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SFマガジン12月号掲載『ソラリス』『堅実性』感想と、ほか文芸誌について思ってること

衝撃というほかありませんでした
スタニスワフ・レム氏の傑作SF『ソラリス』のコミカライズと
グレッグ・イーガン氏の新作中編が共に掲載されるなんて!
自分はSFの読み手としては、ぜんぜんまだまだなのですが、それでもこの2作が揃うのは凄いであろうことは、分かります
何せ、グレッグ・イーガン氏の他の短編集を先日読んで、その面白さにボコボコにされたばかりですし
『ソラリス』はちょうど今年の6月に読んだばかりで記憶も新しいのでコミカライズも嬉しいのです

という訳で、この2作についての感想を書きますが、あまりネタバレには配慮せずに書いていますので、閲覧はご注意ください


『ソラリス』
原作:スタニスワフ・レム マンガ:森泉岳士

『ソラリス』はとても思い入れを持つ人が多くいる上に、作中でのテキストが割かれているのは、語り手の内面であったり作中の学術論文などの描写だったりするので、すごくコミカライズに向かない作品だとばかり思っていたのですが、
シンプルなデッサンのような絵柄で、ソラリスステーションの剣呑な静さや、荒廃した風景を表現されてて、とてもイメージ通りに感じました 素敵でした
また、マンガ内のキャラのセリフやト書きのテキストの小説『ソラリス』を要約した内容が、素晴らしいまとめ力でした!
『ソラリス』は話のややこしさや、テキストを重ねに重ねて読むことでトリップしちゃうような楽しさがある小説だと思うんですが、それをコミックに適した長さに要約するのは、至難の技のはずです
後半のややこしく愛おしいソラリス学の変遷の表現がどう表現されるのか、楽しみです!
もう一声欲しかったところは、掲載話の最後に登場したある人物(?)の描写についてです
小説では、凄くおぞましいものを見てしまって目が離せなくて、でもそれが去ってしまったら、幻でも見ていたかのように、それの存在感を感じない…というシーンだったので、もっと強烈に描いて欲しかったようにも思います やべえソラリスのはじまりですから


『堅実性』
グレッグ・イーガン作 山岸 真訳

シンプルなのに内容があまり想像がつかないタイトルですが
この話の中の堅実性って、つまり何なのかというと
道徳的であることだったり、性善説の話であったりします
あと、落ち着いて状況を吟味し、研究して、把握して
どんな状況であろうと腐らずに最善の道を目指すことなんです
そういうことが出来る、ひとりの少年(ひとりじゃないかも知れない)とそれに様々な形で関わる、様々な人と、異様な状況になってしまった世界の話です
自分を取り巻く世界が変質してしまって、でも腐らずにいる人というと、グレッグ・イーガン氏の他の作品の事も思い出しました
物語冒頭の静かなパニックの描写と、かりそめの形での少年のふたりぼっちのシーン(が、とても良かった)に続き、疑似親子のようなふたりになるシーンもあって
コーマック・マッカーシー氏の『ザ・ロード』のようなポストアポカリプス的な展開になるかと思ったら、そうならない! 
そうならないように頑張る人達の話だった! 
のが、すごく素晴らしい中編だったのです


ところで文芸誌の事なんですけど

普段、なかなか文芸誌って買わないのですが
今年はちょいちょい買ってしまってます
SFマガジンは6月号の藤子・F・不二雄短編集特集と今回の12月号
あと、うっかり一昨年のバックナンバーも読みたくて買ってしまいました

度重なるうっかり


ユリイカも今年7月号の『奇書の世界』と先日出た臨時増刊のトールキン特集を読みたくて買ってしまいました

装丁がすごくいいなあ

あと、先日は宮内悠介さんの『ラウリ・クースクを探して』を読みたくて、掲載誌の『小説トリッパー』をはじめて買いました

思わぬ執筆者さんもいらっしゃって嬉しい

どの誌も、なるべくすみずみまで読みたいのですが、大変ボリュームがあって、一冊の文芸誌をしっかり読み込むのが大変でしんどいです
なんとか、いつかまた読めるように、どなたがどんな記事を書いていたかくらいは把握しておこうと読むんですが、なかなか思うにまかせないのでした
そうこうしているうちに、また他の文芸誌も気になるし、そもそも普通に積ん読がつみつみされていってるので、
文芸誌を定期的に購読してる方って凄いな、としみじみしてしまうのでした

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