手塚治虫AIが描いた『ばいどん』の世界

昨年は日本が誇る歌姫“美空ひばり”さんをAIで蘇らせた日本の化学が、今年は近代漫画の祖“手塚治虫”を蘇らせました。

本日発売の『週刊モーニング』にて掲載された作品タイトルは『ぱいどん』
今回の企画でAIが何を担当したかと言うとざっくり二点

①作品プロットのキーワード生成
②キャラクターデザインの原案の生成

これを元に『TEZUKA2020』という名のチームによってストーリーが組まれ作画の上出来上がったのが本作である。

物語の舞台は今から10年後の2030年人々は今よりもハイテクな時代に暮らしている近未来。
そんな中で自然に暮らす主人公ぱいどんの元に父親を探して欲しいという美しい女性の依頼が舞い込む。
一度は断るものの依頼を引き受けたぱいどんが向かった先はその父親の研究施設、そこでぱいどん達が見たものは?

というのがおおまかなあらすじです。ちなみに次回がいつかは全くの未定の21ページ作品でした。

ここからは個人的な感想。

最初に読んだ時に感じたのは
なんで完結型の読み切りにしなかったのか?ということでした。『連載を目指します』は良いんですけど、それなら最初の段階でここまでしか描けなていなら、本当は出してはダメなものだと思うんですよね。
これ手塚治虫プロジェクトじゃなくて、一作家さんがやる場合だとこんな載せ方絶対しないはずです。
あくまで『手塚治虫の新作をAIで作る』というプロジェクトだからこそこの掲載が成立してるはずなんです。なぜならある程度はマネタイズしないと続けることすら出来ないから。
それは分かるんですけどただそれでもやっぱり、中途半端過ぎますね。

で、プロットっていう部分で言うと今作の舞台が2030年でしかもなんか読む限りではそんなに言うほどワクワクするような“未来感”が無いですね。
例えば鉄腕アトムとか火の鳥未来編なんかで出てくるような未来の世界の描き方は多分今でもある程度の所までは通用すると思います。なぜなら人の技術がまだそこまで追いついて居ないから。
手塚治虫先生の作品を読む時にいつも感じるのは未来の世界が舞台の時は特になんですけど

“圧倒的な未来へのワクワク感”

が常にあります。わかりやすいのは空飛ぶ車ですね。
ただ本作では例えば“顔認証システム”とか“自動宅配システム”のような、もう既に出来つつあるシステムで未来を描いてます。僕達の頭の中で見えてる未来ではなくてもっと突拍子もない未来を見えてくれたのが手塚治虫という作家さんの作風と僕は思っているので、そこがやっぱりちょっと乗れませんでした。

あくまでもあくまでも個人的な意見ですが、やっぱり今作は手塚治虫“風”の作品のように思いました。物語の面白さという点では、うーんはい、そうですね。なんとも言えないです。ただ一話としては多分及第点ギリギリくらいじゃないですかね。だからこう、もう少しAIに物語をつくらせてもよかったかもなぁとは思いました。

先日テレビ番組の中でダウンタウンの松本人志さんがこの件に触れて仰ってましたが、

『こういう偉大な人達をAIで復刻するのであれば、誰の目から見ても“大成功”と言えるレベルじゃないとダメだと思います』

これに関してはその通りで実はこの手のお話って別にAI以前からあるじゃないですか、キリストの死後に書かれた聖書とかダンテの神曲は後半は死後に弟子が作ったからグダグダとか、未発表のデモテープから新曲作ったhideとか枚挙に遑がない感じですよね。
なのでそれをもっと精度を上げようって言うので膨大な量のデータを処理できるAIという存在がピックアップされているんだとは思うのですが、やはりまだ少し早いのかなと言う感じです。

ただし、これを『実験作』と位置付けるのであれば確かに重要な位置付けの作品だと思うし、こういうチャレンジ自体は大変意義のある事だとも思います。

というわけで今週の『モーニング』に掲載されている『ぱいどん』はWebとかでも見れるので漫画好きな方にはぜひ読んでもらいたい一作でオススメです。

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