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「日本は優しくすることがむずかしい国になった」

私はフランスへ語学留学に来ている21歳の女子大学生です。残り1ヶ月で帰国します。今日は出先で列車に乗っていますが、熱い想い今が私の胸にあり、誰かにどうしても伝えたくてこの文章を書きました。

フランスで半年を過ごして感じてきたことが、今やっと言葉にできた気がします。
日本は、ひとに優しくすることが難しい気がします。

フランスでは、人にやさしくすることがほんとうに、ほんとうにとても簡単です。どう簡単なのかというと、誰にでも、惜しみなく、優しくすればいいだけなのです。それが鬱陶しがられることも、それで自分がにが湯を飲まされることもないのだと思います。優しい人が損をする社会では絶対にないということです。

日本人は、知らない間に、優しい人が損をする社会になっていった気がします。無機質な人、人に依存しない、人に興味がない人ほどカッコ良いような、泥臭い人は嫌われおせっかいは鬱陶しいとされ、人間らしい人はメンヘラという言葉で括られます。自分自身の周りの人たちのことを考えるよりも自分の体型や次に買う物のことで頭がいっぱいで、誰かを抱きしめたり、たくさんおしゃべりをしたり、それぞれが自身の考えや信念を共有したり、歌を歌ってお酒を飲んだり、3時のおやつを食べたり、料理をしたり、映画を見たりする時間を、日本人はInstagramで自分の顔を加工したりゲームのHPを上げることに使っていて、「映える生活」を送ることが人生の目標になっています。
「人にどう思われるかではなく自分の生きたいように生きよう」などと多様性を意識した広告を近頃はよく目にしますが、その意味を、みんなどんな風に捉えているのでしょうか。

つまり、人にどう見られるかで優しくするのではなく、誰かのために優しくするべきなのです。
自分が「優しい人」でありたいから優しくするのではなく、誰かを助けたいから、誰かの小さな辛い気持ちでも取り除きたいから優しいするべきなのです。
私は、スマホに睨めっこなことが悪いと言いたいのではありません。私が言いたいのは、もっと人らしく多くの感情を持って、人らしいカッコ悪さで、もっと情に厚く、愛情深く多くのことに取り組まなければならないと思うのです。
それは周りの人、家族や友人という心理的に近い人たちとそして日々生活する中で近くに座っている名前も知らないような物理的に近い人たちにもそしてもちろん自分自身にもです。

正直わたしも日本にいて大学生をしていた頃、しょうもない学生でした。人と食べるご飯よりも、よりカロリーの低いコンビニのご飯を食べて、「かわいい」と言われるためだけに多くの時間を日々使っていましたし、感謝の言葉をくちにしながら、人に優しく声をかけながら、それはそういう自分が好きで周りから素敵な人だと思われるための優しさだったと今改めて思います。ほんとうにしょうもなかった。正直な気持ちや本当の等身大の自分を盛って、誰かに評価されることを夢見て、周りの人へはほんとうに優しくなかった。

今こそ生き方の襟を正そうと思います。こんな機会なかなか無いと思うから。人の優しさや親切心は、決して無下にしてはいけない。誰に対しても常に敬意を持って接さなければいけない。決して見下したり、媚びてはいけない。誰かが悲しい思いをするような選択をしてはいけない。
こういったことが当たり前にできないなら、意識してやるしか無いんです。毎日これらができているか確認しながら、生きていかないといけません。私は気づくことができて、本当に本当に良かった。



日本は人に優しくするのが難しいと言いました。フランス人はみんなとても優しい。個人主義のフランス人は、確かにみんな自分勝手だったりマイペースだったりする部分があります。でも、何に対しても本当に多くの愛を持って接しています。人にも事にもです。「愛の国フランス」とよく言いますが、私が実際に肌で感じた「愛」とは、こと恋愛に関しての「愛」だけではありませんでした。


日本人は、良く見られようと人より優位になろうとすることをやめるべきです。人には上も下もないという事と、生きることが「ただ生活をすること」であるという事、誰かに優しくするということが自分を評価してもらうをための手段ではない事を、家庭や学校で、大人は子供達に伝えるべきです。


私はもうすぐ誕生日が来て22歳になります。もうとても大人です。親や周りの人たちの影響で作られた私のアイディンティ以外にこれからどんどん私自身が作っていくアイディンティが加わり混ざっていくでしょう。それに対して適当に向き合ってはいけないと思いました。自分が自分を作ることにもっと自覚と覚悟を持って臨まなければならないと思いました。

私は元々人に対してそこまで優しくもなく、自分勝手な性格です。もし心の正しさで裁かれる世界なら、私の性格の悪さや小狡さは割と犯罪級です。そんな私もここまで書いてきた「大切なこと」たちをこぼさないように、がんばって、これからの人生を生きることを誓います。

日本は人に優しくすることが難しい国ではありません。日本は優しい心を持った人がたくさんいて、争いごとが嫌いな穏やかな民族です。ただ、それゆえに心が繊細で自分を守ることが必要になります。私の想像ですが、以前の日本はきっともっと人に優しくすることが簡単な世の中だったと思います。戻れるはずです。日本が今よりももっと誰かに優しくしやすい国になりますように。

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