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自作ハンバーガーを作るためピクルスを買いに行った話

YouTubeはどんなアルゴリズムが組まれているのか分からないが、
時たまドンピシャで自分にブッ刺さるshort動画が流れてくることがある。
僕にとって最近のその最たる例が、自作ハンバーガーのレシピ動画。
馬鹿みたいに肉汁が溢れ、そんなわけないだろって程にチーズが伸びる。
動画の中では、そんなバーガーが「自宅で簡単に作れる」と謳っていた。
「これは、是非作ってみたい」

翌日、僕はハンバーガーの材料を買いにスーパーに行った。
バンズ、牛挽肉、チェダーチーズ、マスタードはすぐに見つけることができた。
しかしピクルスがなかなか見つからない。
「絶対にここにあるだろ」と思っていた瓶詰め・缶詰コーナーにもなければ、海外の調味料を置いているスペースにもない。
新しいことを始める時や、いつもと違う試みをする際、決まって出鼻をくじかれる。
今回のそれがピクルスの所在だった。

なかなか見つからないピクルス

仕方がないので、近くにいたおばさんの店員さんに「すみません、ピクルスって置いてますか?」と尋ねた。
すると、「こちらですね、ご案内します」と目を合わせてはくれないものの、優しい口調で僕をその在処へと先導してくれた。

このスーパーの隅から隅までを熟知しているかのような足取りで、彼女は奥へと進んでいった。
僕らが進む先には、チーズや生ハムなどのワインのおつまみが置いてあるコーナーが見えた。
「ピクルスのジャンルとしては、ワインのおつまみに分類されるのか」と思いながら、彼女を追う。
しかし、彼女はそこでは止まらなかった。

「ワインのおつまみコーナーにもなかったら、一見さんは絶対にピクルスを見つけられないだろ」、なんて思っていると、彼女は乳酸飲料コーナーで歩みを止めた。
「こちらになりますね」そう言って、彼女は僕にピルクルを手渡した。

ピクルスではなくピルクル

こちらが照れてしまうギャグのようなミスを食らった僕は、「ピルクルじゃなくてピクルスです」と小声で言った。
彼女は恥ずかしさを隠すように、「すみません、こちらになります」と言い、野菜コーナーへと再び僕を先導した。
そして、きゅうりが山積みされている隣に置いてあった大きなピクルスの瓶詰めを手渡してくれた。

帰宅して作ったハンバーガーはshort動画で見たような肉汁も出なければ、チーズの伸びも弱い。
おまけに一人暮らしにとって、ピクルスの瓶詰め1本丸々消費するのは容易でもない。
缶チューハイでピクルスを雑に流し込む晩酌が続くたびに、あのおばさん店員さんのことを思い出す。
そんな夏の夜が続く。

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