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最後の三助さん

銭湯において男女隔てなく、背中を流し、マッサージをする番頭さん。
三助さん、という古き良き時代の職業であった。

その三助さんが、今絶滅の危機に瀕している。

政府に対し、支援者はその保護を訴えたが、善処します、の通知のみ。
何もしない、と同義語である。

政府の対策を待っていては、三助さんは絶滅してしまう。
この文化を是非とも後世に伝えたい、という支援団体、三助さんを守る会。
その会議室は市民プラザの3階、第3会議室にて行われる。

出席者は4名であった。

会員は何をしている、こんな危機が迫っているというのに、今集まらないで、いつ集まるんだ、と副会長の怒鳴り声。
いや、全員集まったとしても6名ですけど、と思ったが口に出してはいけない。
会員数の減少も、課題であった。
会長、会員数を増やすように何かチラシをばら撒きましょう。
駅前で、誰でもいいからチラシを配って、一人でも多くの会員を集めるんです。
そうしないと国は動きません。

まあ、そう熱くならずに、と会長。
熱くなっていては敵の思う壺ですよ。

会長が想定する敵が誰なのか、詳しく聞いたことはないけれど、会長はよく敵を想定する。
想定して、対策は何もしない、でお馴染みである。

僕は一番年下で、会員歴も浅いので、書記的な役割を担わされている。
別に苦ではないし、会長や副会長のやり取りを記録して、書いている小説のネタにしている。
それが面白いのかどうか、正直わからないところではあるが、僕にできる三助さん保護、だと思っている。

(続く)

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