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警備員?守衛?

警備員と守衛、両者はよく混同されがちです。

僕らは警備員ですが、配属先の従業員たちの中には、僕らの事を
「ちょっと〜守衛さん!」
と呼ばれる方も時々いらっしゃいます。

…守衛ではなく警備員なんです、とわざわざ訂正する事はありませんが。

でも僕らは守衛ではありません。

それは、配属先の企業に雇用されている社員ではなく
警備会社に雇用され、警備会社の指示に従ってこの配属先に派遣されている、警備会社の社員なんです。

警備員と守衛、どちらも業務はほぼ同じです。
いずれも、勤務先の施設の保安…防犯・防災業務であることに変わりはありません。

ですが、最大の違いは
「雇用主がどこであるか」
なんです。

まず、守衛ですが
守衛はそこの施設に直接雇用されている、そこの企業の従業員です。
ですので、就業規則や業務に関する規程はそこの施設(企業)に従って執り行うものとされています。
自社雇用で自社の為だけに保安警備業務を行う事になりますので、警備業には当たりません。
従って、業務にあたって警備業法の制約を受ける事はありません。

一方で警備員は、警備会社に雇用されている社員で、業務の依頼を受けた警備会社からの命令で依頼主の施設(現場)に派遣されているので、業務委託という事になります。
警備会社の社員はそこの施設の従業員ではないので、依頼主の企業の就業規則を警備員に押しつける事はできません。
依頼主側がもしも警備員に自社の規程を遵守して欲しい場合は、依頼主側から警備会社にその申し入れをして、企業間での協議の上で決めなければなりません。

例えば、警備員の制服ですが、これも警備業法で厳格に決められており、各都道府県公安委員会に届け出をした制服を、規定通りに正しく着用する義務が警備員にはあります。
例えば、寒いからといって勝手に制服の下に私服のセーターを着たりなどをする事は、警備業法違反となります。
ですので、依頼主の企業が
「うちの警備をするにあたってこんな制服を着て業務に就いて欲しい」とか
「私服で勤務して欲しい」
などという要望は出せません。
というか、警備会社の方からお断りされると思います。
警備業法に違反するので、行政処分のリスクを冒してまでそんな事をする警備会社はないと思います。
警備員の制服は警備業法に則って非常に厳格な体制のもと、着用と管理が徹底されています。
僕の会社では、常駐先のロッカーに鍵をかけて厳重に保管するようになっています。
原則、持ち出し禁止になっています。
ズボンだけとかでも、制服を着用しての通勤は禁止されていまして、これを破った場合は懲戒処分になります。
洗濯や他の現場に応援に行く時など、制服を持ち出す必要がある場合には、制服持ち出し届け出を提出して、班長以上の役職者の承認印がないと、持ち出せません。
その際も会社から貸与されている制服携行用カバンに入れて持ち運びするんですが、カバンに入れる時も班長以上の役職者立会いのもと、どれを何点持ち出すかのチェックを付けて、持ち出し届け出の控えも一緒にカバンに入れてカバンを閉じてから、インシュロックタイ(コードを束ねるやつみたいなもの)で封をします。
応援の現場で開封する際にも、そこの隊の班長以上の役職者立会いのもと、不足がないかをチェックしてから、着替える事になります。
洗濯の場合は、インシュロックタイの予備を持ち帰り、洗った制服を入れてまた現場に持ち帰り、開封の際には班長以上の役職者立会いのもと、チェックを受けてからロッカーに持って行きます。

制服ひとつを持ち出すのもかなり面倒なんです。


万が一、紛失や盗難という事になったら営業所がある地域の所轄の警察署に届け出をしないといけなくなりますし
紛失した場合には懲戒処分にもなります。

ですが、守衛はその制約がありませんので、雇用主が制服を定めなければ、基本的に就業規則の範囲内で服装は自由です。
制服を定める場合でも、守衛には警備業法の制約はありませんので、自由なデザインの制服を制定する事ができます。
もちろん、紛失や盗難には気をつけないといけないのは言うまでもありません。

制服の他に装備品がありますが、これに関しても警備員は予め公安委員会に届け出をした護身具しか携行できませんが
守衛はこの制約を受けないので、法律違反になるようなものでなければ、どの護身具を装備するかを会社が決められます。
もちろん警備業者ではありませんので、届け出の必要もありません。

また、警備員になる為には絶対に避けて通れない「欠格事由」ですが、
警備業法上の欠格事由に該当する人を警備会社は警備員として雇用してはならないと法律で定められていますが、守衛にはその制約もありません。

やっている仕事は同じでもここまで違う、「警備員」と「守衛」

最近では大企業のオフィスビルなどでは、警備会社に業務委託をするよりも、自社で保安業務を行う社員…つまり守衛を直接雇用する傾向が高まって来ているようです。

有名なところでは、Google社やApple社が警備会社との契約をやめて、警備会社から派遣されてきていた警備員達を自社で直接雇用する事で、自社の生産性が上がり、
警備員側も警備会社から搾取される事がなくなり、雇用主の企業と同じ高待遇で働けるようになってよりクオリティの高い仕事ができるようになったそうです。

日本でも今後このように変わっていくのかもしれませんね。

現に、一部の大企業では、警備会社との契約をやめて自社雇用の守衛に切り替えている企業もあります。
こういった動きは増えつつあるようです。

大企業の場合はその方がメリットが大きいのかもしれませんね。


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