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こんな北朝鮮に注目! 平壌の“シンガポールショップ”


「シンガポールショップ」の存在によって、日本からの輸出が禁止されているはずの日本製品が、北朝鮮で堂々と販売されているという。北朝鮮がシンガポールの貿易会社を通じて、経済制裁を回避する実態が明らかになっている。同貿易会社は平壌で贅沢品を扱う小売店を複数店舗運営中だが、これら店舗では、国連による北朝鮮の高級階層を狙った制裁で、北朝鮮への輸出が禁止されている様々な贅沢品を含む日本製品が多数販売されている。ヤマハの楽器、日本産の缶コーヒーなど数多くの日本製品が堂々と販売されており、対北朝鮮制裁の網の目を掻い潜って製品を入手しているのだ。

経済制裁回避の経路、シンガポールに拠点を置くOCNシンガポールの実態は、株主と経営陣がシンガポール人で構成された企業だが、実質的に北朝鮮の当局と緊密な関係を持つ企業とみられている。北朝鮮を扱うメディアによると、OCNは故金正日総書記が自分と一族の秘密資金を管理するために、1974年に設立した外貨獲得機関である朝鮮労働党39号室と深い関係を持っているという。メディアの取材に対し、北朝鮮の元高官は、39号室がOCNの売上のほとんどを持っていく構造を明らかにした。国連安保理は2016年3月、朝鮮労働党39号室を経済制裁対象に指定し、2017年6月には39号室と関連がある高麗(コリョ)銀行など4つの団体も制裁対象に指定した。

OCNは1990年代半ばから、北朝鮮での営業を開始しており、平壌市民の間では、「シンガポールショップ」と呼ばれているという。この店舗を利用できる人は、平壌の高級階層と平壌に駐在する外国人外交官に限定され、 観光客などは出入りすることができない。メディアが手に入れた平壌の2つの店舗を撮影した写真には、グッチ、シャネル、プラダなど世界的なブランドの製品が映っている。日本ブランドでは、ソニー、パナソニック、ヤマハ、セイコーなどが陳列されている。商品は、液晶テレビ、ノートブックパソコン、宝石、化粧品などだ。

シンガポール政府は、2010年以降、国連の対北朝鮮制裁決議に基づいて、巻きタバコ、毛皮製品など14個の品目を贅沢品に指定、対北朝鮮輸出禁止対象としているが、このうち、平壌にあるOCNの店舗には、洋酒、香水、楽器、革バッグ、衣類、宝石など8つの品目が販売されている。日本政府は、2009年6月から北朝鮮への輸出を全面禁止。統計上は、2005年に70億円あった輸出はゼロになった。

写真には、ヤマハのドラム、サックス、キーボードなどが陳列されていたが、シンガポールのヤマハの子会社の広報担当者は、メディアの取材に対し、平壌でヤマハ製品が販売されているという事実に驚いていたという。平壌のOCNの店舗で販売されている日本のポッカの缶コーヒーに関して、2008年に同店舗で撮影された製品には、販売会社が「OCN」と記載されていたが、2017年に撮影された缶コーヒーには、OCNの名前が消えている。OCNは、2012年までポッカサッポロフード&ビバレッジのシンガポール所在の子会社であるPCSが製造するコーヒー製品の販売代理店の役割をし、北朝鮮に輸出してきた。

OCNはシンガポールに法人登記がされている、別の関連企業に事業を承継させ、2012年以降も継続してPCSの缶コーヒーを輸出しているようだ。ポッカサッポロフード&ビバレッジは2012年のOCNとPCS間のパートナーシップが終了した事案については把握していたが、その後も北朝鮮に自社製品が輸出されていた事実については「知らなかった」としている。

OCNは金融業にも積極的に手を出し始めているが、同社は柳京(ユギョン)商業銀行を設立し、OCN平壌店舗内にATM機の設置も完了した。同銀行の口座に1万ドル以上の預金残高がある場合は、OCNの店舗で10%の割引を受けられるという。また、OCNは海運事業も手掛けている。OCN傘下のシンガポールに拠点を置く海運会社は、貨物船を保有。北朝鮮密輸ネットワークに関与しているとされる「海之星船舶管理有限公司」がOCN傘下の香港の海運会社を運営していると韓国のkotoraは指摘する。日本製品を載せた貨物船は、まず第三国(香港、中国・天津など)に寄港し、そこからコンテナ貨物を移し替えて平壌に近い南浦港に貨物船を送るというルートなのだという。

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