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『光る君へ』第六話『二人の才女』のネタバレを含む感想

第六話は、これまでの五回分で折り重ねられたエピソードがより新たな展開をみせ、登場人物も違う面を見せてくれたり成長したりと、更に面白く目が離せない回でした
和歌や漢詩が登場するシーンも多く、この平安王朝ものとしてそうでなくては…!! と嬉しくなるばかりで、素晴らしいです
例によって、書きたいことをドラマ内のエピソード順に書いており、ネタバレにもあまり考慮していない内容なので、閲覧にはご注意ください

まず感慨深いのは、まひろと父が和解ができたことです
左大臣家の内情を掴むための密偵として、まひろを立てたことは間違いだったと謝る父に、
源(左大臣家)との繋がりを持っておくべき
父上をお支えしたいのです、女子でも役に立てますと訴えるまひろは、“男まさりの知識もち”ではなく才気と機転を持つ頼れる娘に、一皮剥けた感があり惚れ惚れしました
そして、まひろが物語を綴ることを「この命に使命を持たせなければ」と、執念を持って挑む決意をしたシーンも素晴らしいです
それが、道長さまから遠ざからねばならない、という恋情を断ち切るためのものだとしても、紫式部は『源氏物語』という物語を書き上げたと知っている視聴者からすると、そうだったんだね…って泣けてくるのです

一方、まひろの母の仇であり道長の兄の道兼は、すっかり父の陰謀の道具として暗躍することを己の使命と定め、揺るがない表情をしているのが凄味がありました
癇癪を起こして、まひろたちを害した第一回の面影はなくて、むしろ好感が持てるくらい
そして、父の役に立ちたいと言うさまは、そこはまひろと同じなんだよな…という対比が効いてるようにも思います

恒例となっている左大臣家での女君の文学の集いでは『蜻蛉日記』が題材として上がっていました

嘆きつつ ひとりぬる夜の 明くる間は
 いかに久しき ものとかは知る

という作中の和歌を読み解くだりで、まひろは『蜻蛉日記』は高貴な殿方に愛された私…という自慢話が含まれた随筆なのでは? という解釈をしていて、それが『源氏物語』での作中における『蜻蛉日記』の扱われ方に合致するものなので、
(ちなみに【帚木】の中の貴公子の“雨夜の品定め”の中の、出家する騒ぎを起こした女性の話が『蜻蛉日記』から引いてきた話だと言われています)
まひろから“紫式部”の萌芽を感じるポイントがここにもある! と嬉しくなるし、この集いの講師役の赤染衛門も、まひろの発言に頷きその学識を信頼している雰囲気があって、それも嬉しくなります
しかし、まひろを除く姫君たちが“書を読むのは一番苦手”だと言ってたのには驚きました
こ、こんな会を催しているのに、書が嫌いなの? とわりと衝撃でしたが、物語は読み聞かせてもらうに限るわ~って事なんですかね…
読み聞かせに向く文学も、そりゃあるけど、自分の読みたいペースで想像して読むのがいちばんおもろいやろがい! と自分なぞは思ってしまったのでした
でも、倫子さまとまひろが和やかに話してるのは良いです
“苦手は苦手ということで参りましょうか”っていい言葉です

散楽師たちの稽古の集いを見学したまひろが、五節の舞姫を題材にした物語を(頼まれもせずに)提案するのはなかなかの強心臓だと思うのですが、実は奔放でしたたかな舞姫の物語を提案するのは、なにげに凄く官能的な物語を書いた人らしい発想だと思います
そうしたいわけではないけど、でも奔放で自由で男を翻弄する女性像に憧れもあるの知れない
あと、面白くないと言われても、また考えてくるわって言えちゃうのすごい
それと、思案する時のまひろが、口をむにゅっとさせた、ん~って顔をする( ´ω`))のがかわいい
「おかしきことこそ、めでたけれ」という文言が、今後キーワードになりそうでした

その後、まひろ的にはどこが面白いのか分からない、左大臣さんの顔にハエが止まってた話が出て、何でこんな話をするのか不思議だったのですが、そこから詮子さまが実家の右大臣藤原家とは違う権力を得るために、左大臣を取り込もうとほとんど脅迫するシーンに繋がったので、こうくるのか! と唸るしかありませんでした
「政治も鈍いくらいが一番なのかも!」なんて娘に言われちゃってる左大臣さんが、詮子さまに屈伏してるのは、詮子さま推しとしてゾクゾクしちゃいます
(ただ、詮子さまが左大臣の前に姿を出して直接話し、その手を取って感謝するシーンは、大胆だなあと思います 本来のこの時代の宮中の作法としてはあり得ないはず 実際には御簾の中から女房を介して会話するはずですが、それをやるとドラマ的に観づらくなってしまうから映像の“現代訳”みたいな処理がされてるんだなと解釈しています)
(あと、倫子さまが抱っこしてたねこの子麻呂がわりとデカねこだったのがいいです)

見事な政治手腕を発揮して権力を得つつある詮子さまが、道長に「左大臣家の一の姫(倫子さま)に婿入りしなさい」といきなり言って、道長はぜんぜんピンと来てないのも、すごくコミカルで緊迫と弛緩の緩急あっていいですね
道長と倫子の婚姻の外堀が埋められて行く怖さもあります

若き公達たちの政治的な求心力を、右大臣藤原家派閥が取り戻すために、漢詩の会を主催すると決める藤原道隆と高階貴子夫婦は、さすが文化的なご夫婦です
そこに講師として呼ばれたまひろの父に、父上のお供をいたします、父上の晴れ姿を見とうございます、と素直に訴えるまひろと、それに静かに喜ぶ父も、良かった! この回の冒頭にできた和解が、さっそく良いシーンに繋がったから、嬉しいです!

そしてまさかと思いましたが、
同じく漢詩の会の講師役として清原元輔が呼ばれて、その娘ききょう(後の清少納言)もここで登場して、まひろ親子と邂逅するとは驚いたですよ
実直な人柄で服装も地味目な、まひろ親子と
大胆な柄の衣装を華やかに着こなす、ききょう親子の対比がとても面白いです
堂々と自分の漢学の知識を披露し、発言を躊躇わないききょうと、そんなききょうをたしなめる父の清原元輔、でも叱られてもミジンコも堪えてないききょうが…すごい、すごい、こいつはどう見ても清少納言だよ…とたまらんくなります
そんなききょうを満足げに高階貴子さまが見つめているのも、後の定子さまと清少納言の絆を思わせるしで、すてきです
この漢学の集いの見所は他にもあって、集った貴公子たちのそれぞれの漢詩を、その筆致から見せてくれて漢詩の表すところを本人のモノローグで聞かせてくれるのが面白いし、その中で道長が詠んだ詩が、まひろへの想いを詠ったものであったこと、
その場の去り際に、まひろのことを狂おしい想いを込めて見つめていたこと、その気持ちが痛いほどに伝わるシーンになってて、まひろがそれを感じて動揺を必死に押し殺しているところもたまらないわけです
藤原道隆どのも漢詩の会をしっかり締めて、政治的な目的を果たしていたので、実に情報量の多い漢詩の会でした

その後、まひろの元に道長から和歌が届くのには、もう琴線に触れすぎてしまって情緒がおかしくなりました

ちはやぶる 神の斎垣も 越えぬべし
 恋しき人の みまく欲しさに

(荒ぶる神が禁じるほどの高い隔てを越えてでも、恋しいおまえに逢いに行きたい 五節の舞姫であったまひろよ おまえが愛しい)
(※・個人的な意訳です)

この二人は、これからどうなるのだろう
このドラマが始まった当初は、紫式部のエピソードってほとんど無いから、大幅に創作の話で大河ドラマを持たせなければならないけど大丈夫か? なんて思ってたのに
紫式部と藤原道長、というふたりではなく
ただ、まひろと三郎のことが大好きで、ふたりの想いが叶って欲しいと願ってしまう現在の心境が、凄く恥ずかしいです
恋愛が主題のドラマって普段はそんなに興味がないんですが、こんなことあるんですね

そんな訳で、リアタイ視聴していたのに、感想をまとめるのが時間がかかってしまいました
何度も見返してしまって、そのたびに涙腺がゆるゆるになってしまって、鑑賞メモにぐりぐり書いても何かうまくまとめられず、めそめそしていたら猫に不審の眼差しを向けられたのでした

「………」
「飯はまだか!?」

何でこういつも、うちの子麻呂×2匹はちょうどいいフォーメーションでいるんでしょうか、かわいいですね

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