/yabai/58

PCで読みやすいように改行設定しているよ。

前回までは、
「友人(ふぇけ)と話した内容をまとめて投下」
というスタイルでした。

今回は3人での会議通話だったため、
会話内容をそのまま書き起こす試みをしています。

-感想通話 登場人物-

ぎ る
 カードゲーマー。
 発言や行動から、キャラクターの思考を解くオタク。
 僕ヤバをHUNTER×HUNTERとして読んでいる。

じーく (別名義: コジエズ Twitter:@First_kzez )
 同人漫画家。
 描写や演出の意図、狙いを解くオタク。
 僕ヤバをHUNTER×HUNTERとして読んでいる。

ふぇけ
 文芸畑。
 主人公の機微を解くオタク。
 メンバーの中で唯一、恋愛モノを読める。
 HUNTER×HUNTERは読んでいない。


-9/8(火)晩 discordにて-

○1ページ目(年の瀬のファミレス)
ぎ る: 個人的にはナンパイの隣にいる奴が気になる。
ふぇけ: ラッパーだよね。
じーく: 中学生ではない。先輩かな。
ぎ る: 座席に座るとき、ソファか椅子かって性格出るよね。
    性格的にはソファがビッチ、ナンパイ、ラッパーなんだよな。
    椅子タイプの市川がナンパイに引き込まれてソファにいる。
ふぇけ: 人数比が4:2なのすげぇな。
ぎ る: 最初のコンビニに女性陣いないんだけど、
    どういう経緯のファミレスなんだろうなこれ。

○2,3ページ目(深夜のコンビニ)
じーく: ここ、ちょっとレッドブルについていいですか?
ぎ る: どうぞ。
じーく: どうしてレッドブル買っているんだと思う?
     ①中学生(中二病)の「レッドブル=かっこいい」みたいなイメージから
     ②夜に起きて、山田とアレコレするため
    みたいな邪推をしているんだけれど。
ぎ る: 小中学生の頃、
    「大晦日=いつまで起きていても合法的に許される唯一の日」
    みたいなイメージ無かった?
    この時間にしかやらない特番とかあるし。
    そういうのに備えてなのかなーというイメージなんだけど。
じーく: だとしたら、普通に中学生解像度が高いな。おっけー。

○閑話(ナンパイの喉仏)
じーく: 突然だけど、ナンパイ。喉仏の描写がほんと細かいのよ。
ぎ る: ……作者のフェチでは?女性作家だし。
ふぇけ: あー……確かに細かいな……
ふぇけ: ちょっと待って。
ふぇけ: あぁ!やっぱりそうだ。濁川くんも喉仏ある。
じーく: その確認、ナイスだわ。
ぎ る: ……あ、『男性』のメタファーってこと!?
じーく: うん。市川に無いし。
ぎ る: ……「ナンパイの喉仏」って突然言われて、
    即座に濁川くんチェックいける……?こわっ……
ぎ る: 『市川の喉仏』をテーマにツイヤバ掘り返さないとじゃん……

○4,5ページ目(関根萌子)
じーく: 5ページ目、中央左の関根の顔。
ぎ る: ここだよなぁ……この表情から間宮先輩を蹴り飛ばすまでが、
    今回の最重要事項まである。
ふぇけ: 俺はまだ関根の解像度低すぎて、ここ掘りきれてないわ。
ぎ る: 関根ってさ。市川のことを値踏みするんだよね。
    一番わかりやすいのがツイヤバの『ゴシップ』なんだけど。
     https://twitter.com/lovely_pig328/status/1270681967160250368
    ここで関根が
    「山田の相手として相応しいか、市川を試している」
    という解釈があるんだよね。
ぎ る: ちなみにじーくさん、このツイヤバの作中時間がいつだかわかる?
じーく: 作中時間?どういうこと?
ぎ る: 前にふぇけとは話したんだけど、
    座席から作中時間をほぼ特定出来るんだわ。
じーく: あー……席替え後ってこと?
ぎ る: そう。席替え後。かつ、市川が山田の席が入れ替わる前。
    『ゴシップ』は、2019年12月18日の昼休み。Karte.41の直後の話。
    「そっちが来い」「王かよ!」の会話のあと、バヤシコ達が来た。
    だから『ゴシップ』3コマ目、市川の顔はまだ赤い。
じーく: ……情報の散らせ方が細かすぎでしょ……

ぎ る: ともあれ、2019年12月。関根萌子は市川を値踏みしている。
ふぇけ: まぁ、このコマは明らかだよな。関根アップ単体1コマだし。
    で、ここからよ。
ぎ る: 間宮先輩キャンセル。
ふぇけ: これさ、関根としては
    「山田は市川と付き合っている」
    という扱いにして、
    ナンパイに諦めさせたほうが得だよな……?
ぎ る: そうなんだけど……
ふぇけ: 関根のどこまでが打算かがわからんのよ。
    この話、関根の行動全部を損得ロジックで解釈すると、
    関根だけ高校生、大学生みたいな精神性になってしまう。
ぎ る: 俺もいろいろ考えたけれど、ここは素直に
    「今はまだイッチは上手くやっている」
    「余計なこと言ってややこしくすんな。黙ってろ」
    でいいと思っている。
ぎ る: 深読みしようとすれば出来るんだよ。
    「間宮先輩が言い切った」後、市川はどう答えるか。
    これは8ページ目に答えが書いてある。こう言うんだ。
    「誤解です」って。
    するとナンパイが
    「ほら、山田さんフリーじゃん」
    となって山田に火の粉が降る……から、関根は止めた。
ふぇけ: 絶っっっ対ない。思考速度が人間じゃない。
ぎ る: だろ?だから、素直に解釈していいと思うんだ。
じーく: もし仮に「関根が山田のために止めた」とするならば、
    描写の順番が違うんだ。
    「山田との関係性がバレた市川が、なんと答えるか」
    について考える時間を、関根に与えないといけない。
    「山田からのLINEを見られる話」を先に挟まないと駄目なんだ。
    順番としては、
     ①ナンパイに山田からの着信を見られる。
     ②「イッチ『誤解です』って言うよなぁ」と関根が思考する。
     ③間宮先輩が「その子、山田さんと」と言う
     ④関根が間宮先輩を止める
    にならないとおかしい。
ぎ る: 確かに。じゃあその線は捨てて良さそうだね。

じーく: 『関根が山田を守る』という発想からいうと、4ページ目。
    「イッチ、場所変わってよ」
    これが山田のため説って検証した方がいいのかな。
ふぇけ: まだ『山田』ってワードが出てないし、
    ここは純粋にナンパイの隣を取りに行った……でいいのでは。
ぎ る: これ、関根自身が山田に対する言及を引き受けることで、
    「山田を守る(イッチはミスるかもだけど、私はミスらない)」かつ
    「ナンパイの意識を自分に向けさせる」
    の一挙両得を取りに行った説、駄目ですかね。
じーく: いやー、流石に。
ふぇけ: ちょっと無理がある。
ぎ る: だよね。

○6,7ページ目(友達)
ぎ る: ナンパイの「俺は悲しい」めっちゃ好きなんだけど。
じーく: わかる。このプレッシャーのかけ方、すげーリアリティあるよな。
ふぇけ: (んも~~~~)のコマ。
    描かれていないけれど、市川がLINEを捕捉されたのを見て、
    ここでスマホ取り出しているよね。
ぎ る: この関根の「あー……」の(潮時かな……)感が好き。
    その後の「送ってってよ、"市原"くん」のところ、
    市川を認める関根、もっと好き。

○閑話 (関根萌子とは)
ふぇけ: 俺が関根のことわからねぇのは、
    関根はどれくらいの熱量でこのファミレスにいるのかなのよ。
ぎ る: 少なくとも、お泊り会より優先しているよね。
じーく: 後から合流するにしても、ね。
ふぇけ: そうなんだよ。このファミレスは相応に重要なはずなんだよ。
    でも、自分の利益を度外視で市川助けるじゃん?
    ナンパイに対する意識の重さがわからねぇんだよな。
ぎ る: 一応、関根の性格としては平和主義者……
    身内に優しいというか、揉め事を嫌うってのは描かれてるよね。
    例えばKarte.14の6ページ目なんだけど……
じーく: これ凄いよな。最初見落としたもん。
     にゃあの顔、「てめ何笑ってんだよ」、次のコマの市川の顔
    って視線誘導しているんだよな。
    そして見えづらいとこにキャラクターが深まる描写を入れている。
ふぇけ: やっぱり関根が掴みきれんわ……

○8,9,10ページ目(関根萌子)
じーく: 『フラグベキベキマン…』って凄い言葉だ。
    この10文字だけで、これまでのあらすじとして機能している。
ぎ る: さて、関根萌子の話をしようか。
ぎ る: ここから3ページ。関根と市川の話なんだけど……
    このシーンって、どういう意味なんだろうな。
    さらっと読むと、
    「全てをわかっている関根が、市川の心情を表に引っ張り出した」
    「結果として、市川は言葉にすることで強い自覚を得た」
    という風に読める。
ふぇけ:違うのか?
ぎ る: この解釈だと、わからないコマが3つあるんよ。
ぎ る:   ①9ページ目 中央下、左の無言萌子
     ②10ページ目 右上、「知ってるー」萌子
     ③10ページ目 ②の左下。
    この3コマ。
ぎ る: それに対して、
     ①関根萌子は何故、市川の言葉に少し黙り込んだのか。
     ②関根萌子は何故、"大きな声"で「知ってる」と言ったのか。
     ③関根萌子は何故、少し怒った顔で「めちゃくちゃわかりやすいかんな」と言ったのか。
    この3つが説明できないと、関根萌子を読めたとは言えない。
ふぇけ: ①は
    「市川から存外ストレートな『好き』というワードが返ってきた」
    に対する処理時間だと捉えているけれど。
ぎ る: その処理時間と、②の大声は両立しづらくない?
    その場合は、
    「あー、うん。……知ってるよ。イッチ、わかりやすいもん」
    ってなるだろ?
    ここで関根は「知っている」ことを強くアピールしているんだ。
    つまり--
ぎ る: 関根萌子は『知らなかった』んじゃないかな。
じーく: ……あーーー。はい。はい。なるほどね。
ぎ る: つまり、8ページ目からの関根萌子はーー
    『山田が市川を好き』なことは把握している。
    しかし、市川の山田に対する感情は測りかねている。
    だから強く市川に踏み込み、市川の対山田感情を引き出した。
    市川の「好き…かな…」という言葉を聞く。
    ここで、市川-山田の両片思い状態を把握する。
    「あーー、知ってたわーーーー」
    そして市川にこう伝える。
    「……はぁー。言っとくけど、山田が市川を好きなのは、
     めちゃくちゃわかりやすいかんな?なんで察せてねぇんだ?」
ぎ る: こう解釈すると、
     ①ここで市川-山田の感情図を理解したから。
     ②知らなかったから、「知ってるーーー」と大声で言った。
     ③わかりやすいのは市川じゃなくて、山田。鈍い市川に少し腹を立てた。
    で読み解ける。
ふぇけ: なるほどなぁ……
じーく: 異論ないです。大声で「知ってるー」と叫ぶ関根、めっちゃ解像度高い。

○10ページ目(ありがとう)
ふぇけ: あー。ここは俺、考えてある。
    むしろ今日、ここしか考えてねぇ。
ぎ る: 「いや、そうじゃなく…」な。
    俺は関根に時間かけすぎて、ここ解けてねぇわ。
ふぇけ: 普通に読み取るなら、
    ここは「"好き"と声に出して言えた」に対するものだよな。
ぎ る: 直前のコマと次のページからして、
    市川の意識はそこにしか無いからね。
    でもこれ、出てくる言葉が
    「ありがとう」
    なのが違和感凄いんだよ。
ふぇけ: そう。ずっとそこに引っかかってた。
    じゃあ、何に対しての「ありがとう」だ?
    結論は出た。
    俺は市川にこう言いたい。
    「お前はまたそれかよ…」
ぎ る: ……どういうこと?
ふぇけ:  思い出してみ。俺達は前々回、何の話をしたよ。
ぎ る: ……前々回……あー!『友達』かこれ!
ふぇけ: そう。
じーく: 待って。前々回、俺は会議に参加してない。
    ちょっと置いてかれてる。
ふぇけ: Karte.51で市川が山田を『友達』と呼ぶのに、
    どれだけ思い切りが必要だったか覚えてる?
じーく: 予測変換にすら出てこないやつか
ふぇけ: そう。市川の中で『友達』って言葉はかなりハードルが高いんだ。
    だけど今回、関根は市川に「うちら友達なんで」と言ったんだ。
    ましてや市川はそれで「いかん……好きになってしまう!!!」だぞ。
ふぇけ: 市川は
    『関根が自分に対して「友達」と言ってくれたこと』
    に対して、「ありがとう」と言ったんだ。
ぎ る: 「いやそうじゃなく…」「?」「別に…」
    のとこの解像度が凄く上がった。
    なるほどな……これはわからんかった……

○11ページ目(あ、ちょっと寄ってくぅ?)
じーく: 市川が来ないことをわかりきった状態でのフリですよ。
ふぇけ: その先に山田がいるのになーってのが上手い。
ぎ る: 「ふーーん」ですよ「ふーーん」
    で、この後の山田サイド。 
    これは昨年末にツイヤバでありました。
     https://twitter.com/lovely_pig328/status/1211921313490587649
    寝静まった世界。
    着信を受けた山田の周りだけ色づいている描写だったんですね。
ふぇけ: このイラストさ、
    バヤシコの側にお菓子のゴミを散らかしていないの……
    そういうところに尊さを感じてしまう……
じーく: 確かに細かいな……アレルギーだもんね……
ぎ る: ツイヤバは正史。ツイヤバは正史です。

○12ページ目(あけましておめでとう)
じーく: 3コマ目。開いた扉の奥でにゃあが寝てるじゃん。
    この描写だけで、コマ間の山田の動線がわかるんだよな。
    こういうの本っ当に上手いなぁって思う。
ぎ る: 実際に漫画描く人ならではの視点だなー。
じーく: 次のページの「あけましておめでとう」のところもさ。
    よくある演出ではあるんだけど、
    実際には向き合っていないのに、向かい合わせで描くの。
    効果的ですげぇなぁって思うよね。
ぎ る: あ、萌子来た
ふぇけ: そりゃ「え”!?」ってなるわ。
    左下コマの関根の目よ。


今回はこんな感じでした。
関根萌子あたりは結構踏み込めたと思います。

次回、初詣です。
おねぇとの三つ巴が楽しみ。

-9/12 追記-

(9/12追記)-9/10(木) 関根萌子-

-時、遡りお昼のLINE-
ぎ る: 関根、新解釈を思いついた。夜にdiscord。
ふぇけ: うい。
じーく: あー、今日は無理。

-21:30 discordにて-
ふぇけ: さて、今日はぎるの関根解釈持ち込みなわけだけど、
    先に俺からいいか?
ぎ る: どうぞ。
ふぇけ: 一昨日ぎるが提示した関根萌子像。
    『関根萌子は知らなかった』
    俺はこれに、やっぱり違和感がある。
ぎ る: ふむ。
ふぇけ: 俺は「関根萌子は知っている」だと思うよ。
ぎ る: 根拠は
ふぇけ: 関根に対する、
    『恋愛への理解がある女子中学生』
    というキャライメージからだなぁ。
    関根は山田→市川の感情を把握できている。ここはいい。
    んでふと市川に目をやれば……。
    俺はここで市川→山田も流石に気づくと思うんだ。
    市川も大概わかりやすいぜ。
    てか、男子中学生なんてそんなもんだろ。
ぎ る: 俺たちが神視点で読んでいるからではなく?
ふぇけ: ではなく。
    もう少し掘り下げると……
    それでいて関根の市川認識は『スライム』なんだよ。
    「市川は山田のことが好きなんだろうけれど、
    それを叶えるほどの度胸や意気地や甲斐性が無い」
    あたりが妥当。
    その認識がファミレス冒頭の
    「2人同じクラスだよね」
    に対する、
    「え~~そーだっけ?」
    といった市川の軽い扱いにも繋がってくる。
    ただ、関根はファミレスで、
    市川が市川なりに山田を守ろうとしているのを見ている。
    ここで若干、市川評価が上がったんじゃないかな、と。
    「お、スライムなりに頑張るやん」くらいには。
ぎ る: スライムベスだね。
ふぇけ: そう。スライムベス。
    ......スライムベス?まぁいいや。
    だから、関根からは
    「送ってってよ。『市原』くん」
    だし、
    「うちら友達なんで」
    という言葉が出たと思うんだ。
    実際、関根は市川を友達認定したんだと思うよ。
ぎ る: なるほどねぇ。最後まで続けてくれ。
ふぇけ: 帰り道だな。
    ここは友達となった関根と市川の他愛もない話なんだ。
    「まー頑張ったよイッチも」
    『市川(スライム)なりに頑張ったよ』ってことだな。
    あとこの解釈で広がりが出るのが、
    手を握った後の、
    「そんな速い動きできんだ……」
    ってとこ。
    市川はスライムだから
    「突然に手を握ったら、フリーズするんじゃね」
    くらいに考えて、市川をからかおうとした。
    友達をからかう程度のもんよ。
    そしたら思った以上に俊敏に振り払われたので、
    「そんな速い動きできんだ……」
ぎ る: ふむふむ。
ふぇけ: で、そしたらスライムから
「俺は…好き…かな…山田を……っ」
    という言葉が出てくるわけです。
    関根からしたら、
    「え、お前それを公言出来るくらいの度胸あんの?」
    ですよ。これが無言コマ解釈。
    「だったら両片思いなのは明白なんだから、
    さっさと関係を前に進めろや!」
    という焦れが発生する。
    それが「知ってるーー」の大声解釈。
    で、二人に対して「めちゃくちゃわかりやすいかんな?」のおこ。
ぎ る: 無言コマの解釈は、
    一昨日のふぇけが最初言っていた解釈の発展だね。
    「想像以上に強い言葉が、市川から出てきたから」
    ってやつ。
    えーっと……3ついいですか?
ふぇけ: どうぞ。
ぎ る: まず1つ目。
    これはふぇけ説の改善案なんだけど……
    俺、「焦れ」って感情が理解出来ないんだわ。
    関根は「焦れ」て「叫ぶ」イメージじゃない。
    あくまで関根の叫びは「いや、知っているからね?」
    のわざとらしさ。演技がかったものが主軸だと思っているが……
    そうじゃない場合。
    第二候補は『優しさ』だと思っているんだ。
ふぇけ: 優しさ?
ぎ る: そう。
    関根は普通に
    「いや……知ってるけど……」
    で済ませてもいいんだよ。
    市川から強い言葉が帰ってくるかは別として、
    感情自体は知っているんだもん。
    でもそこで、そう言ったらどうなると思う。
    「いや……知ってるけど……」
    「あ、え……そうなの……?」
    空気、ちょっと重くなるよね。
    だから関根は明るく、
    「知ってるーー!しってるーてるーてるー」
    って市川の言葉を軽く扱うことで、
    市川の精神的負担を減らし、
    空気が重くなることを避けたんだ。
    『友達』だもんな。
    だからこれは関根の、市川に対する優しさなんだよ。
ふぇけ: あー。
わざとらしさを『優しさ』と捉える関根像は、
かなりしっくり来る。
それでいこう。
ぎ る: じゃあ次。2つ目。
8ページ目。関根と市川が一緒に歩くシーン。
    「先輩にはガツンと言った方がいいかもね~」
    関根は市川に、何故これを言った?
    『スライムなりに頑張った』と市川を評しているなら、
    「先輩にガツンと言わなきゃだめじゃない?」
    という要求が出るのはおかしいと思うんだ。
ふぇけ: いや、ここはあくまで『友達の世間話』なんだよ。
ぎ る: なるほど。
「いやー先輩しつこいよねぇ、
    いつかどこかで誰かが先輩に、
    ガツンって言ってやった方がいいと思うんだよ~」
    的な、同意を求める世間話ね。
ふぇけ: そう。
ぎ る: じゃあ最後。
    俺は今のふぇけ論は、成立しないと思っている。
    お前、大事なところの説明を端折ったよな。
    「先輩…なんか誤解しているんだ」
    からの一連の流れ。説明していないよな。
    ここは市川が
    「先輩は誤解している」
    に対して、関根が
    「いや誤解はしてねーだろ」
    「誤解ならこうしてもいいことになるぞ?」
    という会話だ。
    ここ。何が「誤解」なんだ?
    どうして関根は手を握ったんだ?
ふぇけ: ......
ぎ る: ......
ふぇけ: いやまぁ、そうなんだよね。
    そこに対する答えは無いんだ。
    俺のはキャラクタ認識からのアプローチであって、
    コマの整合性は確認しきれていないんだ。
ぎ る: ふむ。
ふぇけ: だから
    「こういう解釈もありじゃない?」
    という提起として捉えてくれ。
ぎ る: わかった。いや、いい内容だったと思う。
    ありがとう。

ぎ る: じゃあ、俺の新しい関根解釈の話をしていいか?
ふぇけ: どうぞ。
ぎ る: まーやっぱりさ、
    起点としては「知ってるー」なわけさ。
    関根は知っていたか?Noだ。
    関根は知らなかったか?今回は、これもNo。
    第三の関根解釈。
    関根は『誤解』していた。
    関根は『誤った形』で『知って』いた。
ふぇけ: 誤解?
ぎ る: そう。
    『山田と市川はもう付き合っている』
    と、関根は誤解していた。
ふぇけ: エビデンスはあるのか?
ぎ る: 弱いけど......ある。
    でもこの解釈は、
    『このシーンで関根、誤解してるじゃん』
    っていう直接的なエビより、
    『そう解釈したほうが、全てのコマの辻褄が合う』
    という方針で組み立てたものだから、
    そっちを重視してくれると嬉しい。
    えっと、関根の誤解の契機だよな。
    6P目。市川のスマホに山田からの着信がある。
    このスマホ、どこに置いてあるよ。
ふぇけ: あぁ、これは気づいている。
    『関根の近くに』市川のスマホがあるんだよな。
ぎ る: そう。関根は見た。
    23:45。山田が市川に
    「あとで電話していい?」
    というLINEを送ったのを。
ふぇけ: 見た。間違いないと思う。
ぎ る: 今、山田って何をしている?
ふぇけ: ......にゃあ宅でお泊り会。
ぎ る: 関根。知ってるよな。
    山田が今、お泊り会やっているのを。
ふぇけ: ......
ぎ る: にゃあ、バヤシコと
「年越しお泊り会をしているはずの山田」が、
    市川に「あとで電話していい?」ってLINE送っているんだぞ?
ふぇけ: ......
ぎ る: しかも文面がすげーカジュアルなの。
    ニュアンスとしては「あとで電話かけるよー?」じゃん。
    まるで、定期的に電話している仲みてーだな。(してる)
    これは十分に『付き合ってる』と誤解しうるだろ。
    ないしは、それに準ずる関係。
    それを受けて、右下コマ。
    関根は「あーー……」と言った。
    そんな捉え方も あり得る。
ふぇけ: ……続けてくれ。
ぎ る: 8ページ目に移ろう。
    さっき俺がふぇけに言及した
    「先輩にはガツンと言ったほうがいーかもね~」
    という台詞。
    「いや、もう先輩にも、あのLINEを見られちゃったしさ」
    「君たちが付き合ってるのは公然の事実なわけよ」
    「誤魔化すんじゃなくて、ガツンと言ったほうがいいかもよ」
    なわけです。
    それに対して市川は「誤解してるんだ」と返す。
    関根からしたら、
    「おいおい、この期に及んでしらばっくれるなよ」
    ですよ。
    これが「ゴ カ イ~~~~?」の顔。
    そしてここからの流れは、
    「あ、そう。付き合っていないんだな?」
    「だったら夜道でクラスメートの女の子と手を繋いでも、
 問題は無いわけですね?」
    「彼女いるんだったら、駄目ですよね?」
    ってやつ。
    すると、市川から問題の発言が出るわけです。
「俺は…好き…かな」
    関根はこの言葉、とある部分に引っかかる。
    それが『俺は』という部分。
    (山田がどう思っているかはわからないけれど)
「俺は…好き…かな」
    と言っているわけです。
    関根視点「………あれ?」ですよ。
    だって「付き合っている」前提で会話、行動をしていたんだもん。
    だから、少しフリーズする。
    でも「あ、あれ?付き合っていないの?」とは言えない。
    関根のキャラ的に。
    「誤解していました」というのは、恥ずかしいから。
    だから、「知ってるーーー!」と大声でおどけてみせた。
    んで「めちゃくちゃわかりやすいかんな?」
    これは、八つ当たりも入ってるんじゃないかな。
    「誤解するからな?ふつー」
    くらいの認識。
    俺の感覚だと、やっぱりここは
    「山田がわかりやすい」
    と読むのが正しい。
    ここはダブルミーニングじゃない。ミスリード。
    市川の「俺は…好き」に対して、
    「いやいや。山田、めっちゃわかりやすいからね?」
    と返すほうが綺麗。
    ……と、まぁ。こんなところ。
ふぇけ: 描写の整合性は取れるね……
ぎ る: まぁ、そこを目指して掘り下げたからな。
ふぇけ: あとは俺の感覚との差をどう埋めるかなんだけど……
    「うちら友達なんで」
    のところでスライムベス認定じゃなく、
    もっと大きく市川を評価している……と考えれば通るか。
    「市川と山田の関係」を「誤解」の描写の整合性が強すぎて、
    解釈としてはそれが正解っぽいな……。
ぎ る: おー。通った。

(9/15追記)-9/10(木) 市川京太郎-

-きっかけ 9/10 LINEにて-
じーく: 突然だけど……
    どうして市川は関根に、
    「俺は…好き…かな……山田を…」
    ってカミングアウトしたんだ?
ぎ る: ……え?
じーく: なんか騙されてる気がしてきた。
    今まで考えてたことが、足元から崩れそう。
    市川、お前なぜそれを言ったんだ……?
ぎ る: あー。……あー。
    俺、関根視点での市川しか考えていないわ。
    ここでの市川の思考、感情は考慮していない。
    ……多分、自分を再確認している……?
じーく: 再確認の意味合いは同意。
     個人的には「俺は…」と言葉に出てしまい、
    その後に続ける言葉が、
    「好き…かな…」しかなかったんだと思う。
    もしこれがアニメなら「俺は…」の後に、
    すごく尺を取ると思うんだ。
ぎ る: ちょっと穿った見方になるんだけど、
    直前、関根に対して 、
    (好きになってしまう!!!)
    なわけよ。だから、
    「違う。俺が好きなのは関根じゃなくて…」
    という、自分に言い聞かせる意味もあるんじゃないかって。
    ……まぁ市川の掘り下げに関しては、
    ふぇけの領域だからそこの解釈待ちで。

-夜 discord ぎるの関根解釈後-
ふぇけ: さて、LINEでもうひとつ話出てたよな。
    「市川はなぜカミングアウトしたのか」
    ここの話。改めて考え直してきたわ。
ぎ る: 待ってました。
ふぇけ: まず……
    このシーンを見たとき、俺には既視感があった。
ぎ る: 既視感?
ふぇけ: そう。
    これね、秋田でのお土産屋と同じ構図なんですよ。
ぎ る: ごめん、ちょっと飲み込めてない。
ふぇけ: まず今回の話。
    市川は関根に対して、最初にこう言うんだ。
    「誤解なんだ」って。
    これ。こういうところが市川なんだよ。
    まず口をついて出るのは否定の言葉なんだ。
    でも本当は、
    「俺は…好き…かな……山田を…」
    なんだよ。

    お土産屋の話を思い出してみ。
    意味合いはちょっと異なるんだけど、
    (山田、犬好きだったな) から、
    おねえに「おそろいにする?(買う?)」と聞かれ、
    「は、するわけ……(買うわけ……)」
     と答える。
     だけど結局は、
    「あ、する!(つか買う)」
    なわけよ。
    構図としてはこれ、同じだろ。

    そんで前回、市川はこれを
    『軽率な行動』と呼んだのさ。
    本来なら唾棄すべき選択だ、と評価したの。
    でも結果、どうだったよ。
    市川が買った犬のストラップは、どうだった。
    山田に大喜びされたし、
    なんなら山田の不安を払拭するアイテムになったよな。
    これによって、
    市川の考え方が少し変わったと思うんだ。
    
    もう少し遡るぞ。
    そもそも、この話の発端。
    Karte.43『僕は山田が嫌い』
    ここで市川、なんて言ってると思う。
    「本当は欲しくてたまらないのに」
    「どうせ手に入らないから」
    「嫌いになる理由が欲しかった」
    この話の最後、その市川がなんて言うよ。
    「嫌だ、なんて言っていない」

    市川はね、そういうやつなんだよ。
    「本当は欲しくてたまらない」けど、
    「どうせ手に入らない」
     だから「欲しい」って言えないの。

    山田に犬のストラップを買ってあげたいけど、
    素直に「買う」と言えないの。

    山田との可能性を感じているけれど、
    「誤解だ」と周りに言ってしまうの。

    その市川が今回、初めて自分から、
    「俺は…好き…かな……山田を…」
    って言ったわけよ。
    僕ヤバはさ、
    やっぱり『市川京太郎』の物語なんだよ。
    市川京太郎が、
    自分の感情と向き合って、
    認めてあげる物語なんだよ。
ぎ る: 京太郎……さん……
ふぇけ: 議題のシーンは、その大きな一歩。
    だから関根と別れたあとの市川は、
    自分の胸に手を当てて
    「声に出して言えた」
    って独白するわけ。
    こう解釈すると、
    一昨日話した「ありがとう……」の意味も変わってくるね。
ぎ る: ……そうね。
    自分の心を認めるきっかけをくれた関根に……か。
    そうなると最後のページ。
    「いつかはー…」
    って空を見上げる市川にも、感慨深いものがあるな。
    こいつ、初めて自主的に上を向いたんじゃないか?
ふぇけ: あー。
    いや、前に一回ある。
    もう読めないんだよな。渋谷最終回なんだけど。
ぎ る: …イルミネーション!
ふぇけ: そう。
ぎ る: あそこを『始まり』とするのもエモいなー。
    しかもあれ、山田にマフラー巻かれたからなんだよな。
    「山田によって、初めて上を向けた」んかー。

今回の通話記録はこんなところです。
9/10以降は、今のところ特に無いです。

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