見出し画像

格好悪い家族ー『ファミリー・ツリー DESCENDANTS』



妻が
事故で昏睡状態になった


仕事ばかりで
家庭を省みることのなかった夫は
娘たちをどう扱っていいのか判らない


次女は
ショックからか自暴自棄になり


長女は
母に会おうとしない


おまけに
代々受け継いできた土地を
売却する問題も抱えていた・・・





母親を罵る長女が言った
ひと言から

妻の浮気を知った夫は
友人夫妻を問い詰めるが


わかったのは相手の名前だけ
さらに追い打ちをかけるように
妻が
離婚を決意していたことを知る



☆☆☆☆★


ジョージ・クルーニーという人に
勝手にどこか
“やさ男”的なイメージを持っていて
あまり出演作を観なかったけど

「マイレージ・マイライフ」を観て
見方が変わって



予告編の
情けないパパぶりを観て
つい期待しちゃったら

・・・期待以上に
情けなくって
いい感じでした。



★★★★☆



いつだって 用意周到に準備をして
その日を迎えられるわけじゃない

突然に断ち切られる 大切な人との時間



目を覚ましたら
ああ言おう
何をしようと
思い描き



本当に 大切な存在だったのだ
と気づいても
妻の意識が 回復することはなく



医者は
見込みがないと
短く告げる





代々受け継いできた広大な土地は
ハワイ最後の自然

売れば億単位の金が入るだろう



周りからは
金のなる木と思われ いつも揶揄される

義父からは
金持ちのくせに ケチだからいけない
娘に 金を与えていたら
事故は起こらなかった

・・・とまで言われる始末





それでも
浮気相手を探し出し

生命維持装置を外した妻に
会ってやって欲しいと
告げる



☆☆☆☆★

共同戦線というのかな
浮気相手を探し出す過程で
仲良くなる父娘というのが
らしいというか



・・・高校生の娘とそのパパが
ママの恋人探しにいったりしないでしょー

少なくとも
日本じゃ それないでしょ。





ほったらかしだった娘たちと向き合い
もう一度
“家族”をやろうと
“家族”になろうとするパパは

不恰好だけど
なぜか
いとおしくさえ見えるから不思議で。

初めて観た時は
突然、家族と別れることになってしまった
それぞれの心の中の
折り合いの付けかたというか

そんなところを観ていたけど




見れば観るほど

残された家族がそれぞれ
不器用ながらも
家族に「なろう」とする姿が観えて




マットがつぶやく

『家族は群島と同じだ
 全体で一つだが
 個々は独立し
 少しずつ離れていく』





そう
結婚したから
夫婦じゃない

子どもができたから
親じゃない

ママが赤ちゃん産んだから
お姉ちゃんでもない




もう目を覚ますことのない妻のベッドに
掛けられていたハワイアンキルト




夫も
妻も
子どもも
パパも
ママも
お姉ちゃんも
妹も




ほんとうに、愛してるの。
お互いを必要としてるの。

ただ、どう言葉にしていいか
どう表現していいのか

わからないだけなの。




目を覚ますことのない
妻を
母を
前にして

それを知っていく
父娘の姿が

格好悪くて可愛らしすぎる
そんな映画。



ひとつ気になるのは
ママの病室に姿を現したのが
恋人じゃなかったこと

そして
彼女がぶちまけた 不安と想い





きっと酷い言葉でも
何か
言い返してくれるならよかったろうに


目の前の人は
言い訳もしない
罵りもしない


微笑みもしないが
睨みつけもしないのだ




何があろうと
遺る者は生きていくしかないと
震災を通して改めて思ったけど

人が
残すつもりもなく
残していった痛みで

遺された者が
傷つけられるのが
一番痛い
と感じたから。





彼女も
彼女の大切な人たちと一緒に
ハワイアンキルトにくるまれたら
いいんだけどな。

そこまで思うのは
ハッピーエンドに慣れ過ぎかな。


(画像はwebからお借りしました)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?