ぼくらが望む人材は他社も望む人材
何人も面接をして
「この人は是非とも弊社に!」
と思える人は少ないものです。
人を雇用するのは簡単な事ではないんです、正社員となると尚更。
自社の将来と雇用された人の将来も掛かっているわけですから、責任重大なんです。
ひとの人生に大きく関わらなければいけない仕事は思いの外プレッシャーも大きくて、時々潰れそうになる時もありますが、その分やりがいもあるとぼくは思っています。
40代 男性 契約社員
学校卒業後は不本意非正規雇用で期間工に従事(通算約10年)
失業中にハローワークの職業訓練を受け、MOS資格を取得
資格取得後に派遣社員(通算5年)
・総合病院での救命事務(救急窓口での医療事務)
・交通系業界での会計事務(派遣社員から直雇用の契約社員に切替)
契約社員としては勤続4年半
いわゆる「大量派遣切り」「派遣村」のあの時代を経験した方です。
正社員歴はありませんが、前向きにコツコツと努力をして少しずつキャリアを構築している様子が応募書類からも伺えましたので、是非とも面接をと思いました。
見た目の印象もきちんとしていて清潔感もありましたし
普通にスーツも着慣れているごく普通の社会人という見た目ですが、これで充分です。
どこにでもいるビジネスパーソンで清潔感があって、一般常識も普通にあるんですから、上出来です。
男女問わず、ちょっと変わってる人を多く見過ぎたせいか、ごく普通の会社員という雰囲気の人を見ると妙に安心します。
朴訥とした感じですが、受け答えの時にひとつひとつしっかりとよく考えながら話す姿勢に好感が持てました。
ぼくと同じ氷河期世代で
大学を卒業したのはいいけど就職先がなく、不本意な人生を送ってきて
しかもあの、年越し派遣村も経験していますからね。
突然寮から追い出されて、仕事もすぐに見つからないという完全に八方塞がりの絶望的状況からここまで地道な努力を続けて来た実績は、高く評価されて良いと思います。
特に派遣社員から直雇用となった経歴から推測しますと、それだけ派遣先企業から信頼されている人だと感じました。
スキルチェック、ビジネスマナーチェックテストも問題なく合格ですし、是非ともうちに来て頂きたいと思いました。
ですが彼も、他社様に行かれるとのことで辞退という運びに(泣)
ですがその際も誠実な対応をして頂きましたので
彼の今後の活躍を心よりお祈りしたいと思います。
やはり良い人材は争奪戦になってしまいますね。
「や、今回も残念だったな。あの子もいい子だったし欲しかったよな、まあでもそんなに悩むな」
はぁ…課長はなんでそんなに落ち着いていられるんだ。
「トラ夫、これは宝探しゲームと思えよ(笑)」
宝探しゲーム?!
「そうだ。なぜウチが40〜50代を積極的に面接してるかわかるか?」
うーん、そう言われればなぜだろう。
「単純に考えてみろ。40歳を過ぎた氷河期世代の求職者はどこの会社からも敬遠されがちだからだよ。
多くの企業は若い世代ばかり取りたがるだろ?
そんな企業が見向きもしたがらない世代だからこそ、まだ手付かずでどこかに埋もれているお宝人材を発掘できる可能性があるんだよ」
なるほど。言われてみれば確かに。
不本意非正規雇用の結果、キャリアやスキルを身につけられずに40歳を超えてしまった氷河期世代はものすごく多いです。
しかしその中にはどうにかして諦めずに自分の人生を切り開こうとして力を蓄えている人達もいる。
そういう人を探すのが【宝探し】なのか。
「そうだな。幸い現時点では新卒至上主義文化から脱却できずに「長期キャリア形成の為35歳までとする」なんつー大義名分を掲げて若手獲得に拘る企業が多数派だ。
でもうちは敢えて若手に拘らない。だから他の企業よりも有利なフィールドで採用活動をしてると思えばいいんだよ」
まあ確かにそういう理由で氷河期世代をシャットアウトしている企業は多いですね。
「だけど勘違いはするな。氷河期世代だったらなんでも来いてなワケじゃあないんだ。
氷河期世代のとんでもない奴はトコトンとんでもなくて、人間的にもかなりヤバい。だからそういう人間は要らないし、むしろそんなのを入れたら会社をめちゃくちゃにされかねない。
それはもう今まで何人か面接しておまえも実際に見てるからわかると思うけどな、そういう輩を見抜く眼を養え。
履歴書や経歴に書いてある事柄だけで機械的に判断するな。人を見ろ」
そうですね。
誰も見向きもしない世代だからこそ、宝が隠れているのかもしれません。