青い胡桃を吹き飛ばせ
くるみのからはとてもかたい、と抑揚のない調子で木下さんはつぶやいた。
私でなければ聞き取れないぐらいにちいさく、その言葉はハイボールに飲み込まれた。
どういう意味すか、と聞いてみたが、すでに意識がなく、すやすやと寝息を立て始めた。
最近、酔っ払うのが早くなった気がする。
歳をとったということか、それとも何か事情があるのだろうか。
私にそれを聞くような勇気はない。
けれど、くるみについて聞くことはできる。
くるみのからはとてもかたい。
知っている、今更どうしてそんなことを呟いたのか知らない。
木下さんの寝顔はとても安らかで、ハイボールを10杯ほど飲んだ人のそれとは思えない。
強いのか弱いのかよくわからんなあ、と私はひとり、たこわさをつまみながら冷酒をあける。