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町のルール?

※ 愛猫を失い、庭先にやって来たノラネコとのお話…。


望郷 

 あの日あの時のゴツゴツした顔とつるんとした顔の涙の意味をおいら達は知らないけれど、母は直ぐに気づき涙を流し時折振り向きながらその場を去り、カーテン越しにゴツゴツした顔とつるんとした顔の足元だけがこちらを向いている。
   

マザーズアイ       

 出産後の体が衰弱しきり生死を彷徨っていたシングルマザーの私に気づき口元の食事をくれて、子供達の身体の手当てをした、あの“ゴツゴツ"した顔と“つるん"とした顔の2人の気持ちは言語が違うけれども伝わって温度計では測れない温かさで包んでくれる。
 母の私は大人だから知っているけれど安心と安らぎをくれたが、それは続くのか不安も同時に抱かせる。
 おチビちゃんは、そんな事を思いもせずに陽だまりの中を寝そべっている。

種族

 どの種族でも“ルール"があるらしい…、なんとなくオイラ達もそれにそって生きている。
 ゴツゴツした顔の種族の中には私達の種族を嫌う者もいて、その嫌う者がこの場所の隣に住んでいたりして…。
 ある日の夕方にそのお隣のくしゃくしゃの顔がゴツゴツした顔に恐い顔して話している。
 くしゃくしゃ顔が「家の塀を歩いて迷惑している…。」と…。
 ゴツゴツした顔が「迷惑かけてすみません。」と、頭を下げている光景が何故か不思議で理不尽だなとオイラの目には見えたが、ゴツゴツ顔の困惑が伝わったてきてオイラ達はただ生きているだけなのにとおもったりして。
 悩んだ顔をしたゴツゴツした顔とつるんとした顔が会話していて、この町の“ルール冊子"を見て顔に笑みがこぼれて喜んでいる。
 どうやら、オイラ達の新しい居場所が見つかりそうで喜んでるらしい…。


連絡

 つるんとした顔が片手に板の様なものに話しをしている。 
“携帯電話"と言うものらしい、板での話しが終わり少し喜んでいる。
 明くる日の朝に電話で話していた相手が、顔の表情が優しげな2人が車でやって来たけれど…、その2人の瞳は氷の様に冷たい。
 2人と会話するゴツゴツした顔とつるんとした顔の表情が段々曇り、再び苦悩していくのがオイラ達のヒゲにビンビン伝わってくる。

町のルールの2人
 
 優しげな2人はこの町のルールについて冷静に冷酷に、ゴツゴツした顔とつるんとした顔に選択肢として突きつけた。
「事情のあるペットは引き取りをしますが一定期間を過ぎれば、言い難いけれど処分をさせてもらいます。」
「ペットではない場合は、引取りの対象外で自由に生きられます。」
 どちらにしても、オイラ達には厳しいが、連れて行かれたら高確率の死が待っている…。

 こんな風に冷徹な言葉を聞いたり、陽だまりで寝そべったりするのも瀕死の母に食事をくれたから生き延びれたから出来る事だけど…。
 ゴツゴツした顔の顔に似合わない様な優しさと、つるんとした顔ののんびりなぬくもりは…、その日から味わう事が出来なくなった…。
 生き延びて温もりの優しさを失ってしまい、オイラ達は命を救われて血は流れない心の傷を負ってしまった。
 それはゴツゴツした顔とつるんとした顔も同じで、ゴツゴツした顔とつるんとした顔の涙声が窓越しに、耳を澄ましたオイラ達に届いた。


新天地

 母とオイラ達は此処では暮らせず、遊牧民の様に新天地を求めて彷徨い、どのくらい歩いた解らなくなる程歩いた。
 少し安心して暮らせる場所に辿り着いたけれど、あの陽だまりの様な柔らかなものはなかった。
 オイラはほんの少しの体力とありったけの気力だけて、あの場所へ引返し歩き出した。
風に乗ってゴツゴツした顔が口にしていた“ピース"の煙の香りがオイラをあの場所へ導いてくれて…、辿り着いて寝そべる様に、オイラの命のの電池は切れた。

寝ていて

 僕が庭の枯れ葉を拾っていると、あの場所に当たり前の様に横たわり眠っている“シッポちゃん"いる…。
 シッポちゃんは家で呼ぶ時の名前で あまりにスヤスヤ寝ていてので寝かせておいたが、次の日の朝になっても寝ていて…、身体が冷たく動かずにいた彼の顔は穏やかだった。

 ほんの僅かな間だけれど、彼は僕が思う以上に僕を慕ってくれていたのだろう…。
 彼の亡骸を埋める事すら僕は出来ずに、火葬をお願いをした…。


これがルール…?

 この町のルールを書いた冊子には敷地内での動物の死体は“ゴミ袋に入れてもえるゴミに出して下さい"と。
 余りに血が通わずに温かさのカケラすら感じない…、この町のルールは同じ種族の人間が作ったものだろか…?

 冷たくなった彼の肉球に思いを巡らす僕がおかしいのか、ルールがおかしいのか…!?
 まともな事が解らないまま、今日を生きている。

 目の前で衰弱した人を助けたら、あの冷たい目の人がこんな風に言う。
「今、衰弱してないから、援助する事は出来ません。」

…………………… 終 ……………………
 
 
 



 

 

 


 
 
 


 
 
 
 
 
 

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