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第5回WBCの出場チーム紹介と展望

先日、来年の3月に迫ったWBCの概要が発表されました。現在唯一のメジャーリーガーが参加する国際大会であるWBCは、楽しみな方も多いでしょう。
そちらについて、いろいろ書いてみました。

【第5回WBCについて】

5回目を迎えた今回のWBCは、これまでと大きく変わります。

①出場国が16から20に増加。前回出場の16か国に加え予選を勝ち抜いた4か国が出場します。これまで1次ラウンドは1グループ4チームでしたが今回は1グループ5チームになります。
②これまでは1次ラウンドの後、勝ち抜いた8チームが2グループに分かれ2次ラウンド、2次ラウンドを勝ち抜いた4チームで決勝トーナメントでした。しかし今回は1次ラウンドの後すぐ、突破した8チームで決勝トーナメントとなります。

大会の概要、この記事では2次ラウンドと書かれていますが実際はトーナメント形式

【出場チームの紹介】

1次ラウンドの各グループ展望と合わせ、各チームを紹介してきます。

●グループA

このグループを勝ち抜いたチームが準々決勝で侍ジャパンと対戦、注目のラウンドです。

ここに予選突破国が加わります

まずは過去2大会ベスト4のオランダ。前回大会ではメジャーリーガーを多く擁し侍ジャパンも苦しめた欧州の雄ですが、やや世代交代に苦しんでいるのも現状。2017年と比較するとバンデンハークは引退、バレンティンも38歳となり今は無所属、シモンズ(カブス)やスコープ(タイガース)など前回大会にも出場したメジャーリーガーたちも、やや全盛期は過ぎたかもしれません。とはいえ昨年の欧州選手権でも全勝優勝、グループAをリードすることは間違いないでしょう。
地元開催となる台湾はコロナの影響もあり、近年はアメリカや日本でプレーしていた選手が次々と台湾プロ野球に復帰。その分チームも編成しすいと思いますし、若手投手が育っているのも楽しみです。
個人的に注目がイタリア。今回はドジャースで野茂英雄ともバッテリーを組んだイタリア系アメリカ人のピアザ氏が監督に就任、その影響かマンシーニ(オリオールズ)やオッタビーノ(メッツ)など何人ものメジャーリーガーが既にイタリア代表入りを望んでおり、怖いチームになりそうです。
亡命による弱体化が叫ばれているキューバは、近年は日本プロ野球やメキシカンリーグに多くの選手が派遣され、好成績を残している選手もいるのは好材料。「亡命者もキューバ代表になれるように」という話題も度々議論になってますが、今大会の結果次第でその議論もどうなるか。

●グループB

日本のグループだけ楽すぎるとの声もあるグループB。その分、予選突破国が躍進するチャンスも。

ここに予選突破国が加わります

過去2大会で1次ラウンド敗退の韓国、昨年の東京五輪でもメダルを逃し苦しい時代が続いています。ただ今回大会は崔志萬(レイズ)や金河成(パドレス)など韓国人メジャーリーガーや、エドマン(カージナルス)など米韓ハーフのメジャーリーガーまで招集に意欲を示しており、そうなれば過去にない韓国代表となるでしょう。
オーストラリアは東京五輪予選をコロナで辞退しており、久々の国際大会。一昨年のプレミア12では侍ジャパンに惜敗、今回は日韓に一泡吹かせられるでしょうか。メジャーリーグでも最高峰の抑え投手ヘンドリックス(ホワイトソックス)は出場するでしょうか。マイナーリーグの有望株ミード(レイズ3A)も出場予定であり、将来メジャーリーグで活躍しうる選手として注目。
中国はひとまず予選突破国に勝利することが目標でしょう。そもそも今だに厳しいコロナ政策が取られスポーツにも制限が掛けられている中国、ちゃんと参加できるのかは心配なところ。

●グループC

アメリカ1強という声も多いグループC。ただ私はアメリカも簡単にはいかないグループだと思っています。

ここに予選突破国が加わります

アメリカは毎大会とも豪華メンバーですが今回はついにトラウト(エンゼルス)がメンバー入りし主将を務める予定。前回大会では優勝も経験しWBCでの勝ち方もわかってきた、というところでしょう。
そんなアメリカを過去WBCで2度倒すなど、アメリカには相性が良いのがメキシコ。元々好投手が多いメキシコですが、近年はカーク(ブルージェイズ)など野手でもメジャーリーガーが増えました。またグループCが行われるアリゾナはメキシコからの移民も非常に多く、実質ホームと言えるのもアドバンテージ。
コロンビアは前回大会でアメリカと延長戦にまでもつれる熱戦を演じたチーム。さらには前回大会以降も良い選手が増え、現在コロンビア人のメジャーリーガーはウルシェラ(ツインズ)やアルファロ(パドレス)など10人以上、彼らが揃えばアメリカを倒してもおかしくない国です。
カナダは良い選手を多く輩出しながら、WBCでは苦戦が続き2次ラウンド進出したことがありませんが今回こそ躍進なるでしょうか。メジャーリーグを代表する打者であるフリーマン(ドジャース)は既にカナダ代表入りを表明。

●グループD

死の組という声も多いグループD。強豪国揃いな上、会場のマイアミはドミニカ系、プエルトリコ系、ユダヤ系の住民も多く会場も盛り上がりも凄そうです。

ここに予選突破国が加わります

ドミニカ共和国はゲレーロJr.(ブルージェイズ)やソト(ナショナルズ)やマチャド(オリオールズ)が既に出場へ意欲、メジャーリーグファンにはたまらない打線になりそうです。アメリカと並び優勝候補の最右翼であることは間違いないでしょう。また大会が行われるフロリダはドミニカからの移民も多く、実質ホームで戦えるのも強み。
過去2大会連続準優勝のプエルトリコは、これまでの大会で大黒柱だったモリーナ(カージナルス)が今年で引退し、WBCにも出場しない予定。リンドーア(メッツ)やバエズ(タイガース)など相変わらず良い選手は多いですが、初めてとなるモリーナ不在のWBCをどう戦うでしょうか。
ベネズエラは昨年の本塁打王ペレス(ロイヤルズ)やアクーニャJr.(ブレーブス)が既に出場へ意欲を示し、大会屈指の豪華なメンバーを揃えてくるでしょう。ただ同組のドミニカ共和国、プエルトリコには過去のWBCでも負け続けている嫌な相手、その意識を払しょくできるでしょうか。
前回大会では初出場で躍進したイスラエルですが、今回はレンジャーズなどで活躍し前回大会アメリカ代表の優勝メンバーであるキンズラー監督の元、どんな選手を集めどんな戦いをして、中南米の強豪3か国に一泡吹かせられるでしょうか。

●予選突破国

上記の4グループに、今秋の予選を勝ち抜いた4チームから1つずつ加わります。この予選突破国が意外と侮れない。

両グループの上位2か国がWBC本大会へ

特にパナマニカラグアは多くの名選手をメジャーリーグや日本プロ野球に輩出してきた野球大国。またブラジルは2013年のWBCでは侍ジャパンを苦しめました。今もビエイラ(巨人)やボータカハシ(西武)など日本球界にもブラジル人は多くプレー。ドイツも本大会に来れば同国出身メジャーリーガーのケプラー(ツインズ)やドノバン(カージナルス)を招集してくるかもしれません。
他にも中南米系の選手が多くいる欧州の強豪スペイン、東京五輪予選ではイスラエルを倒したチェコ、北米やバハマからの帰化選手も多いイギリス、ジャイアンツでワールドシリーズ制覇もしたボウチー監督が率いるフランスなどが争う予選は激戦必至。そんな予選を勝ち上がってきた国であれば本大会で旋風を巻き起こす可能性も大いにあります。

【侍ジャパンは優勝できるのか】

3大会ぶりの優勝を目指す侍ジャパンについては、過去2大会と同様に準決勝が鬼門になるのではと予想しています。それは準決勝から条件が全く変わるからです。

①1次ラウンドと準々決勝も決して楽ではないと思いますが、侍ジャパンより格上と言える国と当たる可能性がありません。
ところが準決勝ではアメリカやドミニカ共和国などメンバーの大半をメジャーリーガーで固めた、侍ジャパンと同等以上のチームと当たる可能性が高いです。

②侍ジャパンは、1次ラウンドと準々決勝を完全ホームである東京で戦います。
ところが準決勝からは会場がアメリカになり、マウンドなどの違いにも対応が必要。この点は過去2大会も同様でしたが、今回さらに大変なのは準決勝の開催都市が、過去2大会はカリフォルニア(2013年はサンフランシスコ、2017年はロサンゼルス)でしたが今回はフロリダということ。

カリフォルニアは日本人の居住者や旅行者も多く、過去2大会の準決勝はアメリカでの試合とはいえ侍ジャパンの応援も多くありました。
しかしフロリダは日本から大きく離れており、ましてやコロナもありマイアミまで応援に行く日本人ファンも少ないでしょう。
そしてフロリダには、地理的に近いドミニカ共和国やプエルトリコからの移民が非常に多く住んでいます。準決勝の相手がドミニカ共和国やプエルトリコだった場合、観客の大半は相手国の応援でしょう。

以下は前回大会のフロリダで行われたアメリカvsドミニカ共和国で、ドミニカ共和国がホームランで逆転した際の様子です。今回の準決勝はこんな雰囲気になる可能性も。

一昨年のプレミア12、昨年の東京五輪と直近の国際大会を自国で戦ってきた侍ジャパンにとって慣れない球場に完全アウェー、その上で相手のレベルが上がるとなれば難しい戦いになることは必至です。

これまで大会ごとに進化を見せてきたWBC。来年はどんな大会になるでしょうか。


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