経済・歴史・戦争考

経済・歴史・戦争考
“シーチン”修一 2.0

【雀庵の「大戦序章」117/通算549 2022/12/26/月】早朝、カミサンは長女と孫3人を引き連れて奄美に帰省した。小生は一人暮らし。3日間はストレスがなくていいが、2週間ほども続くとどうなるのだろう。何となく嫌な予感がする。独身とか奥さんに先立たれて独り暮らしになった男・・・若い時ならともかく老いてからはかなりの孤独感に苛まれるのではないか。

人間やサルなど群をなす動物は孤独になると早死にしそうだ。サル山のボスは地位を奪われると駆逐されるそうだが、善政をしたボスは群の中で穏やかな晩年を過ごすことができるという。ご先祖様のサルからも学ぶことは多い。古人曰く、学ばざれば昏し。

苛斂誅求の圧政はそれなりに秩序をもたらすが長続きしない。幕藩体制が揺らいできた江戸時代末期に為政者は秩序を維持するために民の監視を強め、不逞の輩を取り締まった。江戸では随分乱暴、強引な捜査、摘発をしたようだ。

湯屋で「このところ夜盗や追い剥ぎがずいぶん増えているようです、御政道はどうなっているのやら・・・まったく困ったものですなあ」と庶民がぼやいただけで、「町人の分際で身分をわきまえぬ御政道批判、不届きせんばん」としょっ引かれ、拷問にあってひどい目に遭ったとか。あな恐ろしや。先人の努力で今の日本は天国に一番近い島のような気がする。日本に生まれて良かったなあ、同志諸君。

一般に治安が怪しくなり、食糧事情も悪くなると、先々への不安から民のストレス、不満が高まり、それにつれて圧政はさらに強引になるから、庶民の反発、抗議も次第に過激になる。いわゆる「負の連鎖」。

幕末にはコメの高騰で儲ける米問屋が襲撃されたり、たとえ不作でも百姓への米での納税を厳しく強いる藩政に対する農民一揆や集団逃亡・離村が増えていく。世直しを求める「ええじゃないか」の発狂的な民衆運動(?)も起きた。「♪ヨイジャナイカ、エイジャナイカ、エイジャナカト、今年ハ世直シエエジャナイカ・・・」。大デモの迫力は凄まじかったろう。

「歴史は繰り返す」と言われる。人類は戦争→終戦→平和→不和→戦争を大昔から繰り返してきた。内政も同様で、良い国を創ろうと圧政を排除して新国家を興すのだが、志半ばにして内戦状態になって再び圧政に戻るのは日常茶飯事だ。アフリカや南米は悲しくなるほど安定とは程遠い。

何故に性懲りもなく不安定を繰り返すのか。将来の「豊かで美しく平和の国」を目指すのは理想だが、そのためには夢に向かって皆が心を一つにして、できる人もできない人も努力しなければならない。「10年20年あるいは30年とか清貧に甘んじるかも知れないが、次の世代の幸福のため皆でガンバロウ」・・・これは理想だが、現実はこうだ。

「逃げ水のような当てにならない夢よりも、実力に応じた報酬を得て今を面白おかしく暮らしたい。それを批判する人に私は問いたい、目先の利益を求めるのは罪なんですか? あなた達も他人の財布、国の福祉を当てにせず、寸暇を惜しんで勉強し、腕を磨き、良い仕事をすればどうですか。コレという能力を身につければ暮らし向きが良くなる、それなりに報われます。私達を妬んだり憎んだりしても、あなた達の暮らしは改善されません。怠惰を改め、人一倍の努力を重ねて行けば必ず道は開けます。嫉妬や憎しみからは何も生まれません」 

しかし聞く耳を持つ人はそれなりの教育を受けた人で、福翁の「学問のすゝめ」が明治の大ベストセラーになったのも、国民の多くが読み書き算盤ができたからこそである。中東やアフリカから命懸けで欧州を目指す不法移民の中には、「欧州はこの世の天国、移民したら家を持ち商売を始めたい」「生活保護で暮らしたい」と思っている人が随分多いようだ。

祖国では余程食いはぐれているか、夢を持てない人たち・・・多くは無学だろうが、カネを貯め、移民ブローカーに大金を払い、異国を目指す。まるでギャンブルのよう。日経2022/12/1「欧州で『移民危機』再燃 ウクライナ発の混乱波及」から。

<世界的な食料危機や物価高で困窮した中東やアフリカの人々が相次いで国境を越え、欧州が再び移民の大量流入に直面している。新型コロナウイルスの影響緩和もあって、欧州連合(EU)の不法越境者は前年の約1.8倍に膨らんだ。一時保護とはいえ、欧州はすでに500万人のウクライナ難民を抱え込んでおり、受け入れ負担は重い。ガス不足やインフレに加えての移民流入に欧州の冬は厳しさを増している>

物欲を捨てよ、清貧に甘んじよとは言わないが、経済がそれなりに上手くいかないと民は困窮したり将来を憂いて国を捨て、やがては亡国になる。大帝国のソ連でさえ消滅した。

哲学者アダム・スミス。経済学者として「国富論」を著し「経済学の父」と呼ばれるが、倫理学者でもあり「道徳感情論」の著作もある。哲学は「いかに生きるべきか」という人間研究の学問で、だからこそ一般的な数字分析の経済学研究がGDPや通貨相場、貿易など目先のことしか見ないのに対して、スミスの研究は本質をつき、分かりやすく、今なお新鮮だ。スミスはこんな言葉を遺している。

<我々が食事をできるのは、肉屋や酒屋やパン屋の主人が博愛心を発揮するからではなく、自分の利益を追求するからである。利己心の発揮は見えざる手を通じて社会の利益を増大させる。

最小の努力をもって最大の欲望を満たすことが人間の経済行為の基礎原理である。社会の利益を増進しようと思うなら、自分自身の利益を追求する方が遥かに有効ではないか。

最大の使用価値を持つものでも、ほとんど交換価値を持たないことも多く、反対に最高の交換価値を持つものでもほとんど使用価値のないものもある。水ほど役に立つものはないが、水では何も買えない。反対にダイヤモンドそれ自体は何の使用価値も持たないが、交換すると相当の量のものを手に入れることができる。

大財産があれば、必ず大不幸がある。ひとりの富者があるためには、五百名の貧者がなくてはならない。しかし、ひなたぼっこをしている乞食の有する安心感は、もろもろの王様が欲しても得られないものである>

識者は「資本主義市場経済は悩ましいが、今のところそれ以上の経済システムがないからしようがない」と言う。スミスもそれを問題視していた。彼の主著は実は「道徳感情論」らしい。「道徳感情論 新訳」(日経BP) の解説によるとスミスも資本主義の負の面を危惧していたようだ。

<「人間を利己的とみなすとしても、なおその生まれ持った性質の中には他の人のことを心に懸けずにはいられない何らかの働きがあり、他人の幸福を目にする快さ以外に何も得るものがなくとも、その人たちの幸福を自分にとってなくてはならないと感じさせる」

スミスといえば、利己心が市場経済を動かすという『国富論』の記述が有名だが、それに先立つ主著『道徳感情論』では、他者への「共感」が人間行動の根底に置かれる。本書序文を書いているノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センは、こう述べている。

「スミスは、広くは経済のシステム、狭くは市場の機能が利己心以外の動機にいかに大きく依存するかを論じている・・・スミスは『思慮』を『自分にとって最も役立つ徳』とみなす一方で、『他人にとってたいへん有用なのは、慈悲、正義、寛容、公共心といった資質』だと述べている。これら二点をはっきりと主張しているにもかかわらず、残念ながら現代の経済学の大半は、スミスの解釈においてどちらも正しく理解していない」

新しい資本主義を考える際の必読書といえる>

思慮、慈悲、正義、寛容、公共心・・・それはあった方がいいが、神ならぬ人はそれぞれの解釈、価値観、思想、生き方があるからなかなか難しい。1930年前後の世界不況を経て主要国は第2次世界大戦に突入したが、唯一の戦勝国である米国以外はほとんどが「国破れて山河在り」、日本同様に都市住民は食うにも困る有様だった。

廃墟の跡から立ち上がった戦後の資本主義は、自由民主主義経済と平等共産主義的な「福祉政策」のイイトコ取りが主流になった。1945年に国際通貨基金と国際復興開発銀行総裁に就任したケインズの経済学が一気に普及したことが大きいだろう。

<ケインズの経済学は、自由放任の経済にかわって、政府の経済への積極的介入を支持し、修正資本主義の理論的根拠を与えるとともに、租税による所得平等化政策と完全雇用政策は、福祉国家を指向するものでもあった>(日本大百科全書)

この「ケインズ革命」は戦後から80年近く経った今は「バラマキ福祉」などと批判される面もあり、「ハングリー精神」や「上昇志向」、「モーレツ社員」や「石の上にも3年」といった「努力したものが報われる」という言葉までが非難されるようになってしまった。

国家、国民の野武士的なパワーが衰え、軟弱なお坊ちゃま、お嬢さまや、汗水流すことを嫌う頭デッカチ、親の財産を食いつぶす無為徒食の輩(俺もそうか?)などなど、「人間劣化」のような問題は山積している。

企業間競争が熾烈な資本主義国はまだマシかも知れないが、プーチン、習近平などのトンデモ独裁共産主義国家は「座していれば経済は後退する、やがては人民の反発により亡国になりかねない」と危惧しているに違いない。彼らの思考には「資本主義導入・拡大」はない。それは民主主義を伴うもので、それをすれば独裁体制が崩壊するからだ。

崖っぷちの危機にある独裁者の常套手段は、人民の反政府ベクトルを外戦に向けることである。「領土領海を拡大すべし」。プーチンがウクライナ侵略に成功すれば習近平もそれに続いてアジア侵略を開始する。これは間違いない。

西側諸国がウクライナ支援とロシア制裁をし続ければ、ロシア国民はやがてはウクライナからの軍の撤収を求めるようになるかも知れない。しかし、それはプーチンの自滅であり、プーチンは絶対に引かない。と、なればロシア軍による軍事クーデターでプーチンを処刑するしかないのではないか。ルーマニア軍が独裁者チャウシェスクを処刑したように。

プーチンを排除すれば、習近平も「秋(とき)は今にあらず」とアジア侵略を先延ばするだろうが、戦勝経験のない、経済も弱体化させ、息苦しいほど人民を抑圧する独裁者に、人民はもとより共産党内外から批判の声が顕在化するのではないか。コロナ対策で大失敗し、経済も下り坂、足元が怪しくなった習近平は、人民が望んでもいないし緊急性の全くない台湾・日本・アジア侵略に踏み切れるのか・・・人民は一時的には高揚するかも知れないが、さらなる経済制裁を受ければ幻滅し、結局は亡国の危機を招き寄せるようなものだろう。

プーチン&習近平の21世紀版ダーティーペア・・・我々はその末路を見ることになるだろう。我らが勝てば立派、勝てないまでも負けなければ御の字、「日本騎兵の父」と言われる秋山好古(陸軍大将)曰く「苦しくても引かないで踏ん張る」。李登輝曰く「武士道は日本人にとって最高の道徳」。我らの曽祖父、祖父、父が死にもの狂いで戦ったから今がある、我らも後に続くべし。
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