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雪と桜と、水の流れる音

へッダー画像には山が写ってないけれど、ここへ来る途中にあるJR日野春駅から冠雪した南アルプスと桜の並木を見た。快晴の日にまた直接、南アルプスを見たいと思った。

いくら技術が発達して4K、8K映像といってきれいな映像だといっても、それを演出する音はあっても、そこに本物の景色や音は無い。ましてや目と耳以外を刺激するようなものは。そこには音も無ければ風も日差しも温度もにおいも湿度も埃も、何もない。ただ目で見るだけだ。
駅のホームから見たのは、線路を隔てて、硬い芽の桜の木、その向こうに聳える南アルプス。背中から受ける日差しは暖かかった。ここに立って見る景色は初めてのものだ。

けれどもわたしは、この景色を知っている。

首をすくめる気温。鼻の奥がツンとなる空気。背中を暖める日差し。かじかんだ手。雲ひとつない空。雪の残る路肩。側溝を流れる水の音。立ちはだかる山々。その手前には硬い芽の桜の木が連なっている。

わたしは、何枚も着込んだ上にプロテクターの入ったジャケットを着ている。皮パンの上にオーバーパンツを履いて。ヘルメットの形のついた髪をくしゃくしゃにしたまま深呼吸をして、山を眺めている。ああ、この景色を知っている。

早春の記憶を五感で実感している。
かつてわたしの目に映った越後山脈と同じ色をしていたのだった。


今見るとツーリングの文章を書き直したくなるのは、きっと成長しているからなんでしょう。





もうすぐ桃源郷から戻ってみせます。
いろんなイベント、こころから楽しみましょう。