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こんな北朝鮮に注目! 強い女子サッカーの秘密

2017年12月15日、女子サッカーの東アジアE-1選手権の最終戦で、北朝鮮代表が日本代表に2-0で完封勝利し、大会3連覇を達成した。北朝鮮の女子サッカー代表がなでしこジャパンに完勝したのだ。試合は終始、北朝鮮ペースで進んだ。後半20分にFWキム・ユンミの大会4得点目となるゴールで先制すると、同37分にもMFリ・ヒャンシムが追加点を決めた。大会では日本戦だけでなく、中国と韓国を相手にしても、パワー、スピード、スタミナ、フィジカルなど総合的な力は北朝鮮が一枚上手だった。北朝鮮代表には、90分間、衰えない動きと勝利への貪欲さがあったのだ。

なぜ女子の北朝鮮代表は強いのか。2017年12月時点で、北朝鮮のFIFAランキングは10位で、日本(6位)に次いでアジアでは2番手。2010年に日本に抜かれるまでは、2005年以降、北朝鮮がアジアでトップに君臨していた。ワールドカップには第3回大会の1999年から4大会連続で出場しており、第5回大会の2007年にはベスト8入りした。また、2008年の北京オリンピックと2012年のロンドンオリンピックに2大会連続で出場。アジアカップは2001年、2003年、2008年に3回制覇している。最近では、ユース世代の成長が目覚ましい。特に2016年のU-17W杯の決勝戦で日本を下し、同年のU-20W杯の決勝でフランスを下して優勝しているのだ。女子選手の育成にかなり力を入れていることがうかがえる。

キム・グァンミン監督は、2005年に女子の代表チームの指揮官に就任した。結果を残し続け「名将」と呼ばれた。現役時代は代表選手としても名を馳せ、1992年の広島アジアカップで、カズやラモスがいた日本代表と対戦(1-1)しゴールを決めている。そんなキム監督はこの大会を前に、一抹の不安があったという。北朝鮮代表は、若い選手が主体でどのようにモチベーションを保つかが一つの課題だったからだ。2017年に開催された、2018アジアカップ予選ではB組で韓国に1位を譲り、北朝鮮は2位に甘んじた。このアジアカップ本大会が2019年W杯の予選もかねた試合となるため、必然的にW杯出場の可能性は消えた。キム監督は女子の選手をレベルアップさせるための秘訣について、「基本的には男子と同じトレーニングメニューをこなすようにしている。女子は男子よりも当然、体力的で劣る部分があるので、最初はついていくだけで精いっぱい。練習がハードな時は、とても辛いはず。ただ、それについて来られるようにならないと世界の頂点は見えてこない」と語った。女子に男子と同じトレーニングを課し、ひたすらついてくるように鍛える。試合の90分間、衰えないスタミナは日々のハードな練習で養われていたのだ。

北朝鮮の女子のサッカー人口は男子と同じぐらいとみられる。北朝鮮では、女子サッカーは特に人気スポーツだからだ。女子サッカーの人口が男子と同じになってきているという国は、世界でも類を見ないだろう。今回のE-1選手権での北朝鮮の優勝は、決して偶然ではなく、着実な育成が実を結んだものなのかもしれない。

 1999年、北朝鮮の女子サッカーは、アトランタオリンピック準優勝である中国と肩を並べるほどに実力を上げていた。国は、女子サッカー選手の育成に力を注ぐ。第1回FIFA女子ワールドカップが1991年に開かれたばかりで、女子サッカーの全体の歴史が浅かったのも、北朝鮮に有利だった。北朝鮮女子サッカーの実力が急上昇していることについて、サッカー協会の関係者は、「北朝鮮は早くから女子サッカーを始めた。世界レベルの中国女子サッカーチームとの頻繁な交流が可能だったからだと思う」と語った。北朝鮮には大学で20チーム、中学校と高校で50チームぐらいの女子サッカーチームがあるといわれる。国内の各種スポーツ大会でも女子サッカーを採用し、優れた選手を育成。他の種目の選手たちの中でも技量や体力が優れた選手は、サッカーにスカウトして育成するほど、女子サッカーに力を入れているのだ。

韓国では、なぜ南北の女子サッカーの実力に差がつくのかという疑問が出ている。韓国の選手も熱心に練習をしているのに、なぜ北朝鮮の選手が上を行くのか?その答えは、「北は4.25体育団など軍隊の所属チームで訓練する選手たちがいて、何よりも体力がある」というもの。17歳以下(U-17)、20歳以下(U-20)選手たちは技術も非常に優れており、2016年には相次いでFIFA国際サッカー連盟女子ワールドカップで優勝した。

2017年12月11日、千葉県で開かれたサッカーの東アジアE-1選手権で、韓国に勝利した北朝鮮女子代表のキム・グァンミン監督は、「選手たちの高い精神力と集団力でよく戦って今日の勝利を収めたと思う」とその理由を説明した。韓国女子代表の尹徳汝(ユン・ドクヨ)監督は、「北朝鮮のサッカーは体力が基本にある。特にスピードで遅れをとった」と敗因を語った。この時出場した北朝鮮選手たちを見ると、日本の防衛省に当たる人民武力省所属で、北朝鮮で最も有名な体育団である4.25体育団に所属している選手が、エントリーした全23人のうち8人であった。この他、北朝鮮の警察組織である人民保安省に属している鴨緑江体育団の選手も3人エントリー。また、平壌体育団、カモメ体育団、小白水体育団など複数のチームの所属選手たちで構成されていた。

北朝鮮の女子サッカーは、過去2014年仁川アジア大会と2015東アジアカップで相次いで優勝し、優勝の主役であるラ・ウンシム、ホ・ウンビョルなどは北朝鮮では英雄扱いされている。17歳以下と20歳以下の女子ワールドカップの舞台では、2016年に相次い優勝した。

 ただ、国家レベルで女子サッカーを集中的に育てる北朝鮮だが、男子はチームが減り、選手の確保すら難しくなっているとされる。今後、男女で、実力の差がつくのかもしれない。

 北朝鮮女子サッカーは、韓国に、「負けるしかなかった試合」(韓国:0 - 北朝鮮:1)と言わしめた。技量と闘志の両方で北朝鮮が韓国に勝っていたのだ。この日、北朝鮮は強靭な体力と精神力をもとに、試合の初めから圧倒的な技を披露した。何よりもフォワードのハードなプレッシングが凄かった。北朝鮮の全方位でのプレッシングに慌てた韓国は、1、2回ボールを回す途中でミスを犯した。 北朝鮮は1990年代からサッカー協会の積極的な支援で、女子サッカーの育成に乗り出している。このサポートのお陰で、ヨーロッパなどでキャンプしながら、ヨーロッパのクラブチームとも実戦経験を積み、実力を高めている。有望株の発掘に力を入れている北朝鮮女子代表の平均年齢は21歳。若さも強みだ。

韓国の有名な通信社、聯合ニュースは、2015年8月に10日間、2015第2回国際ユースU-15サッカー大会取材のため、平壌を訪問した。期間中、2013年に設立された平壌国際サッカー学校を訪問。この学校の校長に北朝鮮サッカーの新しい方針を確認することができた。それは8年間の度重なるテストで精鋭だけを残すという「サバイバル」方式の運営だった。学校には7歳から14歳までのコースがあり、全ての学年が毎学期のテストで「劣等生」を除く。空席には各地で新たに選抜された候補が入る。新入生と編入生を選抜する際には、身体条件と基本的な実力も確認するが、何よりもアタマの回転が速く、積極的な性格である生徒を最優先に選抜した。退学と残留を分けるカギは、国家代表選手として成長できるかどうかだ。平壌国際サッカー学校は、2013年に定員80人で運営していたが、2015年時点では、その2倍の160人。教育は練習試合ではなく、徹底的に基本テクニックを中心に行われる。正方形の学校の建物の中にはバスケットボールのコートサイズの人工芝練習場があり、女子生徒も相手と競り合う練習をするが、すでに足さばきと安定したボールキープのレベルは高い。

 校長は、生徒が見せてくれたパッシングゲームへの執着は、学校のサッカー哲学に沿ったものだと説明した。彼は「攻撃はスペイン流、守備はドイツ流を目指す」と述べた。すべてのチームが、スペインとドイツのサッカーを夢見る。校長は「私たちは、どんな状況でもパスと頭脳プレーで試合をしなければならないと指導している」と語った。

続いて「試合が始まると監督ができることは何もない」とし、「11人の選手が自ら判断して自分で解決策を見つけなければならない」と強調した。彼は「サッカーというスポーツは、90分間、色んな変化が生じる。すべての変化への対処法を選手自らが見つけなければならない。それができる選手に育てるのが、この学校の役目」と説明した。北朝鮮サッカーは過去、組織力とスピード、そしてこれを裏付ける体力の全てを追いかけた。この方法は、幼いときは効果があるが、最終的に創造力が欠けた選手を生む。北朝鮮サッカーは、暗黒時代を送った経験がある。北朝鮮サッカー界は、変化を模索していた。校長は、「考えるサッカーが北朝鮮サッカーの新たな潮流」とし、「その新たな潮流を平壌国際サッカー学校が作っていき、また導いていくだろう」と語った。

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