勇武の日本を取り戻せ

勇武の日本を取り戻せ
“シーチン”修一
【雀庵の「大戦序章」294/通算725 2024(令和6)年5/18/土】大日本帝国は1945年の敗戦で潰されてしまったが、その前後に生まれた人は「焼け跡闇市派」などと言われる。彼らの両親、祖父母は明治・大正生まれがほとんどで、焼け跡闇市派と言っても、少数ながら「故国再興・愛国派」と多数の「占領軍=米国派」に分かれた。第2次大戦で事実上の唯一の勝者である米国は、ボロボロになって敗者同然の欧州列強の憧れでもあった。この手の米国派、親米派を「コラボレーショニスト」(強者になびく事大主義者)と愛国派の伊藤貫氏(国際政治アナリスト、在米)は憎悪している。

音楽家のGigi氏による以下の「気づきメモブログ」2012/7/16は興味深かった。
<戦争に負けた途端占領軍に協力をし始める人たちをコラボレーショニストと言います。良い言葉で言えば「協力者」ということになりますが、本当のところは「祖国を裏切った奴」と訳されるらしい。キッシンジャーも「これ(日本)ほどコラボレーショニズムが成功した国は他に無い」と言っているようです。
当然のことながらこれを選択した国は独自の文化は捨て去ります。押し付けられた法律や制度、モラルもありがたく受け入れる訳なんですね。ここで提案ですが、いつまでも属国(植民地)でいるよりも、思い切ってアメリカの「州」になって日本という国を捨てるのも一つの方法かもと思います。51番目の州になるわけですが、1億3千万の人口を持つ州の力も凄いと思います。
数の論理でアメリカを実質支配できるかもしれません。中国も朝鮮も接し方が180度変わるでしょうね、なんてたって核兵器をもつアメリカになるんですから。全ての不条理が解決した後「日本国を再建」なんてのはどうかな?>(以上)
2代目、3代目になると「米国は我が祖国」になるから完全に日本は消滅することになりそうだけれど・・・閑話休題。

伊藤貫氏ら多くの先達に学んだ小生も今やすっかり「アカ」の垢がぬけて「故国再興・愛国派」になったが、高坂正堯氏(国際政治学者)については「国際政治 恐怖と希望」(1966年初版、中公新書)を3年ほど前に読んだものの、小生のような単細胞的猪突猛進ヂヂイには難しくて往生した。
塩野七生先生が2018年に著書「誰が国家を殺すのか」で高坂氏の「世界地図の中で考える」を紹介していたが、分かりやすそうので近く取り寄せるつもりだ。
この「世界地図の中で考える」は今でも読み継がれているようで、新潮社の「波」2016年6月に細谷雄一・慶應義塾大学教授が「なぜ『悪』を取り込む必要があるのか」で同書をこう紹介している。

<高坂正堯元京都大学教授がその設立に深く関わったサントリー文化財団が刊行する雑誌『アステイオン』。「追悼・高坂正堯氏」と銘打った一九九六年の第四二号では、北岡伸一立教大学教授(当時、以下同)、坂元一哉大阪大学助教授、そして中西寛京都大学助教授が、座談会で高坂の巨大な足跡とその功績を回顧している。坂元と中西は高坂の門下生であり、北岡も高坂とは政治的立場が近い位置にいた。
その座談会の末尾で「最後に後学のため、先生のご本でお勧めのものを紹介して終わりにしましょう」と北岡教授が述べている。数々の名著を残した高坂の著作の中で、北岡教授と坂元助教授がそろって、新潮選書から高坂が一九六八年に刊行した『世界地図の中で考える』をあげているのは興味深い。

一九六〇年代後半は、政治学者高坂にとって、人生で最も豊穣な成果を生み出した時期であった。一九六六年の『国際政治』、そして一九六八年の『宰相吉田茂』は高坂の評価を決定的なものとし、現在でも広く読まれ続ける国際政治学の古典的名著である。
『国際政治』と『宰相吉田茂』というこの二つの著作では、政治学者として明確な主張を展開しているのに対して、同じ時期に書かれた『世界地図の中で考える』は対照的な印象を読者に与える。それもそのはずで、「あとがき」のなかで高坂は「私はこの書物で、かなり自由な書き方をした」と断り書きをしている。というのも、「私が旅行で見、感じ、そして考えたこと、旅行から考えて本を読み、論じ合ったことを、そのまま書く方がよいと思った」からだ。そのような肩の力が抜けた自由奔放な思考と記述が、本書の魅力をよりいっそう大きなものとしている。

それでは、この著書にはどのようなことが書かれているのか。まず高坂は本書の叙述を、自らのタスマニア(*豪州の島)での滞在についてから始める。高坂がタスマニアに関心を持ったのは、自らが子供の時代に知った、タスマニア島原住民の滅亡の理由への知的好奇心がきっかけであった。なぜタスマニア人は滅びなければならなかったのか。
それを調べていくうちに、高坂は興味深い事実に突き当たる。すなわち、「タスマニア土人を滅亡させる上でもっとも効果があったのは、イギリス人の鉄砲でも大砲でもなかった。皮肉なことに、そうした文明の利器よりも、イギリス人が彼らの身体のなかに携えて来た微生物が、はるかに有効だったのである」。というのも、タスマニア島の原住民は、外部との接触がなかったために、このような細菌への免疫がなかったのだ。

たとえ細菌が悪であったとしても、その「悪」を体内に取り込むことでむしろ免疫を高めて、われわれはより強くなれる。高坂は語る。「ごく簡単に言えば、より多くの種類の病原菌を体内に持っている人間がより多くの病気に耐えうるのである」。高坂は、社会のなかからひとつずつ悪を摘まみ取って排除するよりも、その悪を内側に取り込み強くなる必要に目を向ける。これこそが高坂の文明論の真骨頂である。
政治の世界でも、権力、軍事力、戦争、帝国主義、独裁といった、数々の悪徳が見られる。そして、それらの悪徳を排除することを政治の目的に掲げる理想主義者はあとを絶たない。しかし、そのような悪をむしろ内側に取り込むことで免疫を高め、われわれはより強くなれるのだ。

高坂が社会に求めるのは、均衡である。「社会のなかには、さまざまな要因が微妙な釣り合いを保っている。人びとはそのなかのあるものを善とし、あるものを悪とするけれども、その相互の関係は複雑に入り組んでいて、どれが善であり、どれが悪であるかを言うことが難かしいのが真実なのである」。
「あとがき」でもまた、次のように書いている。「実際には、文明そのものが光の面と闇の面を持っている。そしてその二つは離れ難く結びついているのである」。そのような高坂の文明論は本書の全体に貫かれ、そのような視座からアメリカ、イギリス、フランス、日本の文明を自由に描き、その光と闇に目を向ける。

なんと成熟した思考だろうか。戦後の日本社会はあまりにも稚拙に、「光の面」に執着し「闇の面」を否定することに懸命となってきた。われわれに必要なのは、そのような社会の「闇の面」あるいは「悪徳」を、人間社会が生み出す不可欠な全体の一部として捉えて、その均衡を生み出すことではないか。高坂の古典的な文明論を読むことで、読者は見失いがちな価値のある視点を得ることができるのであろう。

高坂正堯プロフィール:コウサカ・マサタカ(1934-1996)。1934年、京都市生まれ。京都大学法学部卒業。1963年、「中央公論」に掲載された「現実主義者の平和論」で鮮烈な論壇デビューを飾る。1971年、京都大学教授に就任。『古典外交の成熟と崩壊』で吉野作造賞受賞。佐藤栄作内閣以降は外交ブレーンとしても活躍。新潮選書から刊行した『世界史の中から考える』『現代史の中で考える』『文明が衰亡するとき』『世界地図の中で考える』がいずれもベストセラーとなる。1996年没>(以上)

*)豪州の島タスマニア:小生の理解では、先住民族であるタスマニア・アボリジニは英国から島流しされた犯罪者などの狩猟(駆除)により、あっという間に絶滅したと思っていたが、ナショナルジオグラフィック日本版2013年6月号によると――
<アボリジニは、5万年も前からオーストラリア大陸に暮らしてきた先住民だ。しかし、今ではこの国の全人口に占める割合は、3%にも満たない。
200年ほど前まではずっと、オーストラリア大陸は、彼らだけのものだった。少人数で狩猟・採集をしながら広大な大陸を移動する暮らしを営んできたが、1770年4月29日に英国の探検家ジェームズ・クックが南東部の海岸に上陸してから生活が一変する。その後2世紀にわたり、虐殺、病気の流行、アルコール依存、強制同化、土地の収奪といった文化抹消の嵐が吹き荒れた>(以上)

恐ろしいことだ、先住民はあっという間にたったの3%に激減! キリスト教などの一神教は「我こそ正義」病だから手に負えない。宗派が違うと平気で殺すのだから、まるで「狂気の蛮族」そのもの。彼らは今でも多神教の日本人など異教徒を「狂気の蛮族、殲滅すべし」と本音では思っているだろう。特にキリスト教信者の多い欧米諸国はアボリジニなど世界各地の先住民を「駆除」した実績があるから警戒したほうが良い。

そう、平時にあっても油断大敵!である。日本民族の国家をズタズタにしようとする動きが近年内外で目立っている。愛国者は常に緊張感をもって警戒すべし。塩野七生先生が高坂正堯著「世界地図の中で考える」のあとがきを紹介していたので転載する。

<われわれ(日本)は二重の意味で、前例のない漂流のなかに置かれている。ひとつには、通信・運輸の発達のおかげで世界がひとつになり、世界のどの隅で起こったことでも、われわれに大きな影響を与えるようになった・・・そして、歴史の歩みは異常なまでに早められた。
次々に技術革新がおこり、少し前までは考えられもしなかったことが可能になる。われわれの生活はそれによって影響を受けるから、われわれは新しい技術に適応するための苦しい努力をつづけなくてはならないのである。ややもすると、我々は激流に足をとられそうになる。
皮肉なことに、こうした状況はかつて多くの人々の夢であった。人々は世界のどこにでも手軽に行け、世界中のできごとを早く知りたいと思ったし、文明ができるだけ早く進歩することを願った。そうした願望は大体のところ実現したのである。そして、実現した願望が今やわれわれに問題を与えている。
そのような状況を捉えるためには、なによりも事実を見つめなくてはならない。とくに、文明について早急な価値判断を避けて、その恩恵と共に害悪を見つめることが必要であると、私は考えた…
私はこの書物で、文明をそのようなものとして捉え、そのような文明の波が地球の上でどのような模様を作り出しているかを描こうとした。現代の世界を捉えるひとつの試みとして世に問いたいと思う>

そして塩野先生は「読者はぜひ考えてほしい」と、こう説いている。
<まず第一は、この一冊は1968年、今から五〇年以上も前に書かれたものあることを。前例のない激流の中に置かれているのは、半世紀が過ぎた現在でもいっこうに変わっていないではないか。ならば「文明の波」と言ってもよい歴史にまで視界を広げることは現代の世界を捉える試みになり得るのではないか。
またこの一冊が三十四歳によって書かれたものであることも考えてほしい。作品全体を支配するトーンは冷静でかつバランスがとれているのに、老成という感じはまったくしない。三十代だからこそ「世に問いたいと思う」なんて昂然たる口調で言えたのである。
では、高坂正堯のその後は、つまり彼はどのような形で「日本回帰」をしていったのだろう。私の見るところでは、それは日本の国政への、とくに「安全保障問題への積極的な関与」であった。首相諮問機関である「総合安全保障研究グループ」には長くかかわっていたし、ほとんど二十年以上にわたってこの問題には関係していた。私までが引っ張り出され、西欧古代のシーレーンについて話したことがある。この時期の高坂さんへの非難はすさまじく、「学者らしくない」との同僚たちからの批判に始まって「政府寄りの保守反動だ」と、彼が教えていた京都大学には「打倒 高坂」と書かれた立て看板まであったという。
しかし、政府べったりの保守反動と非難された当時の高坂さんの頭を占めていたのは、日本が再び敗戦国にならないためには何をすべきか、二度と戦争をしないためにはどうすべきか、であった。とはいえ、これを言語のみ武器に進めていくのは実に困難な作業だった。敗戦から二十年しか過ぎて居ず、未だ観念的な平和論が支配的だったあの時代、国家にとっての安全保障を現実的に論ずることすらが難事であったのだから。
それでも続けたのは当事者が若かったからだろう。書かせる側だった粕谷一希(かずき、編集者、文筆家、都市出版社長)も三十代、書く側の高坂さんも三十代だった。まわりにいた執筆陣も編集者たちも、全員が三十代だった。
その全員が高坂の言う「安全保障とは軍事に留まらず、文明にも視野を広げてこそ明確に見えてくるもの」という考えに共鳴していたのである。
五十年後の今の三十代は、この一書をどう読むだろうか、と考えてしまう>(以上)

今の30代、40代はスマホ中毒だから・・・1980~84年生まれの小生の子供3人も大卒ながら教養・学問系の本、天下国家を論じるような政治・哲学系の本などはまず読まない。考えてみれば市井の圧倒的多数の“健康”な善男善女は大昔からそういうもので、山本夏彦翁が嘆いて曰く「健康は嫌なものである」。

結局、国家は戦争と平和を永遠に繰り返すだけである。ただ、EUやNATOなど、戦争に備えて軍事力強化、同盟関係強化など安全保障に一所懸命に努める諸国は比較的長い平和を得られるのかも知れない。しかし敗戦以来「米国のオンリーさん」になった日本は80年間経っても「脳内お花畑」のままで、通常兵器も不十分、核兵器も持っていないという体たらく。今や「日本を命懸けで守る」若者は少数派で、「命懸けで日本から逃げる」のが圧倒的多数派だ。完全に米国(GHQ)に洗脳され、骨抜きになってしまった。

勇武の日本、独立した日本を取り戻すのは大変な作業だが、一歩前進、半歩後退でも地道にやっていくしかない。5年、10年、20年・・・諦めずに踏ん張っていくべし。
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*読者諸兄の皆さま、御意見を! ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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渡部亮次郎 「頂門の一針」ryochan@polka.plala.or.jp
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