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生命の起源の研究者 市橋教授との出会い

 「生命の起源」研究へのアプローチは地球内あるいは地球外が考えられるが両方は無理、普通はどちらかになる。
 市橋先生のアプローチはどれでもなく、無生物から生命を作り出すことだった。つまり、地球内であろうが、地球外であろうが構わないのだ。


市橋論文との出会い

 毎月一度、今は亡き母の見舞いに故郷に帰っていた。2022.3 故郷から横浜への帰路、故郷で高校の同級生に会った。会話の途中での彼の一言、「生命の起源が分かったかもしれない、Natureに論文が出た」。次に友人に会う時、彼は論文の内容について意見を交換したいはず。その時、「まだ読んでない」とは言えない。
 こんなきっかけで読んだ論文が「生命の起源」、このテーマが私の勉強対象に加わることになったいきさつだ。この論文の執筆者のひとりが市橋伯一教授だ。

Evolutionary transition from a single RNA replicator to a multiple replicator network | Nature Communications
原始生命を模した自己複製システムのダーウィン進化による複雑化を発見

Nature誌 2022.3.18号

 内容は驚くべきものだった。私の理解で要約すると、「材料を入れておくと、進化しながら自動的に増殖する物質(自己複製するRNAなど)がある。
その増殖の条件を変えると、増殖しながら多様化する方向に進化した」というものだ。
 一度読んだだけではわからない。何度も何度も読んだ。
 翌月、友人と会い、「生命の起源」について議論した。その後は毎月、彼とこのテーマで議論し、理解が深まっていった、と同時に「生命の起源が分かった」という話は言い過ぎだったことになっていった。

注:増殖できるRNAは代謝するという生物の要件が欠けている。
  だから、生命ではなく、非生命だと考えられている。

次の論文との出会い

 「2023.8 にまた新しい論文が出た」と友人から。これも私の理解で要約すると「RNA断片をある環境に晒すと、自己複製するRNAになった」、即ち「物質から自己複製RNAができた」という実験が成功したというものだ。
 自己複製するRNAとは、細胞のように、自分が自分の複製を作ることだ。生物だけの現象だと思うかもしれないが、自分の複製を作ることができるRNAもあり、市橋先生はこのようなRNAで進化実験を行っている。
 なお、ウィルスは、細胞に複製を指示して増殖するもので、自分で自分の複製はできない(から生物とは言えない)。

英国の王立化学会のChemical Science誌
自己複製する最小のRNAを発見

 論文を読んで妄想が沸いてきた。「もし、先の論文のRNAと今回の論文のRNAが同じものであり、通して実験できたとすれば、『増殖できない物質だけを用意してある条件下で実験すれば、単なる物質が増殖しながら進化して多様化する』ことになるではないか」と、一人で興奮した。
 もちろん、残念ながら、そんなにうまく実験が進むわけがない。一方のRNAからもう一方のRNAが生まれるまでには何段階もの未知のプロセスがあるようだ。

市橋先生の生命の起源探求の入り口

 先の記事「生命の起源に関する仮説」では生物の起源は地球上か、それとも地球外かを論じたが、市橋先生のアプローチはそのどちらでもなかった。
 最初に物質から生命を作り出してしまおう。36億年前の生命誕生が地球で起きたことなのか、宇宙で起きたことなのかは、別途考えればよいというアプローチのようだ。
 またRNAワールド仮説のミッシングリンクを実験でひとつずつ埋めていく、とてつもなく多くの疑問を「こうやればできる」と明らかにしていく作業だ。
 なお、RNAワールド仮説は生命の起源に関する仮説の一つ。原始地球上にRNA からなる自己複製系が存在し、これが生命の元となったという仮説だ。

市橋先生との出会い

 ここまでくると、市橋先生のお話を直接聞きたくなる。論文を読み始めて1年半後、X(Twitter)で先生のお名前を見つけた。2023年度は「細胞を創る」研究会の会長を務められるそうだ。「参加費無料です!会員でなくても(ならなくても)参加できますので、お気軽に参加登録を!」とある。一般人でも参加可能だ。参加登録を申し込んだところ、「細胞を創る」研究会16.0への案内が届いた。
 2023.9.25~9.26会場に行ってみると、そこは日本中の各大学・研究所・企業から若い200名ほどの研究者が集まる、熱き議論の場だった。

 2日間に渡って、一人30分の30件の論文発表と71件のパネル展示が行われた。パネル展示見学の時間に、先生としばらく話をする機会があった。
  その後、当日の写真を基に、Lancersでお気に入りのイラストレーターに似顔絵作成をお願いした。門外漢の私ができることは先生にこのイラストをプレゼントすることくらいだ。
 先生:おお、 似てるかも。 使い道を考えてみます。どうもありがとう!

市橋教授

 以上が「生命の起源」研究のフォロワーになった切っ掛けだった。


【マガジン】生命の起源
生命の起源に関する仮説
遺伝子数473個の最小人工生命体 syn3.0
生命の起源の研究者 市橋教授との出会い(本記事)


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