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工数や予算を精度良く見積するのに悩んだ新米技術者の話

工数計算をしたりそこから予算を組んだりなどの見積の必要に迫られるも、何から手を付ければいいのかわからなくて途方に暮れてしまった…

会社に務めたにせよ起業したにせよ、社会に出てから一度くらいはこういった経験があるのではないでしょうか。

わけもわからず直感で組んだりコピペをつないで見積もり書類を作るしかなく、持っていけば「なにこれ」と言われて一発で撃沈。じゃあ見積ってどうすればいいのと聞こうものなら「自分で考えろ」とこれまた撃沈。

こんな謎の見積無限列車編では、ぜんぜん作業が終わらなくて残業ばかりする羽目になります。生産性もクソもあったものではありません。

ここには、見積とはどうすればいいのかという疑問に対し私が新米だった頃に悩んだ経験をもとにまとめた大まかな方針をいくつか載せてあります。

この記事が新米技術者の目にとまり、何かひとつでも小さなヒントを得ていただければ幸いです。

※2023.07.28 ちょっとした修正




見積の目的

だいたい見積ってなんのためにするんだよ?そういうのは営業とかえらい人がやるもんだろ?というお話。

もっともな疑問です。技術者なんだから上司なり先輩なりから言われたことを気合と根性でこなせばいいんじゃないかと、かつての私もそう思っていたものです。

最初のうちはそれでいいのですが、1年2年と経つと次の新人達がやってきます。新人が集まってくれば、今度は自分が先輩として指示を出す側にまわる事になります。

さあ、自分の仕事を片付けつつ後輩の作業にも気を回す必要が出てきました。そうなったときに、何にどれくらいリソースを割くのかを段取りして効率よく進めていくことが重要になってきます。気合と根性だけでなんとかするやり方ではすぐに限界をむかえてしまいます。

営業が顧客に金額を提示するためだけではなく、技術側が段取りよく業務をこなし生産性を高めていくためにも、見積という作業はたいへん大きな意味をもっているのです。



見積の手法

工数の見積にもいくつかの手法が確立されています。それぞれの手法の詳細については「工数 見積」とかで検索すればたくさん出てくるので、ここではこういうのがあるよというのだけさらっと紹介します。

【類推法】
類似する前例や実績をもとにスピード重視で大雑把に見積する手法。感覚的な要素が強いので要件がかたまってくる前の超概算用に使いたい。

【係数法】
要件がかたまってきて、機能Aはこれくらい、機能Bはこれくらいなど用意した数値をもとに定量的に見積する手法。類推法よりは具体的だが、実行予算としてはもう少し精度がほしい、私的にはそんな感じ。

【ボトムアップ法】
実際に行う作業を細分化して、それぞれの工数を割り出し積み上げていく手法。何をどうするかを明確にする必要があるぶん知識と時間が要るが、高精度で出せる。

【プライスツーウィン法】
相手が見込んでいる予算にあわせて見積を出す手法。予算をオーバーするようなら機能を削ることを厭わないので、必要とする機能を満足できるとは限らない。交渉力が試される。

他にも色々とありますが長くなるので割愛。実際に見積をする時は、大まかに予算をとる段階、予算と人員をどのように割くかを考える段階、実際に業務を遂行する段階など、時と場合によって各手法を使い分けたり組み合わせたりすることになります。



基本的な考え方と心構え

見積にも手法があるのだ!ということを知っていても、それだけではどうやって見積すればいいのかという疑問は解消しきれません。段取り上手になるために、実際に見積をしていくうえでの考え方や心構えをいくつか載せておきます。


【タスクを細分化し洗い出そう】
何をどうするのかをはっきりさせることが非常に大切です。はっきりさせることで、それぞれのタスクにかかる時間と用意すべき材料や道具がわかり段取りしやすくなります。ヒヤリング大事。

たとえばキャンプでカレーを作りたい場合を想定してみましょう。
「カレーを作る」という大きいタスクを、「人参の皮を剥く」「じゃがいもを切る」「鍋にはる水を汲む」「火をおこす」など小さく分けていきます。こうすることで、作業を手分けして段取りよく進められます。

段取り上手の第一歩は、何をどうするのかをはっきりさせること。まずはここからはじめて生産性を高めていきましょう。


【打合せや書類作りなども計算に入れよう】
作業場で手を動かす以外にも大切な仕事はたくさんあります。概算では見落とされがちですが、実際に時間がかかっているわけですからしっかり計算に入れていきたいところ。
「この会議くっそ長くね?こんなに必要なくね?」とえらい人が気づいてくれればしめたものです。無駄の塊でしかない会議の削減は生産性の向上に非常に大きく貢献してくれます。


【すこし余裕をもたせよう】
この作業は3日!何が何でも3日なのだ!フンガー!!とキッツキツにしてしまうと結局残業ばかりする羽目になり生産性が高まりません。
締めるべきところは締めなければなりませんが、全体的に余裕をもって進められるようにしておきましょう。不測の事態にも対応しやすくなります。


【経験や勘に頼り過ぎないようにしよう】
経験や勘の要素はゼロにはできませんが、可能な限り排除していくべきです。見積した数値に根拠をもたせることを意識しましょう。
そんなこと言っても過去の実績から拾うことだって重要だし、わからないものは勘でどうにかするしかないじゃないか!という意見ももっともですが、物価や税金は常に変動していくもの。勘でどうにかするにしても、時代の変化に見合った数値になるよう情報を集め活用しましょう。


【見積値と実績値を比較しよう】
見積した数値の根拠を実際にかかった数値をもって確かめることはとても大切です。ここでは見積と実績が合っているかどうかよりも、どれだけのずれがあるのかを認識する事の方に意識を向けます。こちらの方が遥かに重要で、手遅れになる前に軌道修正できますし次に見積するときの大きな助けにもなってくれることでしょう。
ただしとても手間がかかる作業なので、比較ばかり気にしていると実際の業務が疎かになるのが悩みどころ。


【即答しないようにしよう】
世の中にはやたらと急かしてくる人がいます。急かしてくる人の中には、本当に急いでいるわけでもなく自分が有利になるよう事を運びたいから相手に考える時間を与えないようにしてくる姑息な輩もいます。
そういう人たちのペースに乗せられないようにしましょう。乗せられてしまうと生産性は一気にストップ安。ある意味最も重要な心構えかもしれません。

もっとも、自分の責任範囲でやり切る自信のある案件に対してなら強気の即答も強力な一手となります。


最後に とるべき方針まとめ

長くなりましたが、ここだけ押さえておきましょう。

・何をどうするのかをはっきりさせる
・数値化して根拠をもたせる
・生産性の向上を目的とする
・相手のペースに乗せられない


余談 いま、地味に悩んでいること

タスクを細分化して日数を割り出すときに、優秀なメンバーなら3日かかるものが新人だと5日かかる、というようなことがよくあります。日数がかかればそのぶん金額も大きくなるわけですが、そうなると新人だけのチームの方が売上が伸びてしまうという謎の現象が発生します。

ここではあえて新人という単語を用いましたが、別の単語に置きかえると…非常に良からぬ事態になってしまいます。みなまでは言いませんが、スキルが上がりすぎると相対的に売上が落ちてしまいかねない環境というのは少々困りものです。

そこらへんうまくやっていきたいものですが、落とし所をどのようにすれば丸く収まるもんなのでしょうかね…



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