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【英会話革命】学校ですぐに使えるBing AIのスピーキング活用案

こんにちは、マイクロソフト認定教育イノベーターのGIGA林です。

この記事では、Bing AIを活用した英語のスピーキング活用案を紹介します。
どの中学校でも、AIを使った英語教育が、現実的に始めることができる活用案になっておりますので、ぜひ最後までお読みください。

また、導入を考えている先生をできる限りサポートさせていただきたいと思っています。興味のある方は、GIGA林のX(旧Twitter)までDMでご連絡ください。

https://twitter.com/gigabayashi

Bing AIで作成

1.はじめに

まずは実際にAIを活用したスピーキングの動画をご覧ください。


2.Bing Chatの概要

今回使用したツールはBing Chatです。
Bing ChatはMicrosoftが作ったBing AIの機能の一つで、ChatGPTに代表される生成AIです。

Bing Chatの特徴を簡単に紹介します。

  • 自然な言葉で会話をしながら検索・質問・要求をすることができる。

  • ウェブの検索機能をもっているため、最新の情報やトピックに関する情報ももっている。

  • 文章以外にも画像やコードの生成も可能。

  • 日本語や英語など多くの言語に対応している。

  • 利用規約に年齢制限がない。*未成年の使用には保護者の同意が必要。

  • 個人使用は無料でできる。学校では、セキュリティが強化された有料のEnterprise版で使用できる。

  • テキスト入力だけでなく、音声入出力にも対応している。

学校でスピーキングの練習として活用しようと思ったときに最後の3点が重要になってきます。この3点をクリアできている他のAIツールを私は知りません。
例えば、ChatGPTは、13歳以下の使用が利用規約で 禁止されています。また、AIの使用には、生徒が個人情報を入力して情報が漏洩するリスクがありますし、スピーキングのためだけに学校に有料のAIサービスを導入するのはなかなか難しいです。Bing AIであれば、すでに学校でお使いのサービスの中に含まれている可能性があります。(これについては後述します。)

まとめると、
Bing Chatは
①子どもでも使えて、
②安全に使えて、
③音声でAIとやりとりができる。
この点が大きなメリットになります。

3.スピーキング活用案

3.1.AIにやらせたいことを明確化する

まずは、どのようなスピーキング活動にしたいか具体的な要件を考えてみましょう。

◎中学生が英語の授業で使う。
◯なるべく自然なやりとりにする。
◯様々なトピックに対応できるようにする。
◯英語が苦手な生徒でもやりとりしやすいようにする。
△間違いを訂正してくれる。

以上の要件を満たす動きをAIがするようにプロンプトを考えます。

*プロンプト
AIに出す指示のこと。今回では、チャットに入力する文章という捉えで問題ありません。

3.2.Bing Chatスピーキングの基本設定

スピーキングを始める前にBing Chatの設定を変更しなければいけません。

  1. Microsoft Edgeをインストールし、Microsoftアカウントを作成する。

  2. 言語を英語にする。

  3. マイクボタンを使用し、設定の確認をする。

  4. 会話のスタイルは「厳密に(Precise)」がおすすめ。

1.Microsoft Edgeをインストールし、Microsoftアカウントを作成する。

Bing Chatは基本的にはMicrosoft Edgeでしか使えません。(スマホの場合はBingアプリでも使用可能)
準備ができたら検索欄のBingのアイコンをクリックして、Bing Chatの画面を表示させます。

2.言語を英語にする。

チャットの言語を英語に設定します。日本語の設定のままだと、AIが日本語で応答するので、英会話になりません。
設定は以下の手順で行います。

(1)右端にある設定のボタンを表示させる。


(2)ハンバーガーメニューから「設定」→「言語」→「English」を選択
(3)英語の設定が完了すると、画面の文字が英語になります。

3.マイクボタンを使用し、設定の確認をする。

マイクボタンを押して音声入力をします。音声入力をすると音声でAIが返答をしてくれ、英会話になります。
お使いの環境によってはマイクの許可などを求められるかもしれません。

マイクボタンを押して音声入力をする。

4.会話のスタイルは「厳密に(Precise)」がおすすめ。

Bing Chatでは、会話のスタイルを三つのモードから選択できます。今回の実践では、「厳密に(Precise)」がおすすめです。私が試したところ、「厳密に」が一番AIの回答が安定していました。

会話のスタイルは「厳密に(Precise)」がおすすめ。

3.3.活用案①「初めてのBing Chat英会話」

最初の活用案は、生徒が初めてBing Chatで英会話をする授業を想定して考えてみましょう。

Can you be my English teacher?
Ask me 3 questions about following topic.
Use super-simple and super-easy English.
Show me examples to answer.
Keep asking after my response. 
<Example>
Q1:
A1:

以下のプロンプトをコピーしてチャット欄に貼り付けましょう。

このプロンプトで行ったデモは下の動画をご覧ください。

3.4.活用案②「夏休みの思い出を語ろう」

次の活用案は、もっと具体的なトピックを考えてみましょう。
夏休みの思い出を話し合う活動をされたことがある先生は多いのではないでしょうか。
今回は、<Topic>に"My summer vacation."と具体的な指示をだしてみましょう。

夏休みの思い出プロンプト

Can you be my English teacher?
Ask me 3 questions about following topic.
Use super-simple and super-easy English.
Show me examples to answer.
Keep asking after my response. 
<Topic>
My summer vacation.
<Example>
Q1:
A1:

3.5.活用案③「全国学力テ スピーキングテスト対策」

次の活用案は、トピックの難易度を上げたいと思います。

トピックは、全国学力テストのレジ袋問題です。
全国学力テストの英語のスピーキングの問題がとても難しかったと全国的なニュースになりました。今後、あのテストと同等の難易度の問題に取り組めるよう生徒たちに力をつけさせたいとお考えの先生は多いと思います。今回はそんな方への具体的な活用案になります。

実際に使われた問題のスクリプトをそのままトピックに入力してみましょう。図がないので不自然なところはありますが、AIは賢いので文脈を理解して質問をしてくれます。

全国学力テスト対策プロンプト

Can you be my English teacher?
Ask me 3 questions about following topic.
Use super-simple and super-easy English.
Show me examples to answer.
Keep asking after my response. 
<Topic>
Do you buy plastic bags at the store? 
Or, do you use eco bags?
Look at this picture.
 There are many plastic bags in the sea. 
It is a serious problem today. 
Now, look at this.  
I was really surprised to see this because over 25 % of people in Japan buy plastic bags at stores. 
In New Zealand, stores do not sell plastic bags and we take eco bags.
Some people may say plastic bags are becoming more ecofriendly, but I recommend stores in Japan should stop selling plastic bags.
What do you think? 
<Example>
Q1:
A1:

スクリプトはhttps://www.nier.go.jp/23chousa/23chousa.htmから引用。

3.6.活用案④「汎用プロンプト」

これまでの実践から汎用的な使い方を考えてみましょう。

プロンプトの内容を考えるとアレンジすることができます。

プロンプト
Can you be my English teacher?
 「英語の先生になってください。」
  →AIが英語の先生として動いてくれるようになります。
Ask me 3 questions about following topic.
 「下のトピックについて、三つ質問をしてください。」
  →三つを指定しないと、質問が一つだけになるなどAIの回答にばらつきがでます。
Use super-simple and super-easy English.
 「超シンプルで超簡単な英語を使ってください。」
  →AIに中学生でも分かるような英語を使わせる。
Show me examples to answer.
 「回答のための例を示してください。」
  →AIが例を示してくれると会話が続きやすくなります。
Keep asking after my response.
 「私の回答のあと、続けて質問をしてください。」
  →これがないと質問に答えて会話が終了してしまうことがある。
<Topic>
 →トピックを指定することにより、どんなジャンルの会話でもすることができます。
<Example>
Q1:
A1:
  →例の示し方をAIに伝えることで、例を分かりやすく示してくれるAIテクニックです。

汎用プロンプト 基本(3質問、解答例あり)

Can you be my English teacher?
Ask me 3 questions about following topic.
Use super-simple and super-easy English.
Show me examples to answer.
Keep asking after my response. 
<Topic>

<Example>
Q1:
A1:

汎用プロンプト 上級者向け(3質問、解答例なし)

Can you be my English teacher?
Ask me 3 questions about following topic.
Use super-simple and super-easy English.
Keep asking after my response. 
<Topic>

汎用プロンプト 回答訂正(3質問、解答例あり)*AIがたまに訂正を忘れるときがありました。

Can you be my English teacher?
Ask me 3 questions about following topic.
Use super-simple and super-easy English.
Show me examples to answer.
If I make mistakes, correct them.
Keep asking after my response. 
<Topic>

<Example>
Q1:
A1:

このようにAIに出す指示を変えることによって、AIの回答を変えることができ、授業の目的や生徒の状況によってアレンジすることができます。
これ以外にも様々なアレンジ方法があると思いますので、よいプロンプトがあれば、ぜひコメント欄で教えてください。

4.AI活用の懸念事項へのケア

ここまでは、AIの具体的な活用案について述べてきましたが、これからは実際に授業で使う前にしなければいけない準備について考えましょう。

ニュースでは毎日AIに関することが報道され、その有用性が紹介される一方で、同じくらい懸念点も指摘されています。
特に発達過程にある子どもたちの利用となると、私達教職員はとても慎重に進めていく必要があります。

具体的に重要なポイントを挙げてみましょう。

  • セキュリティ、個人情報漏洩の問題

  • 年齢制限の問題

  • AIに対する理解に関する問題

  • 料金の問題

4.1. セキュリティ、個人情報漏洩の問題

AIはその技術的特徴から、入力した回答を収集して学習をしています。個人情報を入力すると、その情報が学習されて、他の人の回答に現れる可能性があります。
今回の実践では、自分の名前や好きなことを答えることがあるので、セキュリティは学校で使う場合特に注意をしなければいけません。

Bing Chatにはセキュリティを強化した、Bing Chat Enterpriseというサービスがあります。

https://educationblog.microsoft.com/en-us/2023/08/announcing-bing-chat-enterprise-for-faculty-and-search-progress  から引用

Bing Chat Enterpriseでは、会社が学校の組織単位で使用することができます。入力された情報は、組織内でしかか扱われず、組織外に出たり、AIの学習に使用されたりすることはありません。
詳しくは以下のリンク(英語)をご覧ください。

https://educationblog.microsoft.com/en-us/2023/08/announcing-bing-chat-enterprise-for-faculty-and-search-progress

個人情報をAIが学習しない設定は個別にすることはできますが、Bing Chat Enterpriseを使用するとより安心して学校で活用できます。

4.2. 年齢制限の問題

AIサービスには、年齢制限を設けているものが多いです。
例えば、ChatGPTでは13歳以上でないと使用ができません。さらに、18歳以下は保護者の同意が必要となります。中学校で使うとなると、中学校1年生は12歳、13歳が混合しているため授業で使うことは難しいです。

Bing Chatは、保護者の同意があれば未成年でも年齢制限なく使用できます。この点はBing Chatの大きなメリットです。

4.3. AIに対する理解に関する問題

AIは便利なものである反面、正しくない情報を生成してしまうことがあり、懸念の声をよくききます。
子どもたちが間違った情報に触れると間違って学習をしてしまう可能性があるので注意が必要です。

学校でAIの活用をするためのガイドラインを文部科学省が出しています。

https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf


https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf  から引用

このガイドラインには、AIに関する基本的な知識から学校での活用例などが載っています。学校での導入を考えている方はまずこちらをお読みください。

補足になりますが、今回の実践のような英会話の実践は、ガイドラインで「活用が考えられる例」として紹介されています

https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf  から引用

4.4. 料金の問題

Bing Chatは個人の使用であれば、無料で使うことができます。

学校で生徒たちに使用させるとなるとBing Chat Enterpriseを使用することが一般的です。Bing Chat Enterpriseは本来有料のサービスですが、学校の契約によっては追加料金なしで使用することができます。

Microsoft環境でTeamsをお使いの学校では、アカウントの種類が三つあります。A1だとBing Chat Enterpriseは利用することができませんが、A3とA5のライセンスであれば追加料金なしで使用することができます。アカウントの種類については各校・自治体の担当者にお問い合わせください。

4.5. 導入までの準備まとめ

結論として、授業に導入する準備として、

  1. 先生がBing Chatを使って授業での有効な活用法を考え、

  2. 生成AIガイドラインを読み、

  3. 学校長の許可を得て、

  4. 保護者の同意を取り、

  5. 生徒にAIに対する基本的な教育をする。

ことが必要になります。

やらなければならないことは多いですが、新しいテクノロジーを取りれるために勉強をしなければいけないのは当たり前です。
自分はAIという素晴らしい技術を勉強するたびに、新たな発見があり、いつもワクワクしています。きっと子どもたちもAIを活用した学びにはワクワクしてくれると思います。そして、この活動で身につけた英語力・AI活用力はこれからの社会を生きる子どもたちにとって大きな力になるでしょう。

自分は、導入を考えている先生をできる限りサポートさせていただきだいと思っています。興味のある方はGIGA林のX(旧Twitter)までDMでご連絡ください。

5.他製品との比較から考えるBing Chatのメリット

最後に他製品との比較を少し考えてみましょう。

5.1. 主な対話型AIとの比較

生成AIガイドラインにあるこの図をご覧ください。

https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf  から引用

まず、年齢制限を見てもBing Chatは保護者の同意は必要ですが、中学生でも使用することはできません。
ChatGPTは実際中学校1年生の授業では使えませんし、GoogleのBardは大学生にならないと使用ができません。

また、料金面は無料(個人使用)、デフォルトで機械学習されない設定になっているなど、比較するとBing Chatが使いやすいことがわかります。

5.2. 他の英会話AIとの比較

AIを活用した英会話のサービスは多くあり、今後も増えていくと予想されます。

私が考えるBing Chatのメリットは、以下の様です。

  1. 無料で使える(個人や、A3・A5の学校)

  2. アレンジが簡単

  3. 検索機能があり、最新の情報でも扱うことができる

  4. AI教育の良い方法

1.と2.については前述したので割愛します。

3.検索機能については、Bingがもともとマイクロソフトの検索エンジンなので、AIが要求に対してインターネットから情報を集めて回答をしてくれます。よって、ほとんど全てのトピックに対して英会話をすることができます。
英語で話すときに、自分の興味のあるトピックであれば流暢に話せることがあると思います。生徒が英会話を練習するときに、好きなゲームや芸能人についてだから話せる、話しているからスキルが向上する。ということが考えられます。

4.AI教育の良い方法については、文部科学省のガイドラインで「活用が考えらる例」と示されていてように、現在の学校現場でAIの活用ができるとても現実的な案です。どんな学校でも導入がしやすいと思います。
そして、これからの時代AIの活用がますます進み、生徒たちにもAIを活用する力をつけさせることが求められています。Bing Chatのような汎用型の対話型AIを使うことによって、生徒たちのAIに関するスキルは高まっていきます。自分のレベルによってプロンプトをアレンジできるようになると、AIを活用するスキルは高まるでしょう。
一方、英会話専門のAIだと英語力伸びても、AIを活用する力は伸びません。アレンジのしやすさが大きな違いになります。

一方で、英会話専門のAIの方が優れている点もあると思います。
例えば、専門のAIなので安定していることが挙げられます。Bing Chatは必ずしも一定の反応がでるわけではありません。「訂正して」とお願いしても訂正をしてくれないことがありました。その点、専門のAIであれば、やりたいことは安定してやれるはずです。
英会話専門のAIサービスと一言で言っても、様々なものがあると思います。もしよいサービスがありましたら、コメント欄で教えてください。

6.おわりに

活用案の紹介は以上になります。
導入をお考えの方は、できる限りサポートさせていただきたいと思っております。興味のある方はGIGA林のX(旧Twitter)までDMでご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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