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校内研究を綴じる意味

 今年度の校内研究の1年の足跡を1冊の冊子にして綴じることは、人によっては選ばない選択肢だと思います。研究主任を経験された方が、「紙で綴じる意味がわからん。意味ないし誰も読まないし。」と話されていたのを聞いたこともあります。研究発表を行う場合は、参加者に配るように綴じることもあると思いますが、先日参加した研究発表会では、指導案も研究冊子もすべてQRコードで読み取る形にしていて、令和において必ずしもしないといけないわけではないようです。それを知っていてもなお、原本を用意し、、ページ番号を付けて、校務支援員の先生にお願いして印刷してもらい、部会の先生に頭を下げて時間を取ってもらって丁合をして、などという多くの作業をしたのかというと、その意味があると考えているからです。

 1つ目は、今年度の取組を言葉にして見える化することで、自分たちの時間をかけた取組や努力した実践を再認識し、自分や同僚の先生、自分の働く学校にプラスの価値を感じてもらいたい、ひいては校内研究の価値を高めていきたいと考えています。1冊の形となった、そしてそれができるために自分も関わっていたとなれば、無下に捨てたりはできないと思います。その捨てないという行為が、価値を高めるために、まずは大事です。データであれば、捨てることはありませんが、まず手に取ることすらされない恐れがあります。次年度の校内研究に対する姿勢につなげるためにも、無関心になってもらっては困るのです。

 2つ目は、校内研究をよかったものとして認識してもらった状態で、今年度の活動を終えるためです。ピーク・エンドの法則にもあるように、取組の最後を何となくフェードアウトして終えてしまうと、今年度の校内研究自体もそのように捉えられてしまいかねません。反対に、最後まで精一杯誠意と熱意を込めて残そうとするその動きが、来年度の新たな一歩にもつながっていきます。私が研究主任の立場でなくて、そのように動いてもらったら、自分も動いていようかな、頼まれたことは頑張ってみるかと感じやすいのではないかと思うのです。この冊子ができるまでに、同僚の先生の力が関わっているのは誰でも分かります。それが、きれいにパッケージされていたらなんとなく素敵な集団に所属していると感じてもらえるのではないかとも思います。

 3つ目は、その手に取りやすさからです。研究冊子という共通言語で、今年度の価値を高めるだけではなく、この1冊があれば、今年度のことが分かるものにしています。例年であれば、これでも十分だと思うのですが、今年度は次年度に向けてもう少し趣向を凝らしたいと考えています。冊子の中には、公開授業の事後研究会の最後に、学年で話し合う時間として設定した「研究学年会」で書いたプリントを綴じました。最後の公開授業の後に、来年度への引き継ぎとして、1年間見てきた子ども達の成果と課題を書き残してもらっています。これをそのままにしていては、新年度のバタバタで、次の学年の先生に見てもらえないかもしれません。来年度の最初の校内研究会の時に持って来てもらって、一緒に確認する時間を取りたいと考えています。来年度は今年度の成果と課題の上に進んでいくことが多いので、来年度改善を加えて提案する取組についても、比べながら聞いてもらうことで、より理解しやすくなると思います。新着任の先生の分も作っているので、今年度の熱も次年度に引き継ぐことができれば、こうやって時間をかけて綴じた意味が出てくるのではないかと考えています。

 この1冊を作るまでに、先生方に「まとめ」として、1年の取組を時間をかけてまとめてもらったり、時間を割いて準備をしてもらったことはありません。4月からこんなふうにしようとある程度イメージをもって進めていたので、他の先生方にプラスの仕事をお願いしたことはないと思います。私の仕事は増えますが、それも来年度への種まきです。綴じる意味がないと感じるのは、そこに意味を見出せていないから、そして意味があるものになるように働きかけていないからではないかとも思います。

 来年度の校内研究がどのようなものになるのか分かりませんが、この冊子を作ることで、前向きに捉えることができました。どんな1年になるのか今からワクワクしています。

 

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