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六角ハイツ

六角ハイツにたどり着いたものはほとんどいない。
なにしろ六角ハイツに至る道は複雑で、また険しく、攻撃を受ける可能性もあるため、危険である。
誰も、命の危険を犯してまで、六角ハイツに行きたいとは思っていない。

六角ハイツに行けば何があるのか、それは誰も知らない。
けれど、得体の知れない憧れ、魅力がそこにはあって、だからもの好きは六角ハイツに行こうとして、迷宮に迷い込むのだ。

僕が、六角ハイツのことを知ったのは2年前で、やはりそれとなく噂を聞いて、憧れを抱いたわけだが、その時は行ってみよう、などと思わなかった。
安易に僕が辿り着けるわけがない。
なにしろ僕は戦闘能力が高いわけでもないし、知性があるわけでもなく、強い仲間を持っているわけでもない。
そんな僕が六角ハイツに行かねば、と思った理由は、単にこの現状を打破する手段として、とても有効そうに感じたからだ。

まず僕は六角ハイツの情報を集めた。
図書館で文献を調べたり、宿屋で人に聞いてみたり、情報屋に依頼してみたり、ありとあらゆる手段を使って六角ハイツのことを調べてみた。
そしてわかったことは、六角ハイツの六角は、その屋根の形が六角だから、という事実のみだった。
なんという、情報のなさ。
情報屋に支払った3000Gはなんだったのか、と僕は思うけれど、情報屋を恨んでいるわけではない。
僕にとって金は重要ではない。

六角ハイツがどこにあるのか、どうやって辿り着くのか、わからないまま、しかし僕は一旦思ったら進まないと気が済まないたちなので、ある日、家を出て歩き出した。それ以来家には帰っていない。

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