母と歌えば2024②

母からの電話に慌てて出ると
「今日、ボイストレーニングじゃなかったのー?」
え?今日、火曜日だけど。大抵、母のボイストレーニングは水曜日だ。
「昨日から、何度も連絡してるのに。」
「ごめんねー。すぐ行きます。」
私の家から実家まで、約三十分。駅まで歩いて十数分。そこからバスで十分弱。バスを降りてから、約五分。
 実家に着くと母は、昼ごはんを用意していた。私は昼前にカップスープとトーストを一枚食べたから、あんまりお腹は空いていない。でも、それは言わないで母の手料理を食べることにしよう、と覚悟していた。
「これ、美味しくないねぇー。」
数日前、あさイチで作り方を紹介していたという炒め物。確かに味がはっきりしない。ピーマンの味が気になるし。
「具の種類が多すぎるのかもねー」
検索してレシピを見ると、みりんを入れなかったことがわかった。そんなに影響があるとは思えないけど。
 母はテニスを見るのが趣味。私が行った時には、全豪オープンの女子の試合を見ていた。
「今日は相撲も見なきゃいけないから、忙しい。」
 しばらく大相撲を見ていたが、
「テニスは誰の試合だろう?」
と言って、チャンネルを変えると、ちょうどジョコビッチが試合をしていた。
「今日はボイストレーニングしなくていいー。」
えー?じゃあ、テレビ見ながら、運動だけでもいいからー。
ジョコビッチの試合を見ながら、いつも通り運動をし、顔のストレッチ、呼吸のトレーニングをした。
 夕方、私はレッスンのために実家を出た。
「見て、富士山真っ赤だよ。」
「本当ー。」
今日は本当にごめんなさい。次回は忘れずに来るからね。

昨日、実家から見えた真っ赤な富士山。

母が作ってくれた昼ごはん。左上の炒め物が残念でしたー。

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