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小屋をつくったことで起こったこと その1

小屋といったときにあなたがイメージするのはどんなものでしょうか。
ある敷地にポン、と置かれた小さな家のようなものでしょうか。

屋外に置かれるものとなれば、例えば基礎のことや雨仕舞いのことなど、多かれ少なかれかなり建築的なものになりますが、私たちが小屋と呼ぶものは屋内に置かれるゆるい"小部屋"のような存在

とてもシンプルですが、空間に面白い関係性をつくり出すもので、最近少しずつ兄弟のように小屋たちをつくる機会が徐々に増えています。

ここでは私たちgift_がつくる小屋についてのお話しと、そこから広がった現象のお話しについて何回かに分けて書いていこうと思います。

この小屋の始まり

10年ほど前になりますが、秋に恵比寿ガーデンプレイスで行われたイベントで私たちが企画した展示の中で、ある作品のために小屋をつくりました。

gift_による企画展示『SH.˙.RE』(※画像が一部読み込めないところあり)

この企画展示の作品の一つ、kvina(クビーナ)による『Esperanto A-Z por Ebisu(エスペラント A-Z・ポル・エビス)』。これは、「街の中にひそむエスペラント語のAからZまでを見つけて歩こう」というコミュニケーション・アート作品。

この展示のスタート / ゴール地点のポイントを、オフィスビルのホワイエの中に置くことになりました。

本来は受付のテーブルみたいな機能があれば目的としては充分だったのかもしれない。
けれど、比較的広くて余計なものは何もないオフィスビルのホワイエで、テーブルだけでは目印としては分かりづらいということと、なにより展示としての核となる存在が欲しいということから、小屋があったら面白いのではと思いプランしました。

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とはいえ使用するのは3日間。素敵にかつリーズナブルにつくるために、素材は垂木(※1)と野地板(※2)を使うことにしました。

※1 垂木(たるき):屋根の下地に使う棒状の木材のことですが、ここではホームセンターなどで比較的簡易に手に入る30mm×40mmの木材を指しています。
※2 野地板(のじいた):同じく屋根の下地に使う板状の木材のこと。ここでは幅90mm×厚み12mmのものを使用。かなり粗い材料なので表面を少し整える必要がある。

受付としてのカウンターのある開口部と出入り口を設け、小屋らしさを出すための傾斜した屋根(片流れ屋根)、外側はラフにペイントした白の仕上げを施したものとしました。
屋内の平らな所に置くので床は特になし。

そして

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出来上がった小屋はこんな感じ。
小屋の製作をしてくれたのはインスタレーターのチームbibarikiです。
塗装はイベントのボランティアスタッフにも協力してもらいました。

限られた設営の時間でもなんとかなるように、パネルごとに分解できるように設計し、仕込み、現地の設営では2人で30分程度で組み上がりました。

当時の、アーティストとともにめぐる素敵なガイドツアーの様子がこちらに記録されていました、もちろん小屋も登場しています。

追記:小屋はエスペラント語でkabano(カバーノ)と呼ぶそうです。

そして小屋は旅をしながら……

展示が終わり、役割を終えた小屋。そのまま処分するのはもったいなく、当時の東京・恵比寿の拠点でしばらく保管することに。

試しに組み立ててみると作品の時とは別のなんとも不思議な存在になりました。これだけの大きさのものを普通の室内に持ち込むと、だいぶ雰囲気が変わる(その分狭くもなるのですが)……!

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ギリギリなんとか納まったという感じ。(開口上部の庇はつけていません)

やはり屋根があるのがポイントで、単に間仕切るのとは全く別の雰囲気となり、これだけで別室感が格段に上がる。小屋と呼んではいるものの、実際にはスタンドブースという感じが近いのかもしれません。

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あるときの展示のオープニングでは、こんなふうにフードを並べて

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パーティーのケータリングブースとして使ったりしました。

その後、私たちの場所もさすがに小屋を立てたままでは手狭となってしまい、何人かの方のご協力とご厚意によりある場所で一時保管いただいた時期がありました(このご協力がなければ小屋のその後はなかったかもしれず、本当に感謝してもしきれません)。

数年後、私たちは拠点を清澄白河へ移すことになります。

2014年に恵比寿から引越し、カフェ併設で開くことになったこの場所は広めの空間で、ここならばまたあの小屋を立てられる!ということで再び陽の目を見ることになり、小屋は東京の東側へと旅をしてきました。

天井高は3.5メートルほどもあり、小屋も居心地良さそうにしています。

ここでは、小屋の外側の客席スペースを少しでも広く確保するためにカウンターは小屋の内側に飛び出すように取付けました(後にこのことで、小屋の中に椅子をおけば客席としても使えることに気付きました)。

このカフェ併設の物件で、小屋の使い方はさらに拡張していきました(これは後でまたご紹介します)。

2021年現在、私たちはここからさらに引越しをして、同じ清澄白河エリアの別の場所へと移転しています。

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カフェをなくし、ギャラリーショップとデザイン事務所に特化した拠点となり、小屋はまたコンパクトなスペースにおさまっています。点々と旅をして今に至ります

話をカフェ時代(2015〜2020)に戻します。
ここでさまざまなトライをして、小屋の可能性が一気に広がりました。

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ポップアップショップとして。

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ゲストによるコーヒースタンドとして。

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DJブースとしても。

小屋でアーティストの展示や、ライブパフォーマンスなどが行なわれたこともありました。その縁から、シンガーソングライター湯木慧さんのCDのジャケットにもなったりしました。

アイコンとしての表立った使い方以外にも、イベント時に控室としてつかえたり、アパレルの展示会のフィッティングブースになったことも。

こうして、空間の中のサブスペースとしての小屋の活用がかなり広がりました。
目的・用途を固定していないスペースだからできることなのかもしれません。

実は当初、この小屋のスペースをミーティングルームにしようと計画していたこともありましたが、そうなっていたらここまでの可能性を見ることはなかったかもしれません。

そして。さらにカフェ時代には、この小屋があることで象徴的に使われる展開が生まれました。

このことは(その2)にてお話ししたいと思います。

つづく。

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