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嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~四十の歌~

《篠原さんに恋してしまいました Ⅱ≫ 原作:平 兼盛
そんな……。噂になってるって⁈ どうしてわかったのかな……。
だまってても顔色に出てたかなぁ。
たしかに心から篠原さんのことが好き。けれど自分勝手な私のそんな想いは彼には迷惑そのもの。
困ったなぁ。
じっと忍んで暮らすのが、分相応やったのに……。
……篠原さんがこんな噂で困ったことになったら、どうしたらいいの……。

定家「しのぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人のとふまで。恋心を歌った絶唱やね」
蓮生「ある人を恋しく思う気持ちを誰にも知られないように、長い間じっとおさえて、つつみかくしていました。けれども、とうとうかくしきれずに顔色に出てしまったようです。『恋していらっしゃるようですね』と知る辺がたずねるまでに……。不思議と知れてしまうのが恋心やね」
定家「昔、そんな事もあった」
蓮生「定家はん、今はその話はせんとき。この宴の終わりまでとっとき」
定家「せやね。そうしようか。今は未だの時かもしれへん」



 


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