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アルプス笑点かい?【毎週ショートショートnote裏お題】
「アルプス笑点かい?」
そう毒づくと、お爺は持っていた紙をクシャッと握りつぶす。その後、畳の上に無造作に放り出された紙。それを拾い上げて伸ばしてみると、ヘルプ商店街という人材派遣サービスのチラシだった。文章に目を通すと、情報技術庁と大手企業が提携した事業とある。
お爺が営んでいた喫茶店はシャッター商店街の中ほどにあり、ちょうど先月、資金繰りに限界がきて閉店したところだ。もう十年以上前から厳しい経営だったらしい。
「この商店街は政府に見捨てられたんだ」
と愚痴をよく聞かされた。地方都市で、おまけに10㎞先に大型ショッピングモールもできてしまった。これでは昔ながらの商店街など、ひとたまりもない。
ただ、商店街を見捨てたのは政府ではなく、一人一人のお客さんたちなのだと私は思う。
「ところで何なの?そのアルプス笑点って」
「ふざけたことを言った分だけ、真冬のアルプス山脈を登るんだよ」
そう答えたお爺に、私は一枚の座布団を差し出した。
(410字)
たらはかに(田原にか)さまの企画に参加させていただきました。
本作は、以下の作品の続きです。
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