実効怪しい対中経済安保

実効怪しい対中経済安保
“シーチン”修一 2.0

【雀庵の「大戦序章」175/通算606 2023(令和5)/5/13/土】「人は好き好きケナスは野暮よ、好きなお方の好きにさせ」と母は小学生の小生によく言っていた。

個人主義を良しとしているわけではなく、「ヂヂババ含めて家族7人が生活するのに精一杯、他者にかまっている暇も余裕もない、好き勝手に生きるのは勝手だが、ただし困ったからといって泣きついて来るなよ」ということのようだ。当時はまだ貧しさがあった。

母も父も大正生まれ(その両親は明治!)で「物欲」は薄かったが、「清貧」を良しとしていたわけではなく、特に敗戦後は食糧事情がギリギリだったから母は「按摩の笛でも口に入れば御の字、食べられない人もいるんだから」とよく言っていた。そういう時代。「お百姓さんが一所懸命に作った」ご飯は一粒残さず食べたものだ。

母は元々食が細い上に豚肉、牛肉を「臭い」と嫌っていたから、今で言うベジタリアン。小生は小3(1960年頃)まで肉というのは魚肉だと思っていたので、友達の家で豚肉入りのライスカレーを初めて食べてショックを受けた。

父は戦後に米軍のキャンプ座間に職を得、米軍専用食堂の残飯をせっせと家に運んだそうで、「お前はアメ公の残飯で育った」と言っていた。小生は座間から現在地に引っ越す3歳までは結構な肉食だったわけだが、記憶にはない。「ヤンキーに手を振ってギブミーチョコレッ!とおねだりするのがあなたは上手だった」と姉が言っていた。肉とチョコ・・・今でも好きだ。我らの内なる鬼畜米英!

父はキャンプ座間から帰宅する前に小田急の相武台とか登戸の安酒場で時々焼き鳥あたりをツマミに一杯やっていたよう。「登戸のおでん屋でタコの足を食ったが旨かったなあー、べらぼうに高かったのでビックリしたが・・・」と言っていた。敗戦のドサクサ紛れで朝鮮人が駅前を不法占拠していたから、ぼったくられたのだろう。そういう時代だった。

敗戦から20年、1965年頃から徐々に「飽食」の時代になっていった。それから20年の1985年あたりからはバブル経済でイケイケドンドン、♪日本のために世界はある~、仕事も遊びも絶好調、儲けて歌って恋をして・・・一種の発狂だな。バブルがはじけても1995年あたりまではそこそこ美味しかったが、以後はジェットコースターが終点、「普通の国」になったよう。

そして今、世界を見渡せば「普通の国」の維持さえ怪しくなってきた。経済交流を深めれば共産主義国とも WinWin になるはずだと、せっせと商売に励んできたノーズロの財界から「経済安全保障」という言葉が聞かれるようになった。油断していると「普通の国」の維持も怪しくなりそうだ。

「経済安全保障推進法」について経団連は、
<サプライチェーンの脆弱性やサイバー攻撃の脅威の顕在化、技術覇権競争の激化など、経済と安全保障を切り離して考えることがもはや不可能となる中、我が国では2022年5月11日に経済安全保障推進法が成立した。そこで、経済安全保障を巡る論点を俯瞰し、我が国として取り組むべき方針について議論する>
とセミナーも開いている。「日出ずる国」から「夕焼け空の国」になりかねないという危機感?

遠藤信博「経済同友会」前副代表幹事、現「経団連」副会長(日本電気特別顧問)はこう警鐘を鳴らしている。

<現在日本で一番の鍵(となる言葉)は、経済安全保障だと思う。経済安全保障の観点から、日本がいかにしっかりした高い国力を持って、グローバルに貢献していくか。第2次世界大戦前のようなブロック化が起こり得る状況の中では、サプライチェーン(供給の一連の流れ)やバリューチェーン(価値創造のための一連の流れ)にはフレキシビリティーを持たせることが重要である。

また各国が輸出規制に関する政策等を打ち出す中、当社では専門部署を設置し、経済安全保障に関する各国の状況の調査、リスクの洗い出しや全社統一的な方針の策定に取り組んでいる。

データドリブン(データ分析と行動)の価値創造の重要性がより一層高まる現在において、サイバーセキュリティーは、一企業では守り切れないため、国益の観点からコレクティブセキュリティー(集団安全保障)の考え方に立ち、日本全体で取り組む必要がある。安心して国境を越えた情報・データ交換ができる仕組みも必要だ。

加えて日本は、資源や食料の安定的な確保のため、世界に対する強いリーダーシップを持って、継続的に価値を創造する力を保つ必要がある。そのためには、イノベーションを生み出せる人を育成するための教育システムを整えていくべきだ>

氏の知行合一的かつ先験的な意見、見解、主張、危機感は「儲けてナンボ」のビジネス最優先の財界では少数派のように思えるが、双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏が2023/5/1産経で「正論:目指すは21世紀型の『富国強兵』」と声を上げたのには驚いた。主旨はこうだ。

<先月の経済同友会のテーマは「経済人として安全保障にどう向き合うか」。その場で考えたことを報告したい。

コロナ禍を乗り越える努力の次に大事なのは「安全保障」である。まずは企業が「経済インテリジェンス(情報収集・解析)」を身につけることから始めるべきだろう。国際情勢に対して自前の見識を磨かなければならない。社内にしかるべき人材を確保し、トップが自分で勉強するところから始める必要がある。「自社が取りうるリスク」「取り得ないリスク」を日頃から分析しておかなければならない。

端的に言えば「これからの中国はどうなるか」については様々な見解があり得よう。自社なりの対中観を固めた上で、企業戦略に反映していくべきである。さらにサプライチェーンの問題。普段から合理化を進め、なるべく分かりやすい状態にしておくべきではないだろうか。その方が非常時を迎えた際にも対応が容易になるはずだ。 

企業と政府との関係強化、官と(個々の事情に配慮した)民の情報共有、輸出規制(ハイテク分野などでのデカップリング、逆に外国依存を高めさせる=戦意喪失を促すための輸出攻勢)などが考えられる。米国では対中規制でそれを推進していくようだ。

規制をかけるにしてもメリハリをつけて、なおかつ企業を儲けさせる視点も必要だということ。視点を変えれば、経済安全保障は新たなビジネスチャンスにもなり得ると考えたい。

いずれにせよ、目指すべきは21世紀型の「富国強兵」である。経済と安全保障の中庸を得ることが肝要だと強調しておきたい>(以上)

最後はいささか戦意喪失の穏やかな論になったが、14億の巨大マーケットを捨てるわけにはいかない、強硬策は避けて中庸に徹し、上手くやるしかない、ということだろう。

しかし、これって「戦前の対中外交」とそっくりではないか? 日本人は甘く見られて結局、大規模な虐殺事件を招いてしまった。(詳細は櫻井よしこ先生の「中国人の邦人惨殺、通州事件を学べ」
https://yoshiko-sakurai.jp/2016/11/17/6583)

歴史のイロハを学ばない者は地図も磁石も持たずに未開地を歩くようなもの。先日は歩きスマホの男と女が転ぶのを見たが、目先の銭勘定、利益ばかりに気を取られていると痛い目に遭うのではないか。アカ頭巾に気をつけるべし。

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