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「封印再度 WHO INSIDE」森博嗣 感想

ネタバレ

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ご法度級のネタバレ。

ド級のネタバレである。

だから、読んでいて完全に謎など無いと思っている人だけが読んで欲しい。(それでも発見があるかもしれない)





相変わらずタイトルである。

タイトルは重要である。

別に本作や本シリーズに限らず、普遍的なことである。
(関係ないけど、絵画が勝手にタイトルつけられていることが多いのは嘆かわしい気もする。タイトルがあることが嘆かわしい、という高みもあるのかもしれないけど。)



本作のタイトルは、

封印再度である。

英語タイトルは

WHO INSIDE

である。


英語で正しいのはWho's insideか。

isないしwasが抜けている。

さらに、表紙には十牛図の英語タイトル?のような詩みたいなものが与えられている。

十牛図というのは、よくわからないけど、

牛を何か人生で求めているものとして、抽象的に語る中国由来の絵画のテーマである(と思う。しらんけど。)

いろんな形式があると思うが、丸い絵のやつが多い気がする。
(普通の四角い絵の時もある(はず))

途中で、真っ白になるのが面白い。
(意外にもそうでない奴もあったはず。もっと形式決まってるかと思ってた。)

普通に牛がだいたいかわいいし、雰囲気良いので割と好きな絵の種類である。

詳しく知りたい人はWikipediaでも参照してほしい。

で、こちらも英語である。

The Bull Transcended

そしてtranscendedに同じ特徴がある。

後述する。



引用文

禅に関する英語で書かれた有名な古典の日本語訳である。

毎度ながら乱暴に要約しよう。

「あると期待されるもの(Balancing Wing)をワザと無くすときに、それ自体は醜いことであるにもかかわらず、全体として美が成立するという禅美術でよくみられるテクニック」

を解説した文章である。

つまり

「あるはずなのに無いもの、異質なもの、間違いに注目せよ」

ということである。

さらに、それは「意図的であり美しい」のである。

特別である。

(この引用の英文のやつお勧めである。禅の説明は、日本語だと難しすぎる。といっても読んだはずが何も思い出せないけど。)


Who Insideというのは、is/wasが無いのだが、それで良いという訳だ。

推理小説としては、

単純に「誰が中に”いた”のか」ということである。

どこの?

密室のである。

しかし、無いのである。
(何が?後述。)

引用文はワザとである言っている。

すなわち

おそらくダブルミーニング。

つまり、もう一方にも同じ疑問が適応される

「誰が中に”いる”のか」

これに対して

何の?

という疑問である。

ここまでにしよう。

答えはある。

うーん。美しい。



Transcendは一般的には

超える。超越する。

という意味の「他」動詞である。

多くの日本語の英辞書には自動詞は無い。

英語の辞典でもたいていは記載がない。

しかし、

Merriam Websterにはintransitive verbとしての意味が掲載されており、

intransitive verb
: to rise above or extend notably beyond ordinary limits

Merriam Webster

とのことである。
Oxford LearnerおよびLongman, Cambridge, には自動詞は掲載されていない。Collinsではin American Englishとして

verb intransitive
4. to be transcendent; excel

Collins

とある。

Collinsはここでは不適だが、Merriam Websterの方はまぁ良いだろう。
いずれにしても哲学や宗教など詩的な用法においては、自動詞用法が存在する。


つまり、目的格や目的語が存在しないのは「ワザと」であり、実際に詩的に「美しい」表現となっている。

この訳は元ネタがあるのだろうか。

それとも森氏のオリジナルだろうか。
(強い。英語力!)


どうでも良いが、ピリオドを打たないところが憎らしい。ピリオドを打つと多分、Transcendは自動詞ありませんよ、という無駄な指摘が雪崩をうってやってくるだろう。打たないことで、後続のテキストが目的語の節となるかもしれないと思わせている。

目次では、<>で囲っているし、そもそも十牛図のタイトル相当である。各文で理解するのが自然ということだ。

やりよる。




深読み?

違う。

「髪を伸ばす」ではなく「髪は伸びる」のだという。

自動詞であると。

浜中君は国枝先生に英語を直される。

theが要るとか要らないとか、onがunderだとか。

これは、普通に難しい。特にサイエンスの文脈ではnativeでも多少の訓練を要する。

要は、自分は間違えませんよ、というメタとも取れる。

相変わらず、神はすべてを差配する。




さて、Who "was" Insideの方である。

事件の核心は、ここである訳だ。

そして、これが語られ”ない”

そういう意味では、トリプルミーニング。

素晴らしい。



話は、無いものによって引っ張られる。

それは、「凶器」であり「動機」である。

壺と箱の謎。

これが引っ張る。

西之園君が自覚したように。

しかし、それは最終盤語られる。



ここからは、

断片的に書こう。
(といっても十分にネタバレしていく。良くないかぁ…。うーん。)

しかも、本筋外も。


1949年。


法隆寺が焼けた、と語られる。

しかし、語られ”ない”のは

おそらく、

横溝正史の方。



高柳君の名古屋弁。

良いぞ。

横溝正志。
(名古屋弁も。)

語られたのは、

「悪魔が来りて笛を吹く」

である。

ドアであーだこーだして密室トリックという文脈だ。
(そういうトリック)

語られなかったのは、

「犬神家の一族」である。

一番有名なのは明らかにこっちだろう。

タイミングは香山の家の血の話が必要なところ。
(そういう血筋)

良いタイミングだ。

犬神家は舞台の年代が1949年というの説がある。
(どうでもよい)

そんなメタ読みはどうでも良いが。

法隆寺が焼けて始まったのではない。



ヘッドライトとマリモ氏の交通事故のタイミング。

気を取られて運転して、ヘッドライトと来れば

直接表現され”ない”にも関わらず

事故が強調される。

まぁ、それだけ。



クリスマス。

犀川先生が何もし”ない”。

ことで逆に強調されるロマンス。

まぁ、それだけ。



7-5ー3

日本の美。

引用文の発展形。

対称形からわざと壊す。




病院でマリモ氏が月岡氏と?

病院で萌絵ちゃんと犀川先生と?

真似した訳だ。

あまりにもへたくそな魔法。

しかし、効果は絶大だったね。

吊り橋効果みたいなもん?(違うか)

関係ないけど、女性男性で見え方が違うようですね。(トムとジェリーみたいだ)クリスマスに何時間もアパートの外で待たせたらこんぐらいされても仕方ないと思うけどね。まったく結構な御身分です。犀川先生。



子供と大人。

嘘をつかない子供と嘘つきの大人。

まだまだ嘘がへたくそな萌絵ちゃん。

エイプリルフール。

「君は子供だ」

怒る犀川。


諏訪野さん。

老獪である。


嘘をつかない例外、国枝先生。

祐介君の

電池がない、といった後の

「電池あるよ」

の必然性。

子供時代の犀川先生と萌絵ちゃん。
(某H氏は当然嘘つきだしな!Vシリーズ参照)


嘘をついているのは誰か?

みんなだ。

すべての大人が嘘をついている。
(かもしれない)

国枝桃子を除いて。
(オンの時に限ることが示唆されている)

何の為の嘘なのか。



浜中君。

回転扉の名前を忘れる。

忍者屋敷のやつ。

「様変わり」

直後に名前を勝手につける。
(そういう別名もあるんですかねぇ。業界用語だからね。ネットにないことも世の中まだまだあります。有名トリビアですがね。)

そんな名前だっけ?

語られ”ない”

「からくり」

これは事件に全然出てこない。

回転扉どこいった?
(それで良いという訳だ)

(目次にあとがきのタイトルがある(講談社文庫)これネタバレっちゃあネタバレなのよね。奈落のからくり。舞台装置って良いよね。)

そしてダブルミーニング。

なんて名前だったけ?

ChatGPT3.5は知らないみたいですね。

忍者屋敷の回転壁/扉って別名なんていうか知ってますか。

そのような構造は、一般的に「回転壁扉」と呼ばれますが、 別名としては「回転壁パネル」や「回転パネル」などがあります。 これは、忍者や古代の日本の建築物に見られる特徴的な構造の一つですね。

本筋でも、無くて良い訳ですか。

うーん。

まぁ、よく出来ている。

ちょっとギャグみたいだけど。




魔法だ。

本作のテーマカラーは明白だ。

白黒と赤。

それ以外のカラーは異質。

部外者だ。

萌絵ちゃんの服、街並み景観の描写。

白い人、滴る赤。

自身による仏画。

黒い箱。白い?壺。



この呪いのような魔法はいつから続いているのだろうか。

記録というのは脆い。
(これは僕の感想。蛇足。)

データの保存というのは、大抵の場合、記録それ自体が堅牢であることと複写によって成される。

DNAは比較的堅牢である。
(この話はない。蛇足。)

コピー可能である。

石板は比較的堅牢である。
(蛇足。)

ロゼッタストーン。
(これもない。蛇足。ところで大英博物館の説明書きはウケます。古代ギリシアセクションも同様な理由で面白いです。)

複写。

コピー。

だからバビンの仕事は大事だね。良い仕事。

低温溶融金属。
現実では、そこまで古いのはないかも知れないが。
(現実なら液体脆化?LMEが気になります。壊れそう。箱。)

壺と箱は古い。

無我の厘。
天地の瓢。

記録は、風采ー>林水に過ぎない。
(こんなんで続いていると言えるか?林水氏の個人の行いではないか)

蔵の名前は

香雪楼。

香山家。

それ以前には

紅雪楼。

紅は家名ではない。それは明示されている。

テーマカラーはモノクロと紅。

トリックには雪が必須。

壺と箱は古い。
はるかに古い。




圧力によるトリックは再現された。

しかし、再現されたのは、それだけではない。

魔法の魔力の有効性だ。

そのために必要なことは?

素養の下に条件は2つ。

効果は劇的だ。

マリモ氏の発言を見たまえ。

魔法の魔力は本当に絶大なのだ。

結果だけではない。

その人格まで。

漫画家?

異なる道を歩んでなど居ないのだ。

犀川には、夢の内容は与えられていない。

誰の夢か?

自然には、マリモ氏。

特定はされない。主語はない。

犀川視点では与えられない境界条件。

マリモ氏の嘘。

Who Inside

不等式のような時間。

挟まれた時間。

後ろには、娘のマリモ氏。

前には、息子の多可史氏。

Who "Was" Insideにおける確実な解。

孫の祐介君はInsideに確実にいた。

抑えられた不等式。

血の付いた跡。

不確定なのは?

抑えられない答えは?

後ろは暗示された。

夢。

複写。

息子と父。

顔が似ている。
(そっくりだという)

重なる。

自然な答え。

魔法は、はるかに古い。

風采氏と林水氏。

4歳に魔法をかけるのか。

確かに血あるいは素養が必要だが。

事件において。

孫を挟んで。

時の中、対称の関係にいる息子と娘。

これさえも、意図的かもしれない。



やはり噓つきはまだいるだろう。

それを考えると、

林水氏の妻の話。

これも見え方が変わるだろうか。

彼女も嘘つきなのか。

女人禁制。

例外。

それは娘だけでは?

素養?

言葉だけのこと?

完璧な美?



自然な事件の経過。

事件は計画されている。

魔法は計画されている。



雪が必要だ。

(カオスによる初期値鋭敏性が原因なのか天気予報は3日程度しか当たらない。)

3日前に林水氏は妻に話した。





偶然が多い事件だ。

偶然をみな受け入れる。

林水氏の妻。

結局は預ける。

犀川が封印する。

禅。

日本。

我慢は能動的なものではない。




血液。

赤。

黄色い点滴。
(FFP(新鮮凍結血漿)ないし血小板製剤。とか。)
(Kかもしれないけどね。)

交通事故。軽傷という嘘。

貧血。

血の病という大嘘。

(犬神家)

代々仏画師。


写真。
複写。

デジタルカメラのからコピーよりも早い現像屋さん。
手書きの事件レポート。写真、高かったんですかね。とぼける鵜飼。



繰り返し。

壊される。

完璧な日常。

魔法。




それが特別となる。




模写をした林水氏がオリジナル作品を最後に残した。
それは本当だろうか。
特別。
燃やしてしまった。
それは本当だろうか。




うーん。

大気圧トリックなんてどうでも良いのです。

低温溶融金属なんてどうでも良いのです。

アイデンティティに関する考え方ってやつですかね。

小島監督にまた無理やりつなげると、スナッチャーとかね。
(falloutのドラマは第二期になるとSynthの話とか出るのだろうか)
(ゲームの話ばかりしてしまうな。)


まぁ、ある意味で普遍的なテーマですかね。

やっぱり対談してほしいなぁ。



全然関係ないんですけど、

壺みたいな口がすぼんでる形状を旋盤の絞り加工で作るときの型どうしてるか知ってます?

まぁ、簡単ちゃあ簡単なんですけど、普通に賢いなぁ、と思いました。
(実用の世界でもこのぐらいの工夫はするわけですよね)
(トリックばかりでなく)

多分Youtubeとかに動画あります。







やっぱりネタバレが過ぎるか。
(夢を知らない犀川先生と我々読者は境界条件が異なるのです。それでもおそらく、犀川は可能性に気づいていますが。一切話していない。しかし、我々視点では自然な計画はなんであるのか。”様変わり”は無いわけですから。”様変わり”(ではなく答えのほう)のwikipediaには1.で本作の意味で書いてあるが、昔は書いてなかった気がするなぁ。しかも、信頼できない語り手にリンクがはってある。面白い。)


あ、あとツインピークスネタは全然わかりませんでした。見たことないし。やっぱり意味がありますか。見たほうが良いですか。(主人公がfalloutのドラマのお父さん役の俳優さんよね。確か。)

fire walk with me

でしたっけ?全然わかりません。




あと。お茶会。

お茶会はロジスティクス。

軍隊ばりの統率が大規模茶会では必須でしょう。

話を聞いていて、そう思います。

その雰囲気がとても出ている。

仕切っている。

カラフルな別世界。

「光化学迷彩」。

(着物で運転しにくくないか?というシーンがあるが、その点は少しリアリティに欠ける。履物のほうが絶対大事である。ふつうは履き替える。)






Soraが使えるようになったら、個人で映像化にチャレンジして(法的縛りがあるので私的に)楽しみたいなぁ。
まぁ、どうかな。やはり技術がいるのかな。
創作には憧れるけれど、簡単ではないよね。




あ、あとですね。まったくの蛇足なんですけどね、
「ハイポシーシス」と仮説を萌絵ちゃんが表現するのですが、

統計で言うところの

null hypothesis

もいわゆる、

balancing wingが無い
null hypothesisの棄却

って事である意味で似たような構造だと思いました。

別に作中で深堀されない話なので、これは全くの深読みです。

とはいえ、萌絵ちゃんの仮説はすべて棄却されるんですけどね。

まぁ、棄却されることに意味があるという。

やっぱり背景にありそうですね。

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