バイパスの澄んだ空気と僕の街
ほんの少し間に合わなかった。
けれど、それは僕が思っているだけで、本当は間に合っていたのかも知れない。
今となっては後の祭りで、どうしようもないけれど。
みきちゃんの帽子はイエローでまだ寒い夜の、街灯に照らされて輝いていた。
僕は駆ける声もなく、その後ろをゆっくりと追いかけていた。
みきちゃんが痛いのは心で、それを癒せるのは僕ではない、ということはわかっていた。
だったら何が、僕に何ができるだろう、ふらふらとその後ろをついていくことしかできなかった。
だからみきちゃんが、湖に足を入れて、どんどん奥に進んでいっても僕にはもうどうすることもできず、ついていった。
やがて腰の位置まで水がきても、ずいぶん遠浅の湖なんだな、としか思っていなかった。
みきちゃんは僕よりも背が低いから、すでに胸まで水に濡れていて、急にそのまま沈んでもおかしくなかった。
そこにきて怖くなった僕はみきちゃんの名前を呼んでみる。
ゆっくりと振り返ったそれは、すでにみきちゃんではなく、何か得体の知れないものであった。
ニタリ、と笑ったみきちゃんだったものは、僕の方に近づき、ほとんど聞こえないぐらい小さい声で、捕まえた、と言った。
何が?と微かに僕は囁いて、湖の底にひきづり込まれていく。