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円安の背景

円安とは

11月22日1ドル145円突破

円安は、輸入品は損輸出品は得。というイメージである。

7年前はあえて円安政策を取っていた。7年前は、日本の製造業が好調であり、海外からの需要が高い為、輸出をすれば儲かっていたからだ。

しかし、今はどうだろうか?
現在の、日本の製造業・輸出業は昔ほど好調ではない。海外からの需要は年々減少してきている。
また、生産拠点も海外に移転している。

つまり、日本で物を作り、海外に売っていたかつての時代ではない。
なので輸出によるメリットはあまりない。
その中で、輸入品が高くなる=生活に響く。という事である。

アメリカ産やオーストラリア産の食材をスーパーで買う。輸入のコストが上がっている為、食材の値段も上がる。つまり、生活に響く訳である。

給料が上がっていない日本
輸入品の物価がどんどん上がっている現状はピンチである。

そして、この円安は加速すると言われている。
では、なぜこの円安が起きたのか?


なぜ円安が起きたのか?

ポイントは2つある。
ポイント①アメリカが金利を引き上げたからだ。
アメリカが金利を引き上げた背景は、インフレが起きているからだ。

インフレーションとは、物価が上昇すること
デフレーションとは、物価が減少すること

基本的に、金利は低い方が景気は刺激される。
理由は、資金調達しやすい為、企業は運転資金を借りやすく、個人も住宅ローンを組みやすくなるからだ。
逆に金利が高いイメージは、ウシジマくんだ。10日で5割の利子では誰もお金を借りたがらない、つまり景気は悪化する。

日本は不況が長かったから金利を下げ、お金を借りやすくし、経済を刺激していた。

これは海外でも同じだ。アメリカですら数年間ゼロ金利政策が続いていた。

しかし今アメリカは、金利を上げ始めた。
なぜか?
物価が上がり始めたからだ。

■物価が上がり始めた要因
コロナにより、経済がストップしていたが、最近、海外では、マスクを外して経済活動を再開した。これにより、物の需要が増した。しかし、物流はまだ復活していない。例として、半導体不足や人手不足が課題としてある。
これにより、供給が少ないが需要が増した為、物価が上昇した。

そして、急激なインフレが加速した。
基本的に緩やかなインフレ=好景気と言われている。
しかし、急激なインフレはそうではない。

つまり、急激なインフレを抑える為に、アメリカは金利を引き上げたのだ。
金利引き上げた理由は、経済をクールダウンする為なのである

ポイント②アメリカが金利を上げたら、諸外国も金利を上げていく事が望まれる。

国家間で金利差があった場合
金利が高い国の通貨を買う為、人もお金も金利が高い方に流れる。
その為、諸外国も金利を上げるのがセオリーである。

アメリカが金利を上げるに伴い、日本は金利を上げるのか、注目されていた。

しかし、日銀の対応は、金利を上げない方針である。
まだ、金融緩和を続ける政策をとった。その政策は、連続指値買いオペである。

連続指値買いオペ=指定した利回りで金融機関から国債を買い入れる事

日銀は、連続指値買いオペにより2兆円を超える国債を買い集めた。
この政策の目的は、金利を上げないためである。

アメリカは金利を上げる。日本は、金利を上げない。
これにより、金利に差が開く。
なので、多くの人が円を売ってドルを買った。

その為、1ドル145円の円安となった訳である。

アメリカの状況と日銀の選択が、円安という現象を生んだのだ。


通貨の価値=国力

通貨の価値は、国の力とかなり連動している。
円が安いということは、日本の価値が低く見積もられている。

日本の円安は、ドルと比較して低いというだけではない。

実は、ロシアの通貨ルーブルに対しても円安になっている。

ロシアは、経済制裁を受け、一時期経済は大暴落した。
今は、回復してきたが、それでもロシア貨幣ルーブルの価値は下がった。
しかし、日本の円安はルーブル以下なのである。

では日本よりも通貨の価値が低いところはどこか。
トルコである。

トルコの通貨、トルコリラの価値は、1年で半分になった。
理由は、物価が上昇しているにも関わらず、金利を下げたからだ。

トルコは、通貨の価値が下がる前、ハイパーインフレであった。
インフレが加速している状況のセオリーは、金利を上げること。
しかし、トルコはその逆に金利を下げたのである。その為、さらにインフレが加速した。

これにより、トルコ国民が持っているトルコリラでは物が買えなくなった。
10年間で、トルコリラの価値は10分の1になってしまったのである。

そして今、トルコは貧困に喘いでいるのだ。


歴史

今日本は、金融緩和をやめない、金利を下げる方針である。
それとは逆にアメリカは、年々金利を上げる方針である。

では、なぜこのような状況になったのか?
日本は、1990年バブルが崩壊した。それに伴い、物価が下がり始めた。
いわゆるデフレである。これにより日本は、物価が下がる→企業は儲からない→給料が下がる→物が売れない→物価が下がるというデフレスパイラルに陥ってしまった。

そして、2010年代、日本はIT産業で米中に圧倒的に遅れをとってしまう。
2010年代、アメリカや中国産のスマートフォンが普及し始めた、産業イノベーションが世界で起こっている時に、日本は参入できなかった。
要するに、日本は産業のイノベーションを起こせなかったのである。
これにより、さらに不景気に陥り、デフレ問題が深刻化していく。

このデフレ問題を解決する為に、行動したのが日銀の黒田総裁である。

2013年から2年で、黒田総裁は物価上昇2%を目標とした。
そこで行った施策が、国債の大量買入れやマイナス金利政策である。
これは、黒田バズーカと言われ、デフレ脱却を目指し、大胆な金融緩和策をとったのである。しかし、物価上昇2%は達成できず、デフレ脱却は進まなかった。

2010年代、日本だけでなく、海外でもデフレ脱却を目指し、アメリカではゼロ金利政策等をとっていた為、為替の面で問題はなかった。
しかし、2020年代コロナが明けて、アメリカは物不足によるインフレが起こり、デフレを脱却したことで、日本とアメリカで金利格差が生じてしまった。


なぜアメリカは金利を上げる事ができて、日本は金利を上げる事ができないのか?

景気が良ければ金利を上げる事ができる。
しかし、景気が悪い時に金利を上げるとさらに景気が悪くなる。
なので、景気が悪いと金利をあげられない。

OCED経済協力開発機構 物価上昇率2022年
平均7.2%、アメリカ7.5%、韓国3.6%、日本0.5%

このデータから分かる通り、アメリカや韓国は、コロナが明け、経済活動を再開したことにより、需要が高まり物価が上がり、景気が好調である。その為、金利を上げる事ができる。
しかし、日本だけ金利を上げる事ができない。

なので、日銀の黒田総裁は金融緩和政策をやめる事ができないのである。
兎にも角にも日本の景気が悪すぎるからだ。
日銀は、今祈るしかないのである。
実際に、金利を上げずに円安の進行を緊張感を持って注視したいと言っている。

そして、事態はよりレッドゾーンに入ってきている。

2022年4月物価上昇率2%を達成したのである。
これは日本の景気が良くなったからではない。

ロシア・ウクライナ戦争による原材料費の高騰が、物価上昇に繋がったのである。

つまり、景気は良くなっていないのに、物価が上昇してしまったのだ。
日本の需要が決して上がったわけではない。

日本は物価が上がっているのに、金融緩和を継続している。
この政策を行なって貨幣の価値が暴落した国は、トルコだ。

日本は今、どっちにもいけない状況なのである。
■金利を上げれば、景気後退
■金利を下げれば、通貨価値が暴落

なので今の日本は円安が穏便に済みますようにと固唾を飲んで見守ることしかないのである。

以上が、現在起きている円安の背景である。

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