見出し画像

『約束は果たしたよ!ベティさん(;O;)』

12月16日㈯の昼下がり、二人の娘様家族と親友に看取られ、ベティさんは旅立たれた。娘さんたちの手をしっかりと握って、眠るように…。
 
ベティさんはご入居時、とにかく自分で動くことが出来たので、自由に過ごされていた。並びのパン屋さんにパンを買いに行ったり、散歩がてらセブンイレブンを覗いてみたり。好きなように自分らしく生活できている方だと、ややもすると錯覚を起こしてしまいそうになるが、実はそうではない。

がん末期の宣告を受けてから3年と数か月。彼女にとっては、長く辛い日々だったようだ。

とにかく見た目が普通なので、はたから見ると、どこも悪いようには見えず、ましてや、がんの末期の患者には、到底予想もつかない。でも… 彼女は言った。


外目は元気に見えるんでしょうけど、体の左半分はしびれたように感覚がないし、足の裏もゴムでもついているようで、感覚がない。舌の先も擦れていて、痛いから軟膏を付けるんだけど、そうすると何食べても味が変なのよね…。食べたい物はと言われれば… ?でもほんの少ししか食べられないしさ!楽しみなんて、な~んにもないかな!言えばキリがないわ…。
 

ピアノの先生だった彼女が、2度ほどピアノを弾きに自宅へ帰ったことがあった。でも、指が上手く動かず、とてもガッカリして帰ってきたのを思い出す。

なんとか励ましてあげたかったが、うまい言葉が出てこず、私は、『そうなんだ~』と言って、その場を濁してしまった。

今思えば、本当に申し訳なかったと反省している。きっとベティさんは、自分が癒される一言が欲しかったに違いない。
 

終末が近づいてきたある日、先生がおっしゃった。
『最期は、娘さん達に会えるように、配慮してやってください!』 先生は、実は淋しがり屋のベティさんを知っていた。

直ぐに、お二人の娘さんたちに、その旨を連絡するも、気持ちはあってもそれぞれの生活もある。お一人は埼玉にお住まいで、まだ生後3か月の赤ちゃんもいる。そしてその上には、保育園に通うお兄ちゃんとお姉ちゃん。娘さんもさぞかし悩んだことだろう。でも意を決し、育メンのご主人の協力の下、2週間続けて仙台に来ることが出来た。

一番下の赤ちゃんだけは、おっぱいを飲ませないといけないので、二人で来仙。

抱っこヒモで赤ちゃんを抱っこしながらの看病…。娘さん、本当に頑張りました。


最後の数日は、ベティさんが手をつないでいないと極度に不安がり、一日中ベッドサイドで手を握っていた娘さん。

さすがに私たちも何かしないとと、赤ちゃんの子守を引き受け、事務所のみんなでおむつを交換したり、抱いたり、背負ったり!久しぶりの赤ちゃんの子守に、ワクワク半分、恐々半分!

ご入居いただいているお客様は、突然の赤ちゃんの登場に、それはそれは喜んでおられ、笑顔がたえなかった。違う意味で、素敵な時間を過ごさせていただいたことに、感謝!
 
ベティさん69才。まだまだお若い…。娘さん方も40代前半…。

もっともっと、お母さんに甘えたかっただろうに…。そんなことを思いながらベティさんと過ごした日々を懐かしんでいると、お別れの時がやってきた。娘さん達は深々と頭を下げ、ベティさんと共に静かにはるかを後にした。
 
私たちのお別れは、お客様ご本人だけではない。

はるかの中で毎日、当たり前に会っていたご家族様とも…もう会えなくなる。
今回は、ばーば(ばあちゃん)になりきり、子守をさせていただいた、赤ちゃんとのお別れもあった。かわいかったなぁ~!娘さん達家族に会えなくなるのは…寂しいな(;_:)

私たちは常に、お客様の家族として関らせていただいている。
はるかは決して、ただの施設ではない。ご入居いただくお客様の、第2のおうちなのだ。
 
ベティさん!そちらの様子はいかがですか?ピアノは弾けていますか?🎹
どうかゆっくりと、お好きな音楽とお花に囲まれ、自分時間をお過ごし下さい。

良い旅を… 🌙🌈

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?