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otatakahiko
だんだん高くなるドライブ②【毎週ショートショートnote】
自転車を漕いでいても、気づかないほど僅かな傾斜。
地元商店街から事務所への道のりは、緩やかな上り坂だ。そこを走る車の後部座席で、私は酷く緊張している。タクシーのメーターに表示される金額が、どんどん上がっているからだ。
そんな私を見かねて、隣に座る加藤さんが声を掛けてくれる。
「そんなに不安がらなくても大丈夫ですよ。タクシー代は、全て僕がお支払いしますから」
さびれた商店街について、相談したい。
アプリで見つけたコンサルタント会社に連絡してみたのだ。すると、私が学生であるにも関わらずに、話を聞いてくれるという。商店街にある小さな公園での待ち合わせた後、事務所に場所を移すことになった。
「申し訳ありません、運転できる者が本日は不在でして」
緊張したままの私を見て、困ったように目線を下に向けた。
「免許の取得には、何度も挑戦しているのですが、なかなか受からないんです…」
二十代後半くらいの、利発で穏やかそうな男性の意外な一面だった。
(410字)
たらはかに(田原にか)さまの企画への参加作品です。
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