医師になってから苦労したこと~精神科医編~
こんにちは。精神科女医のyumeです。
前回までは、研修医時代のエピソードについて書いてみました。
今回は、精神科医になってから苦労したことについて書いていきたいと思います。
※この記事は、精神科医を目指す学生、医学部生、研修医、若手精神科医向けに、精神科医の働き方の一例をお伝えする目的で書いています。一般の方や精神科通院中の方向けの記事ではありませんので、精神的な不調の心配がある方はここでお戻りいただければ幸いです。
精神科医スタート、理想の医師を目指して
研修医修了後、大学の精神科の医局に入局して、いよいよ精神科医のスタートです。
やっぱり、私は環境が変わった初めのころが一番調子が良いようです(笑)
今までも書いてきましたが、大学入学前も、研修医スタート前も、かなり調子がいいんです。
そして、2~3か月すると、気づいたらメンタルやられてるんですよね。
精神科入局後もそんな感じでした。
最初は新しいことをたくさん勉強したいと思ったり、患者さんに寄り添える優しい先生になりたいと思ったり、とにかく理想ばっかりで現実を全然見れていませんでした。
最初のうちはそれでいいんです。上級医の先生とダブル主治医のような感じで診ていたので、何かあったら頼れる、という心の余裕もありました。
うつ病の休養のための入院など、ゆっくり患者さんの話を聞くこともできていて、「そうそう、こういう医療がやりたいんだよ」と、やりがいも感じていました。
当直で現実を知る
しかしそんなゆったりとした時間は続きません。
入局して間もなく、当直が始まりました。
始めは上級医と一緒に当直していたのですが、回数を重ねるごとに疲弊してきていました。
というのも、大学病院は精神科救急の最後の砦であり、他病院が診れないと断ると最終的にすべて集まってくるのです。
だから通院歴のない統合失調症の患者さんが幻覚妄想状態で興奮して警察官と一緒に来たり、うつ病の患者さんが自殺企図して連れてこられるなど、ここでは詳細は書きづらいですが、かなり重症な精神疾患の患者さんを診るわけです。
精神科の初診というのは、少なくとも1時間はかかります。そこから検査、入院の同意の手続き、入院後の指示出し、カルテなど含めると、一人を見終わるのに3時間程かかります。
そしてそういう受診相談はたいてい夜中に来ます。
救急だから仕方ないことだと思いますし、仕事だからもちろん対応します。
でも午前2時とか3時とかですよ?
それまでにもかかりつけの患者さんが不調で当直帯に受診したりするので、その対応が終わって、日付回って「さあ寝るか」と思い、
寝ついたと思ったらピッチがなるわけです。午前2時に。
そこから患者さんを診て、終わったら空が明るくなってます。
基本、寝れません。
そして次の日は普通に一日中仕事です。外来もあるし入院もあるし。
身体、しんどかったです。かなり。
リアルに36時間くらい働き続けてたと思いますね。
誰も助けてくれない
上級医との当直の期間はすぐに終わり、そこからは一人で当直となりました。もちろん上級医のバックアップはありますが、電話相談なので病院に上級医がいるわけではありません。かなり心細いです。
そしてさっき書いた通り、患者さんが来る時間は多くが深夜なわけです。
わかります?普通の人だったら、寝てる時間。
午前2時に上司に電話かけなければいけないストレス。
正直これ半端ないです。
電話したくない気持ちを抑えて、なんとか電話をかけて、相談するものの、いまいち確認事項がまとまっていない。
電話を切ってから、「あれ?これはどうしたらいいのか?」と後から気づくことが出てくる。
・・・・
もう一回電話するのォォォ????(´;ω;`)
さすがに気が引ける。自分で考えなければならない。
指示が出せないと、看護師さんがイラついてくる。
それもストレス。泣
そのうちに患者さんからも冷たい言葉が飛んでくる。
こちらを罵倒するようなことも言われたこともあります。
結局私一人追い詰められ、誰も助けてはくれません。
(どうしようもない時はめっちゃ謝って電話していましたが・・・)
今でもあの感覚、疎外感、孤独感は覚えています。
普段の診察もかなりのストレス
精神科の診察って、結構疲れるんです。
原則として、患者さんの話を否定せずに聞く。共感する。
もちろん治療的に大切なことだとは思います。
でも患者さんによっては、攻撃的に話してくることもしばしばあります。
それが患者さんの症状ということもあるし、そうではないこともあり、どちらにせよこちらは基本受け身なわけですよ。
若手のころは、素直すぎるというか、患者さんの言葉を全て受け止めてしまって。何度も心に刺さりました。傷つきましたし、自分の無力感も感じました。
考えてみれば、こちらは完全に不利なわけです。患者さんに対して剣を振りかざすようなことは言えないから、必死で盾で身を守るしかない。でも、患者さんは平気で剣で心を抉るようなことを言ってくる。(一部の患者さんであって、すべての患者さんがそういうわけではありません)
完全に負け戦です。
そういう患者さんの割合が多ければ多いほど、医者は疲弊します。
このあたりは、だんだん年数を重ねるにつれ、攻撃された時の対処法を学んだりしてこちらの盾が分厚くなってくるので、ダメージは受けにくくはなってきますが、それでも診察後は深いため息がでることもしばしばです。
上司からのさりげないパワハラ
基本、精神科の医師は穏やか人が多いです。
でも、穏やかな人の中には、その穏やかさを保つために、自分のストレス因を他の人に穏やかに投げてくる人がいます。
正直、患者さんとの相性ってあります。
でも自分が初めて診た患者さんなら、患者さん自身が主治医を変更希望するか転勤のため病院を変えるか、そういう理由がない限り、たとえ合わなくても診るのが普通じゃないかなと思います。
なのに、相性が合わない患者さんを、あたかも正当のような理由をつけて押し付けてくる人。
これをやる人は、たとえ上司でも人間性を疑います。
若手の頃は上司から何度もやられました。その結果、キャパオーバーになるまで追い詰められたこともあります。
若手精神科医はこうやって病んでいくんだな、と思います。
結論、精神科医は疲れる
まだまだ書けば書くほどたくさん出てきそうですが、今回はこのくらいにしておくとして。
結論、精神科医は楽ではありません。
身体科のような急変のリスクは少ないものの、慢性的に負荷がかかり続ける仕事です。
そして精神科救急の当直はかなりキツイです。
良い時も、悪い時も、長い目で患者さんの症状を見守っていくという感じでしょうか。
正直、やりがいや達成感や解放感はあまり感じることはないです。
でも私は、短期的にはあまりやりがいを感じれなくても、もしかしたら長期的に見たら何か見えてくるものもあるのかもしれないとも思っています。
その結論が出るのは、まだまだ先だと思うけれど。
精神科医にとって一番大事なことは、自分が病まないこと
知ってますか?精神科医は医師のなかで一番自殺率が高いと言われています。
一生懸命患者さんに寄り添えば寄り添うほど、結果がでないたびに消耗しやすい。そうして自ら命を絶つ精神科医がいます。
正直な話、精神科医にできることは限られています。できること、できないことがあります。患者さんの生活を変えられるわけではないし、患者さんのもともとの性格を変えることはできない。ガイドライン通りに治療を行っていても良くならないこともある。
私が思い描いていた理想とはかけ離れていて、私も一時期病んでいました。
それでもできることはあります。適切な薬物治療や、適切な診断によって支援を受けられるようになること、家族に患者さんの理解を促すことなどです。
できることは少ないけど、それで救われている患者さんもいます。
それでいいんだ。
我々は聖人でもなんでもなく、ただの精神科医なのですから。
そう考えるようにして、自分が精神科医だからできることを日々淡々とこなしています。
精神科医にとって一番大切なのは、”いい先生”と言われることではなく、自分自身が病まずに精神科医を続けていることだと思うから。
長くなりましたが、精神科医になってから苦労したことについて書いてみました。
今回も読んでくれてありがとうございました(^^♪
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ではまた。
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