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『光る君へ』第七話『おかしきことこそめでたけれ』のネタバレを含む感想

毎週日曜日の夜にすぐ鑑賞しているにも関わらず、感想を書き出すのがどんどん遅くなっています
今週は月曜と水曜に映画を観てその感想を書いてたのと、源氏物語そのものに心が奪われる事件があったので、感情としては大変充実してます

いつもながら、作中で起きた事をそのまま書いて感想を付ける記事なので、ネタバレにはまったく配慮していません、閲覧にはご注意ください


散楽師の一団にいながら盗賊に身をやつしている謎の男こと直秀を、それと知らず道長は弓で射ったのですが、
はじめて人を射ったと沈む彼を「獣は射ったことがございましょう。盗賊など獣以下でございます」と、励ます、道長の雰囲気を感じ取れない検非違使同僚が面白い それがこの時代の身分社会の普通なのだと分かります
思えば、道長の家門や身分によって人を区別しない思想って相当な異端だけど、どうして道長はこんな子に育ったのだろうと、今さらのように不思議です
幼い頃から、市井を見て出歩いていたから? でもそれだけでは理由として弱いような…どうなんだろ

晴明はるあきらと右大臣が、やや険悪に話してるのもいいですね
「弘徽殿の女御の腹の子を呪詛せよと言うたが、女御まで殺せとは言うとらんわ」との右大臣でしたが、いやいや、呪詛を依頼しといてそれはないわ
呪いを依頼するのも実行犯と同罪ですよ(と、視聴者に思わせる仕掛け)
ところで『源氏物語』を初めて読んだ時に、弘徽殿大后は須磨に謹慎してる光源氏を何で暗殺しないの? 殺すまでやらなくても、ごろつきを送り込んで半殺しにすればいいのにと思ってたんですが(今でもちょっと思う)暴力を振るう、血を流す、という行為が殺人そのものよりも忌避されるのが、この平安時代の倫理観なのかも知れないと、改めて確認してます
『源氏物語』作中にも暴力のシーンってまったくない(あえて挙げるなら【葵】での生霊の行為くらい?)ので、そのくらいしてはいけないこと、もしくは発想がないのかも知れない
ところで道長が落ち着いた赤色の直衣姿だったのが目を引きました
似合ってるけど着られてるようでもある
と思って色を調べたら流血を暗示する色に似てるように見えて、人を射たことにほんとにメンタルをやられてる演出なのかも
結局、呪詛を命じた右大臣さんもメンタルがやられちゃって妾宅でうなされて「怖いよ~」って泣いちゃって可愛い
しかしそれを慰める妻(のひとりで正妻ではない妻)の寧子さんが「大丈夫、大丈夫、道綱~道綱~を頼みますよ」と脈絡なく息子道綱を推すの面白すぎる ウグイス嬢ばりのプロモでした
さすがの右大臣も?? ってなってたし、きっと怖くなくなったろう、良かったじゃん
ところで、右大臣さんが烏帽子をつけたまま寝てたのですが、起きたらすぐに帰るからなんですかね

まひろは前話で、散楽師さんたちに物語を提案して「面白くない」と却下されてしまったのですが、「また考えてくるわ」と全然めげず、本当にずっとずっと、物語を練り続けていたのが分かるシーンは泣けてくる
そうだよね、今やまひろの生きるよすがだもんね…
新たに紡いだ話は滑稽譚で、第2話で登場していた、まひろの“師匠”の絵師さんの教えを回想してくれるのはすごく嬉しい 絵師の師匠の三遊亭師匠好きです
そして、まひろの新たな話は見事、散楽師さんたちにもその観客にもめっちゃ刺さってウケるところも、しみじみと嬉しいです
散楽師さんたちに語るまひろ→すぐ試演→すぐ公演→観客がたくさんいるところで再演、というスピード感ある演出で、まひろの物語をたくさんの人が喜んでいて、それに涙腺が緩むまひろの表情が素晴らしい
散楽師さんたちの軽業芸も楽器の演奏も「この話は面白いぞ!」って推してる情熱を感じました
「お嬢ちゃん、今回の話はいいじゃないか」って直接誉められるより、演者の気合いの入りかたと観客の反応で、自分の物語が喜ばれていることを感じられる方が、まひろはきっと嬉しいはず
だってまひろは、あの稀代の物語作者なんだもんな…
ただ、『狐に騙される猿たちの話』として、猿を右大臣家に見立てて風刺する滑稽譚を作ったまひろでしたが、この話において狐ってなんだったんだろう?
猿(右大臣家)に向かって「馬の落とし物があるだろう、それを頭にのせよ、さすれば運が参ろうぞ」と狐の神様か妖怪の類い? が大活躍するのですが、うまのふんを使って相手を騙そうとするきつねというと、自分はドラクエ4を連想してしまうのでした

花山帝の取り立てで大出世をしていて、他の参議からめちゃくちゃ嫌われてる義懐さんや、参議さんらの会議の様子そのものも面白い
“下位の者から発言する”ってルールは、上位の者からの発言で議論が偏ってしまわないためなんでしょうが、外戚政治が横行していても、こういう(まともな)決まりもあったことが興味深いです

そして、その参議の場に参加出来なかった藤原実資(ロバート秋山さん)が腹立ち紛れにひとり蹴鞠をしてぶつぶつ言ってて、侍女とすごろくをしている奥さまに「うるさい、私に言わないで日記に書けばいいでしょう」と呆れられるところは、古文好きの方はニヤニヤしますよね
この藤原実資どのの日記、というか随筆というか批判記? は自分は読めてないんですが『小右記』という名で現代にも知られていて、道長が『望月の~』の歌を詠んだ逸話はこの書の記述により伝わっているそうです
ところで関係ないですが、左大臣家の倫子さまも以前すごろくをされてました 高貴な女性がすごろくをしているシーンって『源氏物語』にはなかなかないから、新鮮です
実際には広く遊ばれてたし、すごろく好きの姫様もたくさんいたのかもと感じてます

道長の兄2人の道隆と道兼が、珍しい組み合わせで酒を飲んでましたが、道隆が道兼に「父上の良いように使われて(汚れ仕事をさせられて)辛くはないか」と優しく声をかけたら、道兼がめっちゃ泣き崩れたので、やや面食らいました
前回では右大臣家の影の役割として覚悟を固めてたように見えたんですが…じゃあ、あれは弟の道長の前だったから虚勢を張ってただけなのか
それとも不意に兄に優しくされて、覚悟が揺らいで、泣いちゃったのかな
そうなると、道兼っていよいよ良く分からない人物に見えてきました 色んな面がある人物として面白いし、ひょっとしたら憎めない側面がこの後印象付けられたりするんだろうか
道隆兄上も、本心から弟道兼を案じているのか、それともいずれは父の跡を継ぐ藤原摂関家長子として、汚れ仕事を担う人間の忠誠を掴んでおきたかったのか、解釈が分かれるところです

弟の道長が、同僚の貴族の息子たちとダーツみたいな遊びをしつつ、“入内は女子を幸せにしない”論をするのは、姉詮子のこともありますから、味わい深いですし
その帰り道で、従者の百舌彦が
「まひろさんからは文の返事は来ないんですか?」
と、どストレートに聞いちゃうのが面白すぎる
そして百舌彦があの『ちはやぶる…』の歌を届けたのだと分かった あと、乙丸のことを頼り無さそうってゆってたのが面白い
気持ちは分かるが、君たちは乙丸の良さや強さを知らないのだよ
と、思ってたらちょうど、散楽師たちを右大臣家の下男たちが暴力で追い散らそうとするシーンに遭遇し、その暴力からまひろを見事に護ってぶん殴られる乙丸が見れた…
あんなに華奢で、まひろより小柄なくらいなのに、護り抜いた! かっこいい、かっこいいよ乙丸
ぶっ倒れて伸びてる姿が、めっちゃかっこいいよ! (乙丸死んだ!? 大丈夫!? ってなるけど)

なんやかんやで、まひろを助けた道長が、いつかの六条の廃屋にたどり着くのは、もう、少女小説のそれのような、甘い展開でした
まひろが右大臣家を揶揄する散楽の話を書いてた事を聞いて
「おれたちを馬鹿にする話をか?」
と淡々と聞いた道長に、まひろは気まずそうにするんですが
「おれも見たかったな」
ってさらっと言うのは、道長やるじゃんです
まひろにとっては、自分の物語がほめられる、見たかったって言ってもらえることが何より嬉しいはず
書くことが、道長への恋心から遠ざかるためのものだったとしても、それでも一番、自分の物語を見てほしいのは道長なのだろうな

そんな見つめ合う2人の元に「姫様~~~ひどいじゃないですか~私を置いて……( 。゚Д゚。)」って乙丸が現れる緩急も善きです 今週のMVPは乙丸、君だ

花山帝に信頼されているのに右大臣家への間者としての報告を続けていた、まひろの父の為時は、ついに右大臣さんにもう間者は出来ないと言ってしまって、右大臣さんは不思議な笑顔でそれを了承するのですが、これ大丈夫なんかな

「喜べ! 右大臣家とは縁を切ったぞ!」と
まひろと共に報告を聞かせた友人の藤原宣孝が、政治的な判断をちゃんとしろと怒るのは確かにもっともです(右大臣家は東宮の外戚になるのは確定しているから)
まひろは父の判断を賛成したけど、それを一喝する宣孝はなかなか怖い(しかし後のまひろとの関係を考えると、彼女を叱責する立場であろうとする彼は、味わい深い)
そして、その場に突然現れて「右大臣家の間者を続けて下さいませ! もう昔のような惨めな暮らしは嫌でございます!」と涙ながらに訴える、いとさんがめっちゃ面白すぎました
いとさんは、まひろの弟の乳母、そして父為時の手がついている(推定)召人という女性ですが、本来主人の仕事に口を出す権限はないはずです
でも、こうして発言するのは、召人ではなく後妻(実質的な本妻でこの家の女主人)の気持ちでいるんでしょう
あまり裕福でない人の家で働く女性が、女房だったり乳母だったり召人と役割が重なってしまうことも、良くあったんだろうとも思います
そして時には、主人各の人間も、召使いたちと同じように働かないといけない場合もあったはず(第一話ではまひろの母はそうしていた)
実際、使用人に指示を出したり教育したり、お金の管理したり、衣を整えたりってことを、まひろはやってないし、いとさんに任せきりなんじゃないかと、見てると何となく思います
だとしたら、いとさんの発言はまっとうな気がしてくるんですよね
いとさんの発言が(いや、なんでお前が言うん…)ってなる滑稽シーンではあるのですが、なんか色々考えるところがありました

今回の物語的ハイライトは、貴公子たちによる打球のシーンでした
乗馬して、片側が湾曲した杖で球を叩いて飛ばし、得点を競う遊戯のようですが、ほぼポロでした
一説にはポロの起源なんだとか
しかし、なんかこのシーン、観客が運動会のテントみたいな吹きっさらしのところで並んで座って観戦していて、左大臣家の倫子さまをはじめとした高貴な姫様たちがみんなそこにいて、
打球をやる貴公子がそんな姫様がたを品定めする場でもあったので、いやこれはだいぶありえん現場だなと、顔を渋くしてしまいました
以前、左大臣の前に姿を見せる詮子さまのシーンはまだ、これは映像の現代訳みたいな処理がされてるんだろうと思えるんですが
打球大会で運動会みたいで姫様方がずらっと並ぶのはトンデモ平安時代すぎて、モヤモヤします
いいシーンはいっぱいあったんですよ!

その場に、ききょう(清少納言)も招かれている
倫子さまの連れていた猫の小麻呂がまひろのところに寄っていってゴロゴロする
打球をやる道長はなかなかの戦績を上げる、まひろが見ていることを意識している
まひろもそれを感じとるし、道長の姿が見れて嬉しい

このように、含まれているエピソードはすごくいいんですよ

しかしですね、その後の展開として
会の終わりに雨が降ってくる→倫子さまのところから猫の小麻呂が逃げてしまう→まひろ探しに行くと志願、あちこち探す→打球の参加者たちの支度の場の近くに来てしまい、貴公子たちの観客の姫君たちを品定めする(かなり悪辣な)話を聞いてしまう→絶望して泣きながら帰る→道長に贈られた大切な歌を燃やしてしまう→7話終わり という流れでした

小麻呂の保護はどうしたんだよ!

いやいや、ショックなのは分かるよ
道長と自分の家の身分的な格差を鑑みて、正式な婚姻は結べない、まひろは正妻になるのは無理、重んじられない通われ所のひとつになるか、いとさんのように道長の家に女房で仕えるとか、そうするしか道がない
でもそれは、道長が素性を明かした段階で明晰なまひろなら分かるだろ!
あと、貴公子どもの姫君への悪どいとも言える審美論も別にいいだろ、女の子たちだってだいたい同じことしてんだから、いいから小麻呂を探しに行きなさいよ!

という訳で、小麻呂が全部もってっちゃったラストに(個人的には)なったのでした
小麻呂…小麻呂が雨で濡れてびちゃびちゃになって、茂みの下で小さく鳴いてるショットとかあったんですよ…( TДT)
まひろよ! お前さんは小麻呂たんに懐かれてた、そして「私が!(探してきます)」って言って立ち上がったんだからそれをまっとうしてくれよ! 小麻呂を探し出す義務あるぞ!
なんでこんな話にしたの…? 貴公子たちの話を聞いてしまうという状況を作りたいなら、他にいくらでもやりようあるだろう
小麻呂を使いたいなら、ちゃんと見つけて帰るショットまで入れるべきでしょう! 猫好きとして、猫を世話してる人間の端くれとして、自分は頑として怒ります

ちょっと話は変わりますが
ひろうすさんが、ふたたび『光る君へ』絵巻を描いて下さいました! 
こんな脈絡でご紹介してすいません

ひろうすさんの絵は、人物の表情も衣服の質感の表現も、とても繊細で魅力的なんです、いつも!
道長のぼやっとぬぼっとした表情が伝わる描画です
そして衣装の柄の描き込みも美しいし、馬に乗ってる表現の書き文字もすてきです
そして、こちらの道長…きっとすごい猫が好きなんでしょうね!
ひろうすさんが描かれたこの道長が、あのシーンのまひろを助けてやって、一緒に小麻呂を探してあげる展開が観たいです

小麻呂…次回で無事が確認出来なかったら、NHKに投書します、本気です 

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