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履歴書に書けない経歴がある人

前回の続きです。

今回はセンシティブな内容を含みますので、不快な気分になってしまう恐れのある方はここから先は読まれないことをお勧めします。


面接に来た女性に対して、課長も隊長もどこか不審の念を持っている様子でした。

高校中退というのがよろしくないのか?と思いましたが、問題はそこではないようです。(実際そこの会社では高校中退の隊員もいましたから)

「高校を中退してから25歳まで空白期間があるんだよね…」

「ニート、ですかね」

「うーん…」

やっぱりニートだと採用に二の足を踏んでしまうのは仕方ないと思います。
警備会社とはいえ、それなりの年齢でまともな社会人経験がない人はやっぱり、採用されづらいと思います。

就職氷河期世代で、就労の意思はあるのに正社員で雇用して貰えず、仕方なしに非正規雇用(契約社員や派遣社員、フリーター)のまま年齢を重ねてしまった人などは、就職経験なし(正社員経験なしという意味で)でも積極採用をする警備会社は多い事は多いのですが…

「ニートでもそれはそれで問題はあるんだけど、まぁまだ年齢的にどうにかなる年齢だから、そこまで深刻な問題じゃあないんだけどね。まぁ〜、さすがに30代後半以降で職歴なしのニートとかは厳しいと思うけど、そうではないからねぇ」

なんだか奥歯にものが挟まったような言い方だなぁ

「ぶっちゃけ言うけどね、25歳まで履歴書に空白期間があるんだよね。結婚してて専業主婦だった、とかなら別にいいんだけどさ、結婚してないって言ってたからねぇ。そんで、25歳以降に今の会社で働いてるらしいんだけど、なんかその会社が、ねぇ…」

なんか問題のある会社なんだろうか?

「まぁ、調査をしたらすぐにわかる事だと思うんだけど、多分、存在しない会社だと思うよ」

…なるほど。
いわゆる「アリバイ会社」とか「偽装会社」ってやつか。

「その会社では正社員だと彼女は言ってるけど、面接していてなんだか話が噛み合わないというか、本当に社会人なのか?って思うような発言も多かったしなぁ。現在の仕事での所属部署や業務内容などを聞いてもトンチンカンな事しか言わないしねぇ〜…」

何でも、転職の際には雇用保険被保険者証が必要だという話になった時に

「雇用保険って何でしょう?今の会社にそういうのはありません」

という返答だったそうで、課長と隊長は「へっ?!」となったらしいです(正社員なのに雇用保険に入れないとは???)

その他にも「へっ?!」となるような返答が多く、年金手帳がないとか、保険証を持ってないとか…本当に社会人なのか?と思ったらしいです。

カタギの人ではない、というのは間違いなさそうでした。だからアリバイ会社を使って虚偽の経歴をでっち上げているのではないかという疑いが持たれています。

「ははぁ、なるほど。アリバイ会社だとしたら、もしかしてそっち系のお仕事をされてる人とかなんですかね」

「その可能性大だね。だとしたらウチではちょっと雇えないね。アリバイ会社を履歴書に書くのは重大な経歴詐称になるから、まずそこでアウトだし。だからって正直に本当の仕事を言われてもそれはそれで反社チェックにも引っかかる可能性もあるしねぇ」

まぁ、真っ当に生きていたらアリバイ会社なんてものを利用する機会はないと思いますし、そもそも真っ当な人生を送っている人の大半は「アリバイ会社」なんてものの存在すら知らないという人の方が多いのではと思います。

…そうです。

おそらく彼女は、世間様に公にできない職業に従事している人なのではと思います。


いわゆる夜の商売で、大人向けのサービスをする系の仕事をしているのではないかという話になりました。

っていうか、現役の風俗嬢の可能性が濃厚です。

そう思ったら面接の時になんだかソワソワしてキョロキョロと落ち着きがなかったのも納得します。

しかしながら、そうなると採用はちょっと難しくなると思います。会社としては、そういう仕事をしている人=反社会的勢力と関わりのある人、と判断してしまうケースも少なくないと思います。

その業界の人々からは「風俗だからって差別するな!今はクリーンな営業をしている!」と反論されるかもしれませんが、残念ながら一般社会ではそういう業種はクリーンであるとは認識されないと思います。

それについて詳しく書くと長くなってしまうので割愛しますが、社会通念上、業務の内容がそれだけでもう、クリーンとは対極の位置付けにあるとみなされます。

なので一般社会的には完全にアウトなんです。

だからアリバイ会社というのを立てるんだと思います。

本当にクリーンな仕事なら、堂々と所属している店の名前も仕事の内容も履歴書に書けると思いますし

何より、本名で仕事ができない時点で、クリーンな仕事ではないと思います。

偽名で仕事をするのは、後ろ暗いところがあるからこそなんだろう、と思われるのではと。

そして最近は暴力団が直接風俗店と関わる事は少なくなったとはいえ、完全に関わりがゼロとも言い切れないそうで、暴力団のフロント企業であるケースも割と多く、あるいは暴力団は関わっていなくても半グレが経営していたりという場合もありますので、警備業法的にはアウトな商売とみなされます。

警備業法的にアウトな業種に従事している人(していた人)を雇用することで会社自体が警備業法に抵触してしまう可能性も全くないとは言い切れません。

会社としてはそんなリスクを冒してまで怪しい人を採用するよりは、未然にブロックする方が無難だと判断すると思います。

また、それだけではありません。

性風俗店やそれに類した職業(いわゆる他人の性的興奮を煽る仕事全般)は公衆道徳上有害業務に該当しますので、そういう仕事をしている(いた)事が判明した場合、警備会社によっては採用に難色を示す場合があると思います。

多分、本人の口から正直に

「風俗嬢やってます」

とはならないでしょうが、怪しさ全開なのと、調査をした結果、彼女の履歴書に書かれていた会社は偽装会社である事が判明しましたので、採用見送りとする事に決めたようです。

もちろん、「あなた夜の商売人なんでしょう?」なんて事は言わずに(いう訳がない)

「選考の結果、今回は採用を見合わせて頂く事となりました」

と書面で通知を送ったそうです。

その後、彼女からの連絡は特にありませんでした。


その後も彼女のような女性からの応募は度々ありましたが、そういった女性達が採用される事はありませんでした。

そこの会社は小さい警備会社ですが、採用に関しては結構厳しい方だと思いました。

でも、働く方からしてみたら、その方が助かる場合もありますね。

ヤバい人を簡単に雇って、後から重大な警備事故やら問題行動を起こされて、それで会社が行政処分なんかを喰らったりでもしたら、ダイレクトに僕らの収入に響いてきますので…

とはいえ

僕個人の意見としては、過去にそういう、社会通念上「いかがわしい」とされる商売をしていたとしても、現在はそういう事に従事していない、心も入れ替えて新たに頑張ろう、という気持ちがあるならそこまで厳しくしなくてもなぁ、とも思うのですが、やっぱり世間の目はそう甘くはないんだなと痛感します。

とりあえず、そういうお仕事から足を洗ってカタギの仕事を始めようと思う人に対して、警備会社はあまり優しくはなさそうです。

会社によっては寛容な所もあると思います。警備会社は星の数だけありますから、気長に探してみてはと思います。





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