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『論語と算盤』備忘録

渋沢栄一という原点

「近代日本の設計者の一人」に数えられる偉人に外ならない。
もともと、資本主義や実業とは自分が金持ちになりたいとか、利益を増やしたいという欲望をエンジンとして前に進んでいく面がある。
だからこそ栄一は、資本主義や実業には、暴走に歯止めをかける枠組みが必要だ、と考えていた。

その手段が『論語』だったのだ。
論語とは、「人はどう生きるべきか」「どのように振る舞うのが人として格好良いか」を学ぼうとする時、その基本的な教科書になっていた。

処世と信条

「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し」
と論語にある。これは、指導的立場にある人物は、広い視野と強い意思力を持たなければならない。
なぜなら責任が重く、道も遠いからである。という事である。

「自分が立とうと思ったらまず人を立たせてやる。自分が手に入れたいと思ったら、まず人に得させてやる。」

「自分に打ち克って、社会秩序に従う」

論語には、何度も「身の程を知れ」と説かれている。

「人にはどうしようもない逆境」に対処する場合は、腰を据えてくるべき運命を待ちながら、コツコツと挫けず勉強するのが良いのだ。

渋沢栄一の主義は「何事も誠実さを基準とする

名声とは、常に困難で行き詰まった日々の苦闘の中から生まれてくる。失敗とは、得意になっている時期にその原因が生まれる
世の中で成功者と言われる人々は必ず、
「あの困難をよくやり遂げた」「あの苦痛をよくやり抜いた」というような経験がある。

立志と学問

「千里の道も一歩から」

たとえ自分は、「今よりもっと大きなことをする人間だ」と思っていても、その大きなことは微々たるものを集積したもの。どんな場合も、些細なことを軽蔑することなく、勤勉に、忠実に、誠意を込めて完全にやり遂げようとするべきだ。

志を立てることは、人生という建築の骨組みであり、小さな志はその飾りなのだ。だから最初にそれらの組み合わせをしっかり考えてかからないと、後日せっかくの建築が途中で壊れるようなことにもなりかねない。
志を立てる要は、よく己を知り、身の程を考え、それに応じて相応しい方針を決定する以外ないのである。

常識と習慣

常識とは、何かをする時に極端に走らず、頑固でもなく、善悪を見分け、プラス面とマイナス面に敏感で、言葉や行動がすべて中庸にかなうものである。

習慣とは、人の普段の振る舞いが積み重なって、身に染みついたものだ。

人生は努力である。
勉強し続けることを希望とすると同時に、生活の中から学ぶ心がけを失わないよう心掛けてほしい。

人格と修養

現代において自分を磨くこととは、現実の中での努力と勤勉によって、知恵や道徳を完璧にしていくことなのだ。つまり、精神面も鍛錬に力を入れつつ、知識や見識を磨きあげていくわけだ。
しかもそれは自分一人のためばかりではなく、国家に貢献するものではなくてはならない。

武士の方針
「仁」ー物事を健やかに育む
「義」ーみんなのためを考える
「孝」ー親に尽くす
「弟」ー目上に尽くす
「忠」ー良心的である
「信」ー信頼を得る

成敗と運命

「仕事とは、地道に努力しておけば精通していくものだが、気を緩めると荒れてしまう」

人は誠実にひたすら努力し、自分の運命を開いていくのが良い。もしそれで失敗したら、「自分の智力が及ばなかったため」と諦めることだ。
逆に成功したら「知恵がうまく活かせた」と思えばよい。たとえ失敗しても勉強を続けていけば、いつかはまた、幸運に恵まれる時が来る。

人生の道筋はさまざまで、時には善人が悪人に負けてしまったようにも見えることがある。
しかし長い目で見れば、善悪の差ははっきり結果になってあらわれてくるものだ。
だから成功や失敗のよしあしを議論するより、まず誠実に努力することだ。

成功や失敗といった価値観から抜け出して、超然と自立し、正しい行為の道筋に沿って行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができる。

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