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ボクノミコト。#0

【あらすじ】

 人の命が尽きると腐敗するでも、骨になるでもなく、命呼執みことと呼ばれる本になる世界──。

 主人公の男子高校生、維久いく燈華とうかという男の子と、燈華の双子の妹、煌華おうかと共に児童養護施設で育った。
しかし、燈華は中学の時に引き取り手が見つかり、施設を退所した。
ある春の終わり、3人で飼っていた犬が亡くなったのをきっかけに施設に残った維久と煌華は、燈華に会いに行くことを決心する。

『家族愛、恋愛、友愛……』

主人公達が様々な愛や幸せを知っていく切なく儚い物語。

#プロローグ『花浜匙(スターチス)』


「少し、おさらいをしようか」

「人間は命が尽きた時、一冊の本……命呼執みこととなる」

「僕たち命呼執守みこともりは、命祀めいしのほうにて保棺ほかんされている命呼執を管理することが主な仕事なんだ」

「他にも、彼らの人生は花として開花し僕たちはその花で栞を作る。そうすることで彼らの物語と残された者たちを繋ぐ導となる」

「まぁ要するに、栞は命呼執を読むための鍵ってことさ」

「例えば、この命呼執に咲いている『紫苑』。この花を摘んで作った栞を命呼執に挟むと表紙に花の名前が、扉と呼ばれる部分に花言葉が浮かぶんだ。紫苑の花言葉は『君を忘れない。遠くにある人を思う』だね」

 そう言いながら彼は、花を摘み取り栞を作る。
 その光景は、あの時と何一つ変わらなかった。




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