本音を隠した勇気ー「幸せへのキセキ」We Bought a Zoo
連れ合いに先立たれた男
というのはしばしば
可笑しな言動をみせるもの
たとえば
私の母が突然死んだ後。
父は夕飯のテーブルでポツリと
「死にたくなったな〜」
と呟いた
私は（頼む！悪いけど）
「…もう少し後にして。」
と返したよ
耳の悪い父には
聞こえなかっただろうけどね
ま、とかく
連れ合いに先立たれた男は
同じ女よりも
弱い。驚くほど弱い。
2011年のアメリカ映画
「幸せへのキセキ」We Bought a Zoo
のベンジャミンもそう。
🎬 あらすじ
他人の人生ばかり取材してきた男
妻に先立たれ、子どもの扱いに困り
仕事は上手くいかず
町中に、妻との思い出が見えてしまう
彼が心機一転、買い求めた家は
まさかの動物園つき
シングルファーザーのコラムニストが動物園のオーナーに？
忘れ去られていた動物園を、再び開園させるまでのお話
🎬 何を見ても思い出す
街には、妻との思い出だらけ
季節ごとに咲く花
一緒に歩いた道
入った店
彼女が好きだったペストリー
出逢ったカフェ。。。
スーパーに並ぶ調味料すら
彼には
妻を思い出すスイッチにしかならない
それは、14歳になる息子ディランも同じ
ベンジャミンが
妻の死を受け入れ切れないように
ディランもママの死を受け止めきれず
そんな自分を持て余してる
素行の悪さから学校は退学処分
そして突然、ママの代わりをつとめ始めたパパと
事あるごとにぶつかる
おまけにパパは
何を思ったのか田舎の動物園を買って
オーナーに？？？
パパは
息子を見るたび
妻の面影を見つけ
息子は、パパを見るたび
ママを思い出す
🎬 何もしてやれない
ベンジャミンは
動物園のオーナーという慣れない立場や
色々な“新しい仕事”に追われ、しばらく忘れていられたものの
ふと、思い出してしまう
愛する子どもたちを見ると
どうしたって妻を思い出してしまう
二人に対して
申し訳ない気持ちが出てきてしまう
何より、自分自身が
半年前の妻の死を
受け止めきれていない
仕事仲間にふと打ち明けた
正直な気持ち
それを立ち聞きした息子は
パパに怒りをぶつける
『パパは僕がママに似ているから嫌いなんだ』
二人は大喧嘩。
『何かしろ、自分を憐れんでいないで
妹とパパを助けろ』
『僕の方こそ助けてよ！』
ディランは抑えてた気持ちを吐露するけど
それもパパを責めることになると
分かってる
だからますます抑えてしまう
人を好きになるのに
理由は要らないように
亡くなった人を
忘れられないと苦しむ気持ちにも
理由なんかない
ただ、ただ苦しい。
あるのは、それだけで。
人が、人と
お別れするのには
その人だけに必要な時間がある
その長さは、それぞれで。
🎬 言われたいことを言おう
父子の仲直りは
安楽死させるべきか迷っている
老齢のトラ・スパーが眠る檻の前で
ディランは
自分の気持ちを話す
うまくいっていないガールフレンドとのことを
好きだったのに
恥ずかしい
気持ちを打ち明けなくても
恥ずかしい
…と打ち明ける
パパが提案します
『お互いに 言われたいことを言おう』
・・・見事に違う、お互いの
“言われたいこと”その気持ち。
その時、パパが言う「20秒の勇気」
『20秒だけ、恥をかく勇気を持てばいい
そうすれば素晴らしいことが起きる』
・・・パパは知ってか知らずか
身をもって体現してる
一見、突拍子もない
田舎暮らしと動物園のオーナー
そして子どもたちに語る、ママとの出会いでもね
20秒の勇気、とは
迷いや弱さ、怖れを
ふっ切るためでもあるのね
カウントはしても計算はなくて
ただ、こうしたい
という本音が隠れている
もうどっち転んでもいいわ
行くわ
やるわ
するわ！という
本音を隠した勇気で進む時
怖れなんてもんには
なす術もないのです
🎬 Why not? いけないか？
ベンジャミンは
飼育員ケリーから
素人のあなたが
なぜ動物園を買ったの？と聞かれ、答える
『いけないか？ Why not?』
それは、妻との出会いの言葉でもある
ラストシーンが素晴らしいの♬
昔、ママと出逢った時に
パパが振り絞った勇気をね
こんな風に、親の“お話”を
聞かされた子どもは
少なくともグレないと思うんだけど、如何かしら。
大切な人を亡くすこと
それが、ある感情に
蓋をしてしまう時がある
本当は、何もしてやれないなんてことない
ただ、聞いてあげるだけでいいんだ
そのどうにもできない気持ちをね
コメディタッチだけど
結構深い「幸せへのキセキ」
予告編をいい意味で裏切ります
（画像はお借りしました）
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