#6世の中?だらけ
天然由来の素材だから肌によい?🌱
百貨店の化粧品売り場での出来事。
『新商品です。お試しになりませんか?』
と声をかけられた。私は少し肌が敏感で、以前そのメーカーの商品を使って肌が荒れてしまったことが何度かあったので、
『ごめんなさい、私、⚪︎⚪︎の商品を使って荒れてしまったことがあって。私には少し強いみたいなんでやめておきます。」
と伝えると、
『いえ、この商品は天然由来の成分でできているので、お肌に優しいですから、ぜひ試してください!』
と、ぐいぐい来ます。
(いやいやいや。肌に優しいか否かは、天然由来かそうでないかではないよ!その化合物自体が、その人に合うかどうかじゃん!私は合わなさそうだからやめておくって言ってるんだよ。)
と心の中で思いながら、
『本当に結構です。』
とお断りしました。
どうも、合成したものは体に悪くて、天然由来はいいものという流れが世の中にありますよね。天然由来とか植物由来とか、そういった言葉をウリにする商品が結構あります。でも、フグ毒(テトロドトキシン)も、トリカブト(アコニチンなどのアルカロイド)も天然物ですが、全く体に良くないです。漆だってかぶれますよねぇ。それはみんなわかってるはずなのに、なぜ、天然物なら良いと思うのでしょうか。
中学生の我が子に聞いてみたら、
「合成ということがまずわからないから、いいのか悪いのかもわかんない。天然からとってきたというのは、なんだか、自然から良いものをとってきたみたいな特別感や新鮮な感じがする。」
と。なるほどね。(本人には、これから真実を習うはずだから、また数年後に聞くね!)と言いました。)
以前生徒に聞いた時は、
「合成って聞くと、薬害のイメージがある。」
なんていう意見もありました。
確かに、薬害のニュースを耳にしたりすると、そういう印象を持つかもしれないですね。
でも、だから天然の方がいいというのは大間違えです。
例えば、ビタミンCであるアスコルビン酸。レモンから分離精製したアスコルビン酸も、誰かが合成したアスコルビン酸も、100%純物質なら全く同じもので、全く同じ効能です。
ただ、100%というのは難しく、わずかながらに混ざっているものがあるとした時、それが何かによって両者は違うものになります。じゃあどっちがいいのかというと、それは合成か天然かではなく、何が混ざっているかです。混ざっているののが、毒物なら、それが合成品でも天然由来でも、摂取してはいけません!
天然が良いのだとしたら、例えば、「レモンを食べたらビタミンCの他にカルシウムや鉄分が一緒に摂れる。」といった、感じでしょうか。つまり、わざわざビタミンCのサプリを買ってこなくても、レモンを食べれば欲しい成分がいくつか同時に摂れるよということですね。
あと、人種によっても、効能は違いますので、他の国で良いものと売られていても、わたしたちに良いものとは限りません。(逆も然り)
高校生の化学基礎の初めに、『純物質と混合物』を習った時に、一度考えてみてほしい内容です。
市販のシャンプーには硫酸が入ってる?☠️
ある美容院での出来事。
『市販のシャンプーはあまりよくないんです。』
という美容師さんに理由を尋ねたところ、
『市販のシャンプーには硫酸が入っているんです!』
というんです。
「・・・・・・・」
(そもそも硫酸が入っていたら、頭溶けるけど。。。)
と思いながら、その美容室には2度と行きませんでした。
どういうことだったのか、、、後々考えてみたところ、おそらく
「ラウリル硫酸ナトリウム」などの合成洗剤のこと言いたかったのだろうと思いました。
確かに、ラウリル硫酸ナトリウムなどの成分は、頭皮には刺激が強く良くないそうです。
皮脂を落としすぎてしまって、乾燥してかゆみが出たりする。
つまり、シャンプーとしては汚れを落としすぎてしまう、有能な合成洗剤だ!ということです。
そもそも、硫酸と硫酸塩では大きな違いがあります。
硫酸は強酸、硫酸塩(ナトリウム塩やカリウム塩)は中性です。
(この辺りのことは、化学基礎の「酸塩基」で学習します。文系も!)
でも、こんなふうに言われたら、ドキッとして、市販のシャンプーを捨ててしまう人もいるかもしれませんね。合わないならともかく、問題ないなら使っていてもいいんですけどね。
美容師さんは、薬品を扱うことから、専門学校でも化学を少し学習すると聞いています。
先の美容師さんも、もう少しでいいから正確な理解に努めてもらい、難しい表現をしなくて良いので、簡単な言葉でわかりやすく、誤った印象を与えるようなことをしないようになってほしいなぁ。と切に思います。
CMでの謳い文句🐣🍌
色々なCMやスーパーを見ていると、とても悲しくなる時があります。
昔なら、コラーゲンがよいと言ってコラーゲン鍋が流行り、スーパーの鍋つゆコーナーがコラーゲン鍋一色になったことがありました。朝バナナがいいとテレビで誰かが言えば、次の日バナナが売り切れたり。子どもおが小さかったときで、純粋にバナナが食べたいと言われたのに、売っていなくて困りました。
他にも、酸素で酸化されるから老化する、じゃあ体の中から酸化されたものを還元しようと水素水がバカ売れしたり。
最近でも、渡り鳥の持続力を謳い文句にした商品や、ひよこの毛がフサフサということをウリにした育毛剤とかのCMをしょっちゅう耳にしたり。
確かに、コラーゲンは大事だし、体にとって必要なもの(多細胞生物の骨格形成に必須)だけど、食べたら食べただけコラーゲンが体内にできるわけでもないし、お肌に塗れば塗っただけシワがなくなるわけでもありません。コラーゲンは水分を多く含むので、お肌はしっとりしますけどね。要は水分補給。そもそも、コラーゲンはタンパク質だから、口から摂取しても、体内に入る頃には消化(分解して)されてアミノ酸やペプチドになっている。それらをコラーゲンに再合成する機能が衰えていたら、摂取したほどの期待値は得られません。
水素水って、、、、どんだけ水素が溶けてるの?と疑問になりませんか?そもそも、水素は水に溶けにくいので、無理やり水素ガスで圧をかければある程度水に溶かすことはできますけど、栓を抜いた瞬間、圧をかけるために入れていた水素ガスは出ていってしまい、溶けていた水素ガスも出ていくんです(ヘンリーの法則ですね!)。
そして何より、水素を口から摂取して、どこまでの効能がでるのか、エビデンスが乏しい。
まあでも、この辺りは、化学を知らないとわからないかもしれません。(だからサイエンスリテラシーはある程度必要だと思います。)
でも、渡り鳥とかひよこって。。。これはかなりひどい謳い文句に感じます。
だって、そもそも私たちは鳥ではないですよ。人種によっても効き目は違うのに、そもそも種が違う。。。ヒトに対するデータ的裏付けまで言えば良いのですが、どうも鳥のイメージばかりが印象として残る。
ひよこは生まれた時から毛がフサフサ、と言ってサプリを飲んだら、全身毛むくじゃらになるかもしれないじゃん!とは思わないのでしょうか。なんで頭皮にだけ成分がはたらくと思うのでしょうか。
これらの成分が効かないよ。と言いたいわけではありません。エビデンスがズレていると言いたいのです。
でもそんなCMがあるということは、そんなCMで商品を買う人がたくさんいるということです。そうみくびられているんだなぁと悲しくなります。
サイエンスリテラシー🧪
理科を学習することの一番大きな意味は、サイエンスリテラシーを高めることだと思っています。
これまでに色々例を上げてきましたが、別に、これらを信じて商品を使ってみること自体問題はないんです。効けばラッキー、効かなければそんなもんです。
ただ、例えば、使用してみて合わないと思った時に、謳い文句を信じすぎていると、大きな事故につながる、ヘタをすると命の危険に晒される、ということをしっかり理解してほしいのです。なんか変だなと思ったら、使用をやめて、病院に行くとかしてほしい。天然だからいいはずなのに、、、と使い続けないでほしい。
世の中全て化学物質です。ヒトによって良くも悪くも効き方には差があります。天然だから良く合成だから悪いわけではない。ひよこの毛がフサフサだから、髪の毛がフサフサになるわけではない。その人に効くから良いもので、効かなければそれまで、悪い方に効く場合だってあるんです。
そんな当たり前のことは、中学・高校で理系文系問わず全員が学習しているはずなんです。
でも、先の化粧品販売員や美容師さんのような人が出てしまう、被害に会う人が出てしまうということは、わたしたち理科教員にも責任があると思います。
モル計算ができなくたっていい。難しい問題が解けても、こう言ったことがわからないのでは意味がない。
自分の身を自分で守るための知識・理解の向上こそが、全員に必要な教育だと思います。
そう言った発信を今後も続けていかなくては!と意識しながら、日々教壇に立とうと思います。
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